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令和6年度入学式を挙行―水戸市民会館で初の開催 2277人に入学許可

 2024年4月5日(金)、茨城大学令和6年度入学式が、水戸市民会館グロービスホール(大ホール)にて開催されました。午前の第一部と午後の第二部を合わせて、2,277人の入学を太田寛行学長が許可しました。
 昨年夏にオープンした水戸市民会館で本学の入学式を開催するのは初めてです。同会館の内外には「茨城大学入学式」「入学おめでとう」などと書かれた看板が設置され、開会前から多くの新入生や保護者が会場に駆けつけ、写真撮影に臨んでいました。
 また、入学式の終了後は、同じステージ上にて「フレッシュマンサクセス(FS)セレモニー」というイベントも開催しました。茨城大学では4月より「スチューデントサクセス」というコンセプトを掲げ、学生の「なりたい自分になる」を中心に据えた教育・学生支援の体制を整備しています。本セレモニーでは、太田学長が大学での学修の目標やスチューデントサクセスの考え方を紹介するとともに、在学生たちが自らの「サクセス」について新入生に語りかけました。

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 今回の入学式の模様は動画でご覧いただけます。

第1部(水戸市民会館グロービスホール)
日時:2024年4月5日(金)11:00~
対象:工学部、農学部、理工学研究科博士前期課程/博士後期課程、農学研究科

第2部(水戸市民会館グロービスホール)
日時:2024年4月5日(金)15:00~
対象:人文社会科学部、教育学部、理学部、地域未来共創学環、人文社会科学研究科、教育学研究科、特別支援教育特別専攻科

学長式辞

 茨城大学の学部・学環・大学院及び特別専攻科に入学された2,277名の学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。茨城大学の教職員と在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。そして、これまで皆さんを支えてこられた、ご家族の皆様方にも心からお祝い申し上げます。
 茨城大学は、今年、新制大学として創立75周年、最も古いルーツ校である拡充師範学校の創設から150年になります。今から75年前の開学に至る出来事を調べてみると、地域の人たちの力強い応援がありました。例えば、当時の茨城新聞社・社長は、「わが県民も国立茨城大学は文部省が作ってくれるのだなどの甘夢(かんむ)を貧ってはならない。わが県の最高学府創建はわが県民個々の公的責任感の発露によってのみ実現させることを特に銘記すべきである。」と語ったのです。
 そのような地域の人たちの思いに応えるように、鈴木亰平・初代学長は、開校式の時、最初の新入生に向かって、「野心満々たれ」という言葉で、訓示を結びました。この言葉は、学修だけでなく、失敗を恐れずに、いろいろなことに挑戦して欲しいというエールです。そして、75年経った今でも通じる言葉であり、「失敗を恐れずに挑戦すること」を皆さんは受け継いで下さい。
 もう一つ、皆さんに"Student Success"ということを伝えたいと思います。この"Student Success"とは、単に良い成績を取ることや卒業まで着実に学修を進めるだけでなく、自分が努力した成果を評価し、自分の目標や価値観に基づいて充実感を感じることだと思います。すなわち、どれだけ「なりたい自分になったか」です。
 そこで、皆さんの「なりたい自分」とは何ですか? もちろん、そのような目標を持っているからこそ本学に進学したのだと思います。では、「なりたい自分」をどのように、みつけましたか?

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 私は、それを見つけるプロセスが、「選択」、「選ぶこと」の繰り返しだと思っています。選択と言っても、いろいろなレベルがありますね。日々の暮らしの中で、今日は何を着ていこうか、お昼は何を食べようか、というような、何気ない、日常的な選択もあれば、どの大学に進学するか、どの会社に就職するかなどは大きな選択です。この"選ぶ"という行為には、よく考えてみると、必ず"否定"が含まれています。選ばなかったものを"否定したもの"とするのは言い過ぎかもしれませんが、特に大きな選択の時、選ばなかったものは、そうではないと否定したものであり、それによって「なりたい自分」を確認したはずです。
 私たちの「選択」は、他者との関わりで育まれると思います。このことに関して、水戸芸術館の館長を務められた音楽評論家、吉田秀和さんの言葉を紹介します。約40年前の著作、「調和の幻想」のなかで、中国を訪問した際の印象を記した部分です。
 「異なった文明の間での影響関係というものは、何も一方が他方と同じものになってしまうというように進むとは限らない。いや、一方が、他方の与えるものから、あるものは受けとり、あるものは棄てるという具合に取捨選択しながら同化してゆくのが普通にみられる過程だろう。その意味で、影響とは選択にほかならない。場合によったら、自分は懸命に真似したつもりなのに、まるでちがうものをつくってしまうかもしれない。しかし、それも影響である。」
 吉田秀和さんが文明について語ったことですが、私は、「なりたい自分」も、そのように、他者の交流によって、つくられていくのではないかと思っています。懸命に、憧れの誰かを真似したつもりなのに、それとはちがう生き方になるのも、「なりたい自分」になることだと思います。
 選択の深い意味を考えるのは、ヒトの命をめぐるときでしょう。人類学者、磯野真穂さんは、哲学者、宮野真生子さんの対談から、次のような言葉を紡いでいます。
 「私たちが選択において選ぶことができるのは、選択において変わってしまうだろう自分を発見し、その変容した自分がその後起こる出来事に対応してゆくことを許容することである。あなたは「選ぶことで自分を見出す」。「選び、決めたこと」の先であなたという存在が生まれてくるのだと」
 これは、2019年に42歳で亡くなる宮野さんとの交流を通して、死期が迫る宮野さんとのギリギリの対話を通して、磯野さんと宮野さんが、"迫られる選択に対して、選んだ結果、変容する自己"を肯定して生きていく確信を互いにみつけ合った瞬間の言葉だと思います。
 茨城大学は、2030年にあるべき大学の姿として、イバダイ・ビジョン2030を掲げ、12のアクションを策定しています。その最初のアクションは、「社会・世界に開かれたキャンパスを構築し、多様な価値観の交差により新たな価値観が⽣み出される学びの場を提供する」であり、2番目のアクションは「社会の変化・ニーズに柔軟に対応しながら、学修者の個性と可能性を伸ばし、挑戦を支え、成長を実感できる教育を提供し続けられるシステムを構築し、進展するデジタル技術を活用して教育方法を改善する」です。大学もさまざまな選択を続ける過程で、学生のみなさんを含む、多くの人たちの影響を受けながら、「こうありたい」という姿へと進んでいくのです。
 私たち教職員一同は、これらのアクションを推進し、「なりたい自分」に向かって邁進する皆さんを支えていきます。
 以上をもって入学式の式辞といたします。
 本日は、入学、誠におめでとうございます。

令和645
茨城大学長 太田寛行