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[人文社会科学の最前線!]岡崎正男教授

 不定期配信シリーズ「人文社会科学の書棚から」のスピンオフ企画「人文社会科学の最前線!」。科研費に採択された研究や自治体等との共同研究の成果を通じて、人文社会科学部の学問を紹介します。
 今回は、人文社会科学部の岡崎正男教授(英語学)です。日本学術振興会の科学研究費助成事業で基盤研究(B)に採択され、2016年から2020年にかけて、代表者として「隣接諸科学乗り入れ型の手法による音韻理論の外的・内的検証の研究」に取りくんできました。(企画・構成:茨城大学人文社会科学部

岡崎教授
 この研究は、言語の音声型(発音型)の仕組みを研究する音韻論と呼ばれる分野における今までの具体的提案の妥当性について、7名の研究組織をつくり、言語学の視点からだけではなく言語学以外の視点からも吟味しようとしたものです。

 言語音声型の研究は、20世紀後半の生成音韻論という枠組みの誕生から加速しました。その後の半世紀で、当初の枠組みの妥当性が検証され、新たな理論と新たな事実の分析(ともに複数)が提案されてきました。しかし、提案された理論と事実分析の妥当性の検証には、言語学外からの視点も必要だと考えられました。そこで我々は、研究組織を (i) 進化言語学、言語類型論、病理学関連のチーム、(ii) 韻律学と文法一般関連のチーム、(iii) 認知科学と語形成関連のチームに分けて、情報交換をしつつ研究を進めました。結果、2021年度までの6年間に、7名で雑誌論文50件、学会発表(含、講演)98 件、著書27件(すべて共著と分担執筆)の成果を挙げました。

 私は、代表者しての全体を統括するともに韻律学にもとづく検証を分担し、英語の語強勢型の歴史変化についての諸説を、詩形(文化的産物)と音声型(生物的特徴)の接点から吟味しました。私の研究成果は、次の三点にまとめられ、これまでの説への対案となります。

(i) 古英語(11世紀まで)の形態素ge-には接頭辞説と前置詞説があるが、ge-は詩行中で独立性が高く前置詞説がよい。

(ii) 後期中英語(13世紀~14世紀)の2音節名詞と形容詞にはÁprill/Apríll 'April'、cérteyn/certéyn 'certain'のような「二重強勢語」があったと言われているが、その説は形容詞にはあてはまらない。「二重強勢語」とされてきた2音節形容詞は、弱強が基本で、強弱は語頭に主強勢がある名詞の直前にある場合のみに出現。 (iii) 現代英語のthìrteen mén (thirtéen)のような句レベルの「強勢移動」は、一般に想定されているより早く初期近代英語(16世紀~17世紀)から広範囲に観察され、後期中英語まで遡れる可能性が高い。

岡崎正男(おかざきまさお)
1964年、茨城県生まれ。筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位取得退学。博士(言語学)(筑波大学)。
著書:English Sentence Prosody: The Interface between Sound and Meaning.(開拓社、1998年)、『文法におけるインターフェイス(英語学モノグラフシリーズ18)』岡崎正男・小野塚裕視(研究社、2001年)、『英語構造からみる英詩のすがた―文法・リズム・押韻―(開拓社 言語・文化選書44)』(開拓社、2014年)、『音韻論と他の部門とのインターフェイス(開拓社 最新英語学・言語学シリーズ18)』時崎久夫・岡崎正男(開拓社、2022年)

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