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低エネルギーなCO2回収技術を産学官金で開発・実装
―MSA-DAC研究会、新年度キックオフ 会員団体数が倍以上に

湿度スイング式DAC(MSA-DAC)研究会メンバーの集合写真

 茨城大学カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)が組織する「MSA-DAC研究会」の2026年度のキックオフを迎えました。大気中の二酸化炭素CO2を低エネルギーで回収できると見込まれる「湿度スイング式DAC(MSA-DAC)」の社会実装を目指す同研究会。会員企業・自治体の数も昨年度の倍以上となり、産学官金の連携による技術開発に拍車がかかります。

 CRERCは、大気中のCO2の「回収」、回収したCO2を用いた燃料の「合成」、合成した燃料の低コストな輸送や安全な「利用」という「カーボンリサイクル」を一気通貫して研究できる世界的にも稀な研究拠点です。

 このうち「DAC(Direct Air Capture)」と呼ばれるCO2の回収技術をめぐっては、CRERCでは「湿度スイング式DAC」という方法に注目して研究を進めています。湿度スイング式DACは、乾燥した環境ではCO2を吸着、湿潤な環境ではCO2を脱離する機能をもつ陰イオン交換樹脂を利用して、常温で水を使ってCO2回収・分離を行う技術です。必要とする外部エネルギー量が他の方法と比べて低い点が特徴です。

 既に実験室レベルでの開発には成功しており、現在、高速道路のトンネルにおける実証実験などを実施していますが、そうした社会実装に向けたステップを加速すべく、昨年11月に発足したのが「MSA-DAC研究会」です。

高速道路のトンネルの実証実験で使用している装置
高速道路のトンネルの実証実験で使用している装置

 研究会は、年間300万円規模の共同研究契約を結ぶ正会員と、寄附を行う賛助会員、さらに地域や業界内でのコーディネート等を担う特別会員とで組織されており、昨年度の発足時点では、正会員が2企業、賛助会員が2企業、特別会員が茨城県・日立市・ひたちなか市といった自治体を含む5団体という構成でした。研究会ではCRERCの基盤技術を共有し、水と熱のマネジメント手法、吸着剤の検討、省エネ化といった課題を掲げて、共同での研究を進めてきました。

 そして、新たな年度のキックオフを迎えた今年4月、その会員数は、正会員5企業、賛助会員8企業、特別会員5団体の計18団体に拡大。4月24日に茨城大学日立キャンパスの小平記念ホールで開催された総会では、会員団体から集まった代表CRERCの田中光太郎センター長が進捗状況を説明しました。

 「CO2の吸着剤の性能向上は、境田(悟志)・福元(博基)の両研究室でアクティブに進めてきた。MSA-DACの研究界隈では世界最高峰だといってよいレベル」と自信をのぞかせた田中教授。今年度の課題として、①外部エネルギー量の数値目標の達成、②吸着剤性能のさらなる向上、③装置の有効利用法の提案を掲げつつ、「われわれアカデミアの研究はときに産業会との間に大きな谷ができてしまう。みなさんからぜひ忌憚のない意見をいただきながら技術開発を進めたい」と呼びかけました。

研究会としての意気込みを語った田中センター長
研究会としての意気込みを語った田中センター長

 続いて会員団体の代表者による自己紹介が行われました。企業の方からは「脱炭素に取り組んでいく具体的な手立てとしてこの研究会に参加して応援したい」、また自治体の方からも「地域の重要なインフラや産業につなげていきたい」などの期待の声が多く挙がりました。

 総会終了後は、賛助会員と特別会員のうちの希望者を対象に、キャンパス内の関連施設のツアーを行いました。案内したのは大学院理工学研究科の大学院生たちです。一行は、湿度スイング式DACの性能評価の設備、外部から導入したCO2を使ってメタノールを生成する設備、燃焼実験の装置などを順に見学。参加者からの「どのぐらいのCO2から、どれほどの燃料を合成できる見込みなのか」などの質問に対し、大学院生が丁寧に説明をしていました。

キャンパス内の関連施設のツアーの様子

 MSA-DAC研究会は、引き続き基盤的な技術の情報の共有や議論を行っていくとともに、「今年度は企業のみなさんと学生たちとの交流の機会もつくりたい」(田中センター長)とのことです。

MSA-DAC研究会 2026年度会員団体(2026年4月24日現在)

正会員 中日本高速道路株式会社、日本酸素東関東株式会社、新菱冷熱工業株式会社、関彰商事株式会社、ダイキン工業株式会社
賛助会員 株式会社諸岡、昭和建設株式会社、長尾産業株式会社、恵和興業株式会社、泰榮エンジニアリング株式会社、太洋電機産業株式会社、日立セメント株式会社、株式会社リサイクルパーク
特別会員 茨城県、日立市、ひたちなか市、株式会社日刊工業新聞社、株式会社常陽銀行

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