那珂市立第三中学校。近隣の小学校とともに「緑桜学園」と呼ばれるとおり、校門をくぐるといくつもの種類の緑が目に飛び込む。芝のグラウンドとそれを囲む杉林を窓から臨む2階の教室では、帰りの会が行われている。生徒たちが主体的に進行する様子を、担任の出羽拓真先生がにこやかに見守っていた。
恩師の講義を通じて学んだこと。授業がおもしろければ、子どもたちは主体的になる。
この学年は、入学したときからずっと担任しています。3年目になると、帰りの会も自分たちだけで進められるようになる。私がいなくても大丈夫(笑)。
授業を通じて、子どもたちの意見や、「自分たちでやろう」という気持ちを育てることを目標にしています。学部時代の卒業研究では、「児童中心主義」を掲げる研究者や実践者の考えを整理しながら、自分ならどう授業に活かせるかを考えていました。その過程で出会ったのが、小・中学校の教員を経て実務家教員として着任した打越正貴先生です。打越先生の講義を通して、「授業がおもしろいのって大事なことなんだな」と実感したんです。子どもたちが主体的になれる授業づくりをもっと追究したい。そう思うようになり、当初は考えてもいなかった大学院進学を選ぶことになります。
それが実は、教職大学院ができた最初の年。1期生だったんです。先生たちも手探りで、昔の著名な教師の授業映像を見て文字起こしをするような課題もありました。次の年からはそれを教材として使っていたと思います(笑)。でも文字に起こされたものを読み返すと、行間も含めて多くの気付きがあって役に立ちました。
実習先の小学校では算数を担当し、考えを吹き出しで書かせる実践などに取り組みました。教師は子どもへの理解が深まり、子ども同士は学び合いが生まれる。そうして大学と学校現場を往復しながら学ぶことで、その後、自分の勤務校や実践を俯瞰して捉えられるようになったと感じています。
中学校は、小学校に比べて担任が生徒たちと向き合う時間が限られていますよね。ですから、小さな問題でも言葉に還元して共有するし、授業でノートをどんなふうに書いてほしいかも伝えて、よかったものは価値づけてフィードバックしていく。口頭だけでなく学級通信を通じて保護者にも伝える。それから、私自身の姿勢や行動も生徒たちはよく見ています。だから私もちゃんと行動するし、できていなかったら「ごめん」と伝える。そういう小さなステップを一歩ずつ積み重ねていくうちに、自分たちのクラスを良くしたいという思いが子どもたちの中に育ち、主体的に動けるようになってきました。
学校や地域によって実態はさまざまですが、どこであっても、その子たちに向き合い、授業を工夫することはできるし、それこそが地域に根ざして教育を支える教師の力量だと考えています。その意味で、現在でも他の学校現場におじゃましていろいろな授業を見るようにしているんです。忙しさはありますが、自分の仕事を見直すヒントもたくさん得られますし、初心に帰れる気がします。大学でも、学生たちができるだけたくさん学校へ足を運び、現場の実際の姿に触れる機会をつくってほしいですね。一方、教育原理や歴史の学びもやっぱり大事。教科の専門的な知識と多様な子どもたちの学びの間の「はしご」をどう作っていけるか、大学生にも日々意識してほしいです。
Profile
緑桜学園那珂市立第三中学校教諭/茨城大学大学院教育学研究科(教職大学院)修了 出羽 拓真 (でわ・たくま)
千葉県出身。2016 年茨城大学教育学部卒業。2018 年茨城大学大学院教育学研究科(教職大学院)を修了。現在、公立学校の教諭として9年目。担当教科は英語。今年度、校内では道徳主任を自ら志願して担当。「道徳の授業が授業力向上の要になる。授業外の実践にどうつなげられるかを含め向き合っていきたいです」
今、イバダイでは
教育学部で「地域教員希望枠」をスタート!
2026年度入学者選抜より教育学部において「総合型選抜」を導入し、「地域教員希望枠」を新たに設けました。茨城県教育委員会との連携で導入された同枠では、茨城県内で働く教員を目指す強い意欲をもった学生を募集しています。
地域課題に対応する所定の実践力養成プログラムを在学中に修了することで、茨城県公立学校教員選考試験(小学校)を特別選考で受験できます。学校現場とも協力したプログラムにより、学生たちはより実践的な学修ができます。あわせて地域の教育に関する課題解決への貢献にもつながります。
同枠での合格者は、入学前から教育学部附属学校園でのインターンシップを体験できます。教務を補佐したり、子どもの学習を支援したりする活動をいち早く体験。入学後に大学の単位として認定します。
この記事は茨城大学の広報紙『IBADAIVERS(イバダイバーズ)』に掲載した内容を再構成したものです。
構成:茨城大学広報・アウトリーチ支援室 | 撮影:小泉 慶嗣