国立天文台、山口大学、茨城大学、東京大学、京都大学などの研究グループは、日本VLBI観測網(JVN)を用いて超新星「SN 2024iss」を約1年間にわたり観測しました。その結果、爆発10日後と23日後に電波放射を検出しました。観測結果から、爆発で生じた衝撃波の広がる速さは、標準的な理論予想よりも速く、親星の近くに濃いガスが存在していた可能性が示されました。これは、親星からのガス放出が、爆発直前に複雑に変化していたことを示唆します。
本成果は、Iwata et al. “Radio Constraints on the Circumstellar Environment of the Type Ⅱb Supernova SN 2024iss” として、日本天文学会欧文研究報告(PASJ: Publications of the Astronomical Society of Japan)に2026年8月6日に掲載されました。
超新星は、大質量星が進化の最後に起こす大爆発です。その中でもⅡb型と呼ばれる超新星は、親星が爆発前に外層の大部分を放出し失っていたと考えられています。星から放出されたガスは星の周囲に広がり、「星周物質」をつくります。超新星爆発で高速で飛び出した物質が星周物質に衝突すると、電波が放射されます。そのため、電波の明るさの変化を調べることで、親星が爆発前にどのようにガスを放出していたのかを知ることができます。
SN 2024issは、2024年5月12日に発見された地球から約4600万光年の距離にあるⅡb型超新星です。国立天文台水沢VLBI観測所の岩田悠平助教らの研究グループは、JVNでの観測として、茨城大学の日立32 m電波望遠鏡と山口大学の山口32 m電波望遠鏡を組み合わせ、爆発3日後から366日後まで計9回の観測を行いました。解析の結果、爆発10日後と23日後に電波放射を検出し、その後の観測では検出されませんでした。この結果から、SN 2024issの電波放射は、他のⅡb型超新星と比べて爆発後の比較的早い時期に明るくなったことが分かりました。
さらに、電波の明るさとそのピーク時間から、爆発によって生じた衝撃波の速度を推定しました。その結果、衝撃波速度は、親星から一定の割合でガスを放出すると仮定した理論値よりも約2倍大きいことがわかりました。この違いは、親星のすぐ近くに濃いガスがあり、衝撃波がその領域を抜ける際に加速されたと考えることで説明できる可能性があります。別のX線観測からも、親星の近くに濃いガスが存在していたことが示唆されています。今回の結果により、SN 2024issの親星からのガス放出が、爆発直前に一時的に活発になっていた可能性が示されました。
研究グループは、過去にも別のⅡ型超新星を同様の方法で観測しており、今回が2例目の電波検出の報告となりました。今後もさまざまな種類の超新星を追観測するとともに、VLBIの高い空間分解能を生かして、爆発による膨張を直接捉えることが期待されます。
論文情報
- タイトル: “Radio Constraints on the Circumstellar Environment of the Type Ⅱb Supernova SN 2024iss”
- 著者:岩田 悠平(国立天文台)、松岡 知紀(東京大学、國立中興大學、中央研究院天文及天文物理研究所)、穐本 正徳(山口大学)、前田 啓一(京都大学)、冨永 望(国立天文台)、米倉 覚則(茨城大学)、守屋 尭(国立天文台)、新沼 浩太郎(山口大学)、藤澤 健太(山口大学)
- 雑誌:日本天文学会欧文研究報告(PASJ: Publications of the Astronomical Society of Japan)
- 掲載日:2026年8月6日
- DOI:https://doi.org/10.1093/pasj/psag093
謝辞
本研究は、以下の支援を受けて実施されました。JVNは、国立天文台の大学間連携研究事業として運用されています。
- JSPS科研費 JP23K13151、JP15H00784、JP23H04894、JP24KK0070、JP24H01810、JP26KJ0055
- 台湾国家科学及技術委員会 MOST 110-2112-M-001-068-MY3、113-2112-M-001-028-、NSTC 114-2112-M-001-012-
- 台湾中央研究院 AS-CDA-111-M04