今年4月、スチューデントサクセスセンター(SSC)に、「アカデミックアドバイジング室(AA室)」が新たに開設されました。
高校までの学びとは異なる大学での学修。「計画がうまく立てられない」「将来のイメージがはっきりせず今の授業や活動が何につながるかが見えない」「学外の活動に挑戦したいけれど一歩が踏み出せずにいる」など学生一人ひとりの悩みや思いを聞いて、一緒に課題を整理し、次の一歩を見つけるのがアカデミックアドバイザーの役割です。
AA室とはどんなところなのか。室長を務める大津正知准教授に話を聞きました。(聞き手:茨城大学広報・アウトリーチ支援室 山崎一希)
―開設から1か月。学生たちは利用していますか?
大津「入学前セルフラーニングやガイダンスを通じてさっそくAA室を知ってもらえたようで、既に多くの学生たちが利用してくれています」
―どのような相談が多いでしょうか?
大津「具体的な内容は明かせませんが、『教員免許や資格取得に必要な単位と卒業単位を両方取得できるか不安です』とか『別の学部に転部できるでしょうか』といったものから、『海外の大学院に進学したい』など様々です」
―それらの相談にどう応じているのですか?
大津「私たちアドバイザーが答えや正解を示すことはありません。何に引っかかっているのかということを学生自身が整理し、納得できるようにサポートします。たとえば『卒論が書けない』という相談も、一緒に話をしているうちに、実は卒論の内容に困っているのではなく、複数のタスクを整理して計画的に進めることに課題があったというふうに整理できたりするわけです」
―転学や転部の相談というのもあるのですね。
大津「転学や転部の相談というのは、指導教員や担任には言い出しづらいことかもしれませんね。転学や転部を考えている学生には、本学の制度や各学部の募集状況、あるいは本学の中で転部する人がどのぐらいいるのかといったデータを提供するなどして、メリット・デメリットを一緒に整理します。今の学生生活自体は充実しているという場合も結構あるので、正しい情報を得てもう一度自分で考えるうちに、転部をしないことにしたというケースも少なくありません。一人で抱えるのではなくて、誰かと話をして自分を納得させていく。私たちはそのプロセスを支えています」
―この部屋はソファもあり音楽も聴こえて居心地がよいですね。相談もここで行うのですか?
大津「はい。アカデミックアドバイジングを研究している愛媛大学の清水栄子先生によれば、相談の空間は開放的な方がよいということでしたので、私たちもそれに倣いました。この部屋で思い思いに過ごしてもらいながら、他の人の話が聴こえるような聴こえないような…という環境で気楽に話をしてもらえればと思います。もちろんオープンに話せない相談内容もありますが、そういう場合は場所を変えるか、必要に応じてアクセシビリティ推進室やキャリアセンター、保健管理センターなど、より適切な部署につなぎます」
―キャリアやヘルスケアの相談窓口はどこの大学にもありますが、学修面の総合的な相談に対応するアドバイザーが常駐しているというのは珍しいように思います。
大津「愛媛大学が先駆けとなり、全国の大学を対象とした研修なども担っています。ただ、国立大学ではまだ少ないと思いますね。この点では茨城大学も先行している方です」
―アカデミックアドバイジングが求められる背景は?
大津「学生の目的意識の広がり、カリキュラムの複雑化、多様なキャリアとの接続、卒業後も学び続ける生涯学習の重視といった動きが背景にはあります。学生にとっては、学部のもつ系統的な専門知識だけではなく、幅広い知識やスキルの獲得が求められている中、個々の教員や部署に留まらない総合的な学修支援が必要となってきているといえます」
―総合的な学修支援とは?
大津「学部・学科を選んで入学したものの、『自分のやりたいことがわからない』『自分の目標とこの学部での学びが本当に合っているのか』という不安を抱くのは、普通のことです。学部の方では各専門分野のおもしろさや深さ、そこでの学びがどういう職業につながるのかという助言ができると思います。一方、学生自身の関心や不安から話を始めて、大学内外での幅広い学びの選択肢を念頭に、茨城大学での学びの方向性を一緒に探るのがAA室の役割です。特定の『学部生』ではなく『茨大生』と捉えて、フラットな感覚でみんな育てるイメージですね」
―どちらも大切なサポートですね。本学の場合、プラスIプログラムやiOPといった正課およびそれに準ずる多様なプログラムも用意しています。確かにカリキュラムも複雑化していますね。
大津「『長期留学をしながら4年間で卒業したい』という相談もあります。制度的には可能であっても、1年生のときから緻密な履修計画を立てないと難しいということもあるんですね。それでも私たちとしては、学生自身の『やりたい』『こうなりたい』という思いを大事にして、茨城大学で達成できるように応援したい。その観点から学生自身が大学の仕組みを理解し、自分で計画を立てられるようサポートしています」
―まさに「スチューデントサクセス」の体現ですね。そうした学生たちの相談がきっかけとなって、本学のカリキュラムの課題も見えてきそうですね。
大津「現状ではそこまでの仕組みにはなっていません。ただ、本学では、ディプロマポリシーの達成度などの学生アンケートの結果を踏まえて授業やカリキュラムの点検・改善に取り組む、教育の質保証の取組みを強みとしてきました。今後アカデミックアドバイジングの活動を通じて、学生が学びを進める上でつまずきがちな部分を把握し、全学や学部でカリキュラム改善に生かしていくことは重要になってくると思います」
―その意味では、自分からはAA室に相談に行かない・行けないような学生の声も大事になりますね。
大津「実はいくつかの学科と協力して、その学科の1年生全員と面談を行えないかという計画も立てているところです。全員と面談する中で、学修上の悩みがないかを聞き取りつつ、ディプロマポリシーや目標との結びつきやギャップも探っていければと思っています」
―学生全員と!それは壮大な計画ですね。今後、幅広い教職員がアドバイジングの活動に関われるようになるとよいのですが。
大津「そうした提案はありがたいです。私たちの方でも研修を行ったり、マニュアルを作ったりしています。また、将来的には学生が学生の相談に乗るピアサポートも導入していきたいです。これまでやってきた実感としては、全ての相談を学生が対応するのは難しいように感じていますが、一方でiOPのことなど、学生同士だからこそうまく対応できる分野もありそうです。少しずつ仕組みを整えていければと思います」
―当面の取組みは?
大津「滑り出しは順調でしたが、年度初めというのも大きかったと思います。AA室は年間を通じて相談を受け付けていますから、多くの学生に知ってもらえるよう引き続き広報もしていきます。また、この部屋を使っていろんなイベントをやってみたいとも思っています。学修計画の立て方を考えるようなものや、図書館と協力したイベントなどができるといいですね。そうした機会を通じてAA室にも興味をもってもらい、茨城大学での学生生活が少しでも満足したものになればと願っています。まずは気軽に訪ねてきてください」
問い合わせ
スチューデントサクセスセンター アカデミックアドバイジング室
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