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【著作・制作物紹介】教育・石田修助教 共著「ことばの教室でできる吃音のグループ学習実践ガイド」

ことばの教室でできる吃音のグループ学習実践ガイド


kitsuon_group_Ishida Osamu.jpg石田 修(茨城大学教育学部助教)・飯村 大智(筑波大学助教) 共著

出版社:学苑社
出版日:2023年7月
ISBN:978-4-761408-47-3
価格:本体1,900円+税

著者コメント

 吃音とは、言いたい言葉はわかっていても言葉が滑らかに出てこない症状を指し、吃音のある小学生の多くはことばの教室(言語障害通級指導教室)で指導を受けています。ことばの教室での吃音指導は、個別指導とグループ学習の2種類に分けられ、双方を組み合わせることでより効果的な指導が可能になると考えられます。本書では、小学校のことばの教室で実際に行われてきたグループ学習の実践をまとめました。

 グループ学習を行うことで「自分以外の吃音のある子どもがいることを実感できる」「吃音に恐れのない環境で吃音のある子ども同士だからできる会話やその内容」「吃音の深い学習と洞察を得る」など、個別指導単独では難しい様々な学習効果を得られます。しかし、グループ学習の実施率は低く、通級による指導は個別指導が中心であることや、グループ学習の内容を考えるのが難しいことなどが報告されています。

 ことばの教室の先生から、「グループ学習の進め方がわからない」「吃音理解学習は全員やったほうがよいのか」「グループ学習の実践例を教えてほしい」などの声をよく聞きます。このような現場の先生方の声にお応えし、吃音グループ学習の充実・発展に寄与できればと思い、本書を執筆いたしました。

 これまで個別指導とグループ学習の学びの連続性をもたせた多面的・包括的アプローチにより、吃音問題の軽減だけでなく、ひとりの人間として大きく成長した子どもたちの姿を多くみてきました。たとえば、個別指導で練習した発話技法をグループ学習の場で実践し、先輩のサポートを受けながら「はじめのことば」→「ゲーム説明」→「司会」などへとステップアップし、成功体験を積むことで話すことへの自信をつけていった子どもたちです。そして、自分が先輩の立場になった時に、「ぼくも最初は不安だったけど、やってみると意外と楽しいよ」「サポートするから安心してね」など、仲間同士で支え合いながら困難を乗り越えていきました。また、後輩がチャレンジする姿をみて、先輩も在籍校の学級委員に立候補したり、放送委員でアナウンスをしたりと、お互いに高め合う関係性へと発展していきました。このような子どもたちの成長する姿をみて、次第に保護者の吃音の捉え方にも変化がみられ、我が子だけでなく他の子の成長をも喜ぶ声がグループ学習の感想文に多数寄せられました。

 このような学習を個別指導単独で行うには限界があります。現在グループ学習を行っていないことばの教室も多くあると思いますが、個別指導にグループ学習を組み合わせることで学習の幅が広がり、子どもたちが「わくわく」「わいわい」と楽しめるような多様な学習活動を展開できるようになります。グループ学習で人とのかかわりの場を広げていく中で、自己理解・他者理解・吃音理解が深まり、コミュニケーション力の向上や社会で生きる力の育成にもつながることが期待されます。

著者プロフィール

石田 修(教育学部助教)

専門は特別支援教育、実験心理学。
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程修了。博士(障害科学)。
さいたま市の肢体不自由特別支援学校、きこえとことばの教室での計10年間の勤務を経て、現在茨城大学教育学部助教。