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「覇者」作者の後藤末吉名誉教授が逝去、その足跡をたどる

水戸キャンパスに建つ「覇者」の像の作者で、茨城大学名誉教授の後藤末吉先生が、2023119日に亡くなりました。91歳でした。茨城大学教育学部の第1回卒業生であり、その後40年以上にもわたって大学で後身たちを育成しつづけた後藤先生の足跡をたどります。

005_5838.jpg 後藤末吉先生(2018年12月撮影)

 後藤先生は1931(昭和6)年、茨城県那珂郡山方町(現・常陸大宮市)に生まれました。
 茨城大学教育学部の前身校である茨城師範学校に入学後、1949(昭和24)年の茨城大学設立に伴い、茨城大学教育学部の美術科の学生となります。1953(昭和28)年に卒業後、すぐに茨城大学教育学部美術科の助手として採用され、以降、1996(平成8)年に定年を迎えるまで、実に40年以上にわたって後身の指導にあたってこられました。また、その間、1983(昭和58)年~1989(平成元)年には附属養護学校(現・特別支援学校)の校長も務めたほか、茨城大学教育学部の同窓会長としても長年活躍されました。

 後藤先生の彫刻作品の中でも印象深いのが、「ヒンズーの踊」のシリーズです。後藤先生は1980(昭和55)年に恩師である稲村退三先生の誘いでインドとネパールへ人生初の海外旅行に出かけました。そのとき、デリーの野外劇場で見たインド古典舞踊に強い印象を受け、その後その踊りの姿をモチーフとした作品を作り続けます。後藤先生はそこで見た舞踊を「単なるショーではなく、ヒンドゥー教の神々に捧げる深い祈りを感じさせるもの」と捉え、その作品は外見の美しさに留まらない、高い精神性を感じさせます。

005_5885.jpg005_5889.jpg また、今の在学生のみなさんにもおなじみなのが、水戸キャンパスの図書館前に凛として佇む「覇者」の像ではないでしょうか。この作品は後藤先生が、教育学部の体育科の学生をモデルにして制作したもので、槍を持たせることで実際の人間よりも遥かに大きく見せることを狙いました。当時日展に出品したものでしたが、自身の思い入れの強さもあり、大学に寄贈しました。「覇者」は今も、水戸キャンパスのシンボルとして学生たちを見守っています。

DSC_7636.JPG

 後藤先生は、茨城大学を退官して名誉教授となったあとも教え子との親交をあたためていました。
 現在茨城県内の中学校で教頭を務めている栗田健史さんも教え子のひとりです。栗田さんはお父さんも茨城大学教育学部卒業生で、親子二代で後藤先生の指導を受けました。
 栗田さんによれば、同窓生たちと定期的に開催しているグループ展に、後藤先生は必ず顔を出してくれたとのこと。昨年夏には後藤先生の自宅でもあるJR赤塚駅近くの「ギャラリーゴトウ」でグループ展を開催し、作品を一緒に展示することも叶ったそうです。
 「先生は40年前に亡くなった父のこともよく覚えてくださっていました。『親子二代で同窓会のために力を尽くしてくれて本当にありがとう』とおっしゃってくれたときの笑顔が鮮明に思い出されます」と栗田さん。作品へのあたたかなアドバイスの一言、一言が、実直で優しい人柄とともに心に刻まれています。

 後藤先生は亡くなる直前まで、「ギャラリーゴトウ」(水戸市赤塚1丁目2015-21)での個展の準備を進めていました。
 その個展は、210日(金)~26日(日)、当初の予定どおり開催されるということです(会期中は毎日回廊、10時~17時)。お近くの方はぜひ足をお運びいただき、後藤先生の珠玉の作品をご覧いただければと思います。

 また、2019年に茨城大学創立70周年記念事業として制作した茨城大学ビジュアル年表には、後藤先生のインタビュー動画も掲載しています。あわせてご覧ください。

005_5879.jpg 「ギャラリーゴトウ」の前で(2018年12月撮影)

(取材・構成:茨城大学広報室)