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茨城大学フェノロジープロジェクトが観察木にプレートを設置

 今年2月に誕生した課外活動団体「茨城大学フェノロジープロジェクト」の学生たちが51日、観察対象とする樹木を紹介するプレートの設置を開始しました。
 同プロジェクトのメンバーが、プロジェクトの概要やプレート設置の様子について紹介します。

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フェノロジーとは?

 季節の移り変わりに伴う、生物の状態や行動の変化(植物の開花、紅葉・黄葉、鳥やカエルの初鳴など)を、フェノロジー(生物季節)といいます。植物や動物のフェノロジーのタイミングの変化は、気候変動の影響を示す指標の一つであることから、毎年継続的にフェノロジーを観測することで、徐々に進行する温暖化などが私たちの生活や生態系に及ぼす影響(季節の遅れや進みなど)を知ることが期待されています。

 1953年以降、気象庁は57種の動植物を対象として全国各地でフェノロジーの観測を行ってきましたが、2020年、観測対象を植物6種に減らすことを発表しました。その後、国立環境研究所気候変動適応センタA-PLATが事務局となり、気象庁の観測を継続、発展させるための試験的な取り組みを開始し、市民が中心となって観測体制を構築・維持する方法の検討、全国的なネットワークの構築、データを活用する仕組みづくりを目指しています。

S__49455109.jpg 今年4月から5月にかけて観察した茨苑会館裏の「ノダフジ」の開花の様子

茨城大学フェノロジープロジェクトの活動

 2022年春、理工学研究科(理学野)の及川真平准教授を顧問とし、「茨城大学フェノロジープロジェクト」を立ち上げ、水戸キャンパス内の植物を対象にしたフェノロジー観測を開始しました。現在、ウメやイチョウ、カキノキなど12種の植物の観察を行なっています。プロジェクトでは、12種の植物の開花や紅葉・黄葉の観察に加え、月に一度のミーティングと不定期で行う茨城県内の動植物観察、トレッキングなども行っていて、学生メンバーのほか、教職員も活動に参加しています。

 ※同プロジェクトが観察対象としている、水戸キャンパス構内の植物。順次対象を増やしていく予定。(「ヤマグワ」のみ観察対象木を検討中)
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植物プレート設置の経緯

 私たちは51日、観察する植物を紹介するプレートの設置を始めました。計12種の植物に対しプレートを設置する予定で、この日は水戸キャンパス南第一通用門横の「カキノキ」と茨苑会館裏の「ノダフジ」の2つについて作業を行いました。

 今回のプレート設置の狙いは、構内にいる植物の生物的・文化的特徴を紹介することで、学生、教職員の皆さんの興味・関心を高めることです。プレート設置のアイデアはこのプロジェクトの創設初期に浮上しました。私たちはこのプレート設置を活動の最重要課題とし、及川准教授を交えた数回の話し合いを経て決めました。

 プロジェクトメンバーの山下貴大さん(農学部1年)は「名前や特徴を知ることで、植物をより身近に感じていただけると嬉しいです。そのためにも残りのプレート設置もメンバーが一丸となって取り組み、早期の完了を目指していきたいと思います」と意気込みを語りました。

植物プレート設置レポート

 5月1日夕刻、帰路に就く人たちを横目に作業開始。まずは「カキノキ」から。植物プレートの支柱を立てるため、杭を打ち込みます。地面に穴をあけるのです。前日の雨に助けられ、杭は順調に地面の中へ。体重をかけるだけでも深さが増していきます。5分足らずで目標の深さに到達。せっかく打ち込んだ杭ですが、ここで役目は終わり。杭を引き抜きにかかります。

 続いて、杭が作った穴を拡げます。ちょうどいい道具があるもので、あけた穴に刺し、持ち手を握ってグルグル回すと掘ることができます。この道具が気になる方は、「らせん穴掘り」と調べれば見つけられるでしょう。周りの植物をらせんに巻き込んでしまうことへ心を痛めつつ、無事に穴は拡張されました。そうして、ようやく支柱の出番がやって来る。支柱を曲げないように気を付けながら、まっすぐに立てる。穴を埋めて、土を支柱の周りに少し盛るときれいに自立。仕上げにプレートを取り付けて作業完了。ちなみに、カキノキは、「茨大正門前」のバス停を利用する際、キャンパスの内側を見やればご覧いただける、案外身近なものです。

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 次は「フジ」のプレートを設置します。手順は「カキノキ」と同様。しかし、フジの場合は付近の地中に何か埋まっているようで、支柱を立てられそうな場所がなかなか見つかりませんでした。他にも、フジ自身の根に穴掘りを妨げられたためにカキノキの場合よりも時間を要しました。フジのプレートが立て終わる頃、フジの花は白い輝きも落ち着き、重なっていた花びらの影も見えなくなっていました。

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プロジェクトの今後の活動

 次回のプレート設置は、「ヤマグワ」を第1候補に、人目の届きづらい位置にある植物から対象としていく予定です。残る10種、それぞれ観測時期となる前にプレートを取り付け終えるのが目下の目標。プレート設置に興味のある方はぜひご一報いただければと思います。プレートを眺める機会はあっても、自らの手でプレートを設置する機会はあまり多くないはずです。

 観測についても少しだけ。次なる観測は「クリ」で行われる予定です。クリの花を意識的に見つめてみるとさまざまな発見ができます。予想外だ、と思われる方がきっといるはず。クリの後は「サルスベリ」の観測となります。図書館前、芝生の広がるところに立っている木が観測木。芝生を踏み荒らさず、サルも滑るといわれる樹皮に触れてみたい方には、教育学部のB棟とC棟の間にあるサルスベリがおすすめです。

IMG_20230524_112434.jpg 今後観察を開始する「クリ」の現在の様子。
つぼみが成長中(2023.5.24 双眼鏡を使用して撮影)

※活動の様子は、TwitterInstagramで発信しています。興味を持ってくださった方はぜひフォローをお願いします。
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(構成:茨城大学フェノロジープロジェクト 山下貴大(農1年)、永島彰人(人社3年))