茨城大学人文社会科学部の学生たちが、水戸市の課題について調査・研究した成果をまとめ、市長に直接プレゼンテーションするイベントが、2月6日(金)に水戸キャンパスで開催されました。6つのグループが、プロスポーツを活かしたにぎわいづくりから町内会加入促進、こども条例の条文提案まで、多彩なテーマで発表しました。高橋靖市長も、行政の実情や自身の悩みを率直に語りながら、学生に対して真剣に意見を求める姿が印象的でした。
このイベントは、水戸市が若者の視点やアイデアを市政に取り入れる「行政懇談会」として実施したものです。今年度は、市長や市職員が複数の大学・学校を訪問し、意見交換を行っているそう。茨城大学では、人文社会科学部の6つのグループが水戸市の政策課題に挑みました。
| 発表グループ | テーマ |
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経済政策論ゼミ |
プロスポーツによる水戸市のにぎわい創出 |
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【飯富】まちづくり政策提言 |
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社会調査演習Ⅲ・社会行動論ゼミ |
水戸谷中地区における持続可能なまちづくりの提案 |
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行政法ゼミ |
水戸市こども条例の制定に関する提言 |
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公共政策論ゼミ |
町内会・自治会の加入促進に向けて |
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労働経済論ゼミ |
若い世代に選ばれるまちづくり:転出防止策 |
この中から3つのグループのやりとりを振り返ります。
プロスポーツを活かしたにぎわい創出
経済政策論ゼミのみなさんは、「プロスポーツによる水戸市のにぎわい創出」をテーマに発表しました。若者が水戸市への定住を希望しない理由として挙がる「遊ぶ場所の少なさ」に着目。水戸ホーリーホックのJ2優勝・J1昇格や茨城ロボッツのBプレミア参入といった盛り上がりを追い風に、市が目指す「にぎわい交流人口の増加」につなげる施策を提案しました。
短期施策としては、学校でのパブリックビューイングや、水戸発祥のアパレルメーカー「アダストリア」とのコラボレーションなどを提案。それらが若者の行動・定着にどれほど効果があるかも試算しました。一方、中期施策としては、景観活用によるシビックプライド醸成や、シェアサイクルを用いた「コト消費」の促進などを提案しました。
発表を受けて高橋市長は、プロスポーツが活性化に寄与する一方、スタジアム建設などにかかる行政コストの判断は悩ましいと吐露。「公共としてどこまでコストをかけるべきかを、どんなエビデンスで判断すべきか」と学生に問いかけました。学生は、「われわれも生活インフラの整備の方がスタジアムより優先されるべきだと思う。生活インフラをないがしろにすれば結局社会的価値が減退する。エビデンスは限られるが、民間だけで持続可能な収益構造を生んでいる成功事例を取り入れるのが基本だと思う」と回答。高橋市長は、「他で成功しているのに水戸で成功していないものもある。熱量の違いだとしたらその熱量は何から生み出されるのか。摸索しながらやっていきたい」と応じていました。
こどもの基本条例の策定 条例文まで提案
行政法ゼミは、2022年の「こども基本法」を踏まえた、「水戸市こどもの基本条例」の策定を提案しました。「声を聴かれにくいこどもが存在する」という問題意識から、「『すべて』のこどもが笑顔で暮らすまち」という理念を設定。「意見の尊重」「インクルージョン」「シビックプライド」の3つの視点から、具体的な条文案を作成しました。
このうち「意見の尊重」については、こどもの意見表明権の明記や「こどもの権利擁護委員会」の設置などを掲げました。また、「インクルージョン」の条文からの展開として、障害の有無にかかわらず遊べる「インクルーシブ公園」整備などにも言及しました。
高橋市長は「具体的にこういう社会を目指していこうという自分たちの考えを盛り込んでいるところがとてもよかった」と評価し、条例制定に前向きな姿勢を示しました。また、子育て支援などをめぐっては、「目先の要望に答えていくだけで本当にいいのかという反省が常にある。将来を見据えたときに、『私たちの不安はこういうものなんだ』ということについて、若者のみなさんから声をあげてほしい」と述べました。
町内会・自治会の加入促進
加入率の低下が続く町内会・自治会の課題に注目したのは、公共政策論ゼミのみなさん。全国の状況を文献などから調査し、加入率低下の背景に、ライフスタイルの変化や「フリーライダー」の存在があることなどを挙げました。加えて、水戸市は町内会数が約1,300と全国平均(約170)に比べて突出して多く、各町内会が小規模であるがゆえの非効率性も指摘しました。
グループでは、住民のタイプごとにメリットを整理したり、学生・地区会長・市民センター所長にアンケートを実施したりして、加入促進の施策を提案。「町内会という単位にこだわりすぎない」「より上位の地区会の単位を重視」「総合計画の施策にプラスした小さな負担でできる具体策」の3つの方向性を軸に、現在使われている「みと町内会・自治会カード」に地区ごとのステッカーを作って貼る施策や、市民センターにおける役職者の顕彰室設置などを提案しました。
町内会・自治会の課題について高橋市長は、「決定打がなく悩ましい課題」としつつ、「加入メリット(アメ)は重ねていけばよいとして、非加入デメリット(ムチ)はどこまで許されるか」と学生に質問しました。学生は、「自分たちもデメリットについて考え、アンケートをもとに洗い出しもした」と調査を振り返りつつ、「有効な答えは見つけられなかった」と報告していました。しっかり調査をしたからこその誠実な回答でした。
「一緒になってやりたい」と高橋市長
6つのグループとのやりとりを終え、最後に登壇した高橋市長は、「しっかり精査して、事業仕分けをし、研究を重ねた上での提案だったので、無駄にすることなく、若い方に選ばれる移住・定住につながる施策にしていきたい」と評価。その上で、「既に自分たちで現場に出向いて行動しているという発表もあった。実践・実行の場にどんどん出てきていただいて、私たち行政も一緒になってやりたい。条例もぜひ一緒につくりましょう」などと、学生たちに力強く呼びかけていました。
