原子力研究の過程で生まれる技術や知見を、どのように社会と接続していくのか――。研究成果の社会実装や大学発スタートアップの創出が重視される中、その可能性を原子力研究の現場から探る「サイエンスアイデアソン」が2月27日、日本原子力研究開発機構(JAEA)で開催されました。基調講演やワークショップを通して、中性子線利用や核融合研究などから生まれる成果の活用可能性について、多様な立場の参加者が意見を交わしました。
大学での教育や研究の成果を活かした革新的で成長が見込まれる企業の創出が期待される中、茨城大学では、GTIEつくば拠点の技術シーズからの大学発スタートアップを創出する取り組みを行っています。サイエンスアイデアソンイベントは昨年1月に続いて3度目の開催となります(前回の様子はこちら:核融合発電の技術シーズを、社会実装へどう生かすーサイエンスアイデアソンin QST|茨城大学)。
これまでに、初回は広く環境エネルギー分野、2回目は核融合発電をテーマとしましたが、今回は原子力分野における研究活動の現場に立ち返り、そこで日々蓄積されている技術、知見、研究環境を出発点として議論を行いました。
基調講演は、文部科学省科学技術・学術政策局の馬場大輔参事官(研究環境担当)が「科学の再興~研究基盤の刷新、J-PARC~」と題して行いました。日本の研究力の現状や国際的な立ち位置を説明し、「海外では、新しい技術にお金が集まる。同じ技術力があっても日本では集まらない。技術ではなく、エコシステムで負けている状態だ」と話しました。さらに「日本で技術を学んだ人が、海外で活躍している。日本のヒト、モノ、カネで海外が伸長している」と続け、現状について「理不尽」と表現し、危機感を示しました。その上で、現在策定に向けて議論が進む次期科学技術・イノベーション基本計画にも触れ、科学の再興に向けて空気感が変わりつつあると説明しました。J-PARCのような大型研究施設を含む研究基盤を、一部の研究者だけのものにするのではなく、アイデアがあれば誰もが研究に挑戦できる環境を整える必要性を強調しました。
開催地である東海村の萩谷浩康副村長も村の産業振興ビジョンなどについて講演しました。
ワークショップでは参加者がグループに分かれ、それぞれのテーマについて議論しました。議論のテーマは①規制産業である原子力分野で、スタートアップはどこから参入すべきか、②原子力R&Dの“副産物技術”はどの市場に出せば最も早く価値化できるか、③J-PARCの施設や研究環境の活用から、どのような社会実装の可能性が考えられるか――の三つ。各グループでは研究者や支援者、企業関係者らが立場を超えて意見を交わし、原子力研究から生まれる技術を社会につなげる道筋について考えました。


