【著作・制作物紹介】全学教職センター・小川哲哉特任教授編著「教育改革と現代社会」
教育改革と現代社会
小川 哲哉 編著(全学教職センター 特任教授、名誉教授)
出版社:青簡舎
出版日:2023年6月
ISBN:978-4-909181-40-4
価格:本体2,800円+税
編著者コメント
本書は、わが国の文教政策の最新の動向を概観し、今の教育現場が抱えている諸問題に切り込みながら、これからの教育改革と学校教育のあり方をできる限り多様な側面から明らかにしました。本書を編集・執筆した直接の動機について触れておきたいと思います。
およそ3年にも及んだコロナ禍は、社会生活を一変させましたが、学校教育にも大きな影響を与えました。教師や児童生徒たちが対面で行うコミュニケーションは阻害され、一時期は学校に行くことさえ困難になりました。こうした状況に対処するため、2021(令和3)年1月26日に中央教育審議会は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」を答申し、この状況を乗り越え、これからの学校教育を根本的に改革していく様々な教育課題を提示しました。
本書は、そうした教育課題に検討するために、第1部では「文教政策と教育改革の動向」に関する論考を数多く掲載しました。第1章では、公教育制度の歴史的起源を明らかにしながら、令和の日本型学校教育が意味するものについて分かりやすい考察を行いました。第2章では、現代社会と教育改革の動向を「新自由主義」と「大国主義」の分析を通して、現代教育の問題点を浮き彫りにしました。第3章では、文教政策と教育課程の問題をカリキュラムの歴史的起源に遡りながら、現代の学力問題を教育課程論の観点から論究しています。第4章では、近年学校教育で重要視されている「教育評価」の問題を取り上げました。学校では従来の「何を知っているか」という知識伝達型教育から、「何ができるようになるか」という知識活用型の教育に大きく変わりました。その際に重要なのが教育評価になります。第5章では、わが国の戦前・戦後の教員養成教育とその改革動向を考察しながら、教職の現代的課題を考察しております。第6章では、特別の支援を必要とする児童生徒に対する文教政策の動向を概観しました。
第2部では、第1部で明らかにした政策的動向の分析に基づきながら、複雑な様相を呈している「学校教育の多様性」に関する論考を多数収録しました。第7章では、今日の学校教育の理論的基盤である主要な教育学者の教育思想を分析し、その現代的意味を明らかにしています。第8章では、学校において教科教育と並び重要な「教科外教育」の史的変遷と、その現状を明らかにしました。第9章では、近年諸外国で注目されつつあるわが国の「特別活動」を導入しているエジプトの事例を取り上げ、その特質を明らかにしました。第10章では、高校のホームルーム活動における公共性をめぐる討議活動の実践例を紹介し、第11章では、「総合的な探究の時間」における探究の学習方法と教育実践について論究しました。第12章では、小1プロブレムの解決を図るための生活科の動向と、保幼小連携の実態について分析しました。
このように、本書の内容は単に文教政策の動向だけではなく、現代教育の実践的諸問題まで多岐にわたるものになりました。したがって読者も、単に教育行政や教育現場の関係者、教職課程の学生諸氏だけでなく、教育問題にご関心のある一般の方々も対象としております。是非、ご一読下さい。
編著者プロフィール
小川 哲哉(全学教職センター 特任教授、名誉教授)
1958年北海道生まれ。
広島大学大学院教育学研究科博士課程後期(教育人間科学専攻)修了。博士(教育学)。
九州産業大学大学院教授、茨城大学教育学部教授を経て、現在茨城大学名誉教授、茨城大学全学教職センター特任教授。
主な著書に「フリットナー民衆教育思想の研究(2008年、青簡舎)、「主体的・対話的な<学び>の理論と実践(2018年、同)など多数。