宮城県仙台市で6月に開催された「第37回知能ロボットコンテスト2025」で、茨城大学ロボット技術研究会が優勝含む全9賞のうち4賞を獲得する快挙を達成しました。当日の様子や大会の概要を、ロボット技術研究会の顧問である森善一教授(応用理工学野機械システム工学領域)が解説します。

茨城大学ロボット技術研究会とは
茨城大学ロボット技術研究会(通称:ロボ技)は、私が茨大に来て早々に立ち上げたロボコンサークルで、現在、部員は約40人います。知能ロボコンに出場することがメインイベントですが、サークル活動の一環として、毎週、バスケやテニス、バドミントンなどを通して心身ともに鍛えつつ、団結力を高めています。
大会について
本大会は、チャレンジャーズコースとマスターズコースに分かれて技術力を競います。チャレンジャーズコースは、競技台の上に置かれた3色のボールを集め、色分けしてゴール。58台が出場しました。マスターズコースには9台が出場。水入りペットボトルなど、さまざまな対象を集め、分別してゴールする競技です。
競技開始後は、人はロボットを操縦することはできません。ロボットは自分でボールを探し、それが何であるかを判断して決められたゴールへ入れに行きます。
審査は、チャレンジャーズコース:競技点 50点、審査員点 50点(二次予選と決勝戦のみ)、マスターズコース:競技点 80点、審査員点 20点(二次予選と決勝戦のみ)で評価されます。
“ロボ技”の活躍
ロボ技から出場したロボットのうち、3台が素晴らしい成績を収めました。
・接吻丸
(一次予選 1位、二次予選 2位、決勝1位)
・立体駐車場: 「チャレンジャーズコース優勝」
(一次予選 1位、二次予選1位、決勝1位)
・アダム・スミス: 「あすなろ賞」
(一次予選 4位、二次予選 3位、決勝 3位)
「蒼波の舟唄」は、研究で用いていた万能吸着グリッパUVG(ユニバーサル・バキューム・グリッパ)をハンド機構に持ち、最新の画像処理技術(YOLO)、LLM(Large Language Model)を活用した音声生成AI 他を駆使した上、デザインも凝った最上級マシンです。「アイディア倒れ賞」に始まって以来、苦節7年、現理工学研究科博士前期課程2年の学生さん3人が本機を優勝に導き、引導を渡してくれました。なお、マスターズコースでの満点は初の偉業でした。

「立体駐車場」は、“速さ”と“正確さ”と“面白さ”のすべてを兼ね備えたモンスターロボです。決勝では、制限時間10分のところ、1分28秒での満点は史上初の大記録でした。さらにロボットの上部には、昭和を匂わす屋上遊園地が設けられ、LEDと効果音(ディズニー)の中、回転木馬(木馬は回転&上下動)、コーヒーカップ(遊星ギアを構成し,自転&公転)、さらに大観覧車(ピンクのゴンドラの拡大版がロボットの左上に載っており,小ゴンドラが頂上に来た時に大ゴンドラの二人はチューするという夢の演出)を備え、それらを手製の歯車で連結し、マブチモータ(130型)一つで駆動するという超こだわり。伝説、間違いなしです。

「アダム・スミス」は、透明で遠くからは見えないハンド?を持つことから、「神の見えざる手」というコンセプトで本機が命名されました。決勝では、何度も“取れそうで取れない”という演出?を繰り返した後、最後の最後、残り数秒でゴールするという「神演出」が功を奏し、受賞に至りました。

大会を終えて
ここまで一つの団体が多くの賞をいただくこと(全9賞のうち、上位3賞を含む4賞獲得)は、かつて類がなく、会場には、ため息が漏れたほどでした。ただしこれは学生たちの努力の賜物で、「立体駐車場」は、4月に研究室配属されたばかりの工学部4年生がコアとなり、先輩から引き継いだベースマシンに改良・追加を加え、一部の学生さんはゴールデンウィークを返上して完成させた努力の結晶でした。さらに決勝前にトラブルに見舞われ、スタート30分前に調整を終えるという冷や汗つきです。ロボ技の皆さん、お疲れ様&本当にどうもありがとー!また大会関係者の皆さま、誠に感謝致します。
#ネタも切れたし、来年は一休みかな?
