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地域で輝く卒業生を職場に訪ねて 
<原子力>国立研究開発法人日本原子力研究開発機構工作技術課・野澤拓也さん

 日本原子力研究開発機構(JAEA)の広報担当者から「原子力は総合科学なんです」と教わった。なるほど、化学・物理学はもちろん、放射線の影響なら生物学、最近は考古学にも量子線が使われる。そんな多様な分野の研究者たちから、実験装置の工作相談を一手に引き受けているのが、同機構の工作技術課の野澤拓也さんだ。

野澤拓也さん

工学部で学んだ数学や統計、電磁気学、測定器の扱いなど基礎的な学びが今になって生きています。

 JAEAは全国に拠点がありますけど、ものづくりを専門にしている部署は東海村のここだけです。私は研究者の方々から依頼を受け、電子回路や基板の設計・実装を担当しています。最近では、放射線耐性のある発電素子の特性評価装置などを作りました。既製品では対応できない特殊な装置が多いため、外注するより内製したほうが速く、コストも抑えられるんです。
 依頼内容をそのまま形にするのではなく、エンジニアの視点から「もっと良くできるのでは」と提案することを心がけています。研究者と一緒に開発した装置が特許を取得し、展示会を経てメーカーで商品化された例もあります。よい研究や社会実装につなげていくためにも、依頼の表面だけを見るのではなく、背景を理解することが欠かせません。作業中の雑談のようなフランクなやりとりを通じて、研究者の気持ちを汲み、後々でも使いやすいものをつくる。研究が行き詰まったときにそれを打開していくのは技術をもっている人だと、そう思ってもらえるように、相談に対してはプロとして何かしらのソリューションを返せるようにしたいんです。
 ですから、この仕事は「狭く深く」より「広く浅く」。茨大工学部で学んだ数学や統計、電磁気学の授業、それからオシロスコープのような測定器の扱いなどの基礎的な学びが今になって生きています。ただ、学生時代は学びが点でしかなく、どう役立つかが実感できませんでした。その意味で、学部時代にもエンジニアリングと結びついた実践の機会がもっとあったらと思いますね。
 茨大では自動車用ミリ波レーダの研究をしていました。大学で通信工学を学ぼうと思ったのは、東日本大震災がきっかけです。水戸市内の高校から夜遅くにようやく帰宅して、津波や原発事故を初めて知りました。電話やネットなどの通信が遮断してしまうんだという驚きが、あの日の澄んだ星空とともに忘れられません。
 震災後、工作技術課も変化しました。原子力利用の黎明期から多くの技術者が活躍し、放射線計測器などを生み出してきましたが、時代とともに職員は減り、原発事故後は技術開発領域も原子炉だけに留まらず、より複雑化している。そんな中で、つい最近まで電子工作の担当職員は私一人しかいなかったのです。
 原子炉に使われている回路には職人技が詰まっており、今では部品が生産されていないものもあります。そんなときは先輩たちが残した膨大な回路図を読み込み、修理方法を探ります。大変ですが、ここで技術をつなぐ人がいなければ、伝統ある工作技術課が途絶えてしまうかもしれない。多様な研究者間の隙間をつなぎ、この仕事を未来につなぎたい。その思いで日々研鑽を続けています。

Profile

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構原子力科学研究所工務技術部工作技術課/茨城大学大学院理工学研究科博士前期課程修了 野澤 拓也 (のざわ・たくや)

水戸市出身。2018 年茨城大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。日本原子力研究開発機構では原子炉施設の運転管理の業務を担当した後、2022 年より現在の工作技術課。プロモーションオフィス、NXR開発センター戦略ユニットも兼務。同センターでは劣化ウランを使った新型蓄電池の大型化などのプロジェクトに参加している。第3種電気主任技術者、第1種放射線取扱主任者、第1種電気工事士の資格を有する。

今、イバダイでは

原子力安全・原子力規制の両面で人材育成を強化

 茨城県は日本で初めて原子力発電の火が灯った地です。茨城大学では2024 年に原子科学研究教育センター(RECAS)を設置し、「社会/地域課題共考解決室」と「応用原子科学部門」「次世代革新炉部門」「放射線安全部門」の1室3部門体制で研究・教育を推進しています。原子力分野では、廃炉技術の開発や、放射線・放射性物質が生物や社会に与える影響に関する研究・教育を通じて、原子力安全に資する人材の育成を進めています。
 また、RECASの設置と同時期に、茨城大学は原子力規制庁が実施する原子力規制人材育成事業に採択されました。本事業では、放射線や放射性物質であるトリチウムに関する知識に加え、原子力全般に関する専門人材の育成を進めるとともに、原子力規制の考え方や制度を理解した人材の育成にも取り組んでいます。
 これらの事業の一環として福島第一原子力発電所の見学を実施しています。事故で燃料デブリが落下したと考えられる箇所と同様の構造を持つ原子炉の見学など、現場で直接学ぶことで、事故の現状への理解と、今後の復旧・廃炉に向けた課題や技術についての実践的な知見を養っています。

福島第一原子力発電所を見学する学生たち

この記事は茨城大学の広報紙『IBADAIVERS(イバダイバーズ)』に掲載した内容を再構成したものです。

構成:茨城大学広報・アウトリーチ支援室 | 撮影:小泉 慶嗣

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