地域未来共創学環第一期生(2年生)たちのプレコーオプ実習報告会が12月25日、水戸キャンパスで開かれました。学生たちは、夏季休業期間中に企業・団体や自治体で就業体験して得た学びやその成果を、教職員や実習先の関係者、後輩たちに向けて発表しました。
地域未来共創学環は、2024年度に開設した学部相当の教育組織です。人文社会科学部・工学部・農学部との連係による学部等連係課程で、全員が「ビジネス」「データサイエンス」「ソーシャル・アントレプレナーシップ」を学ぶという分野・文理横断型のカリキュラムと、企業や自治体等で長期間にわたり有給の実習を行う「コーオプ実習」を特徴としています。
コーオプ実習とは企業や自治体等での実習で、インターンシップとは異なり、大学と実習先が協働して実習内容を設計し、実習の成果は大学の単位として認定されるカリキュラム上の学修です。実習先として茨城県内の自治体や製造業、情報通信業、小売業、公的団体など約50の企業・自治体等の協力を得ています。「プレコーオプ実習」は、1年次のプレコーオプ演習(学内)を経て、2年次夏季休業期間中に協力企業・自治体等で実施する無給の就業体験です。本格的な長期有給実習である「コーオプ実習Ⅰ」の前年度に学外で約2週間(計60時間)の実習を行い、実習先にて実社会を体験させていただき、「働くこととは何か」について理解を深めることが目的です。
プレコーオプ実習は今年度初めて実施され、2年生41人が計33の企業・団体、自治体で就業体験しました。報告会では、実習内容の紹介にとどまらず、現場で得た経験や学びを報告しました。大学での学修との結びつきや、来年プレコーオプ実習を実施する後輩たちへのアドバイスを伝えたりする姿も見られました。
ここから、その一部を紹介します。
「ものづくりの流れを現場で目の当たりにすることで、『理論と実践の往還』を実感することができました」と語ったのは、土浦市にあるオリエンタルモーター株式会社で実習をした大平芽衣さん。総務課で社内報作成の業務にも携わったそうで、工場の工程の自動化を担う社員の方にインタビューをしたことが強く印象に残っていると言います。
「加圧機械の調整ねじの回し方、力の入れ方に匠のわざがあって、それをどう可視化して自動化するかという話だったのですが、その中で『暗黙知』や『ニーズ』といった言葉が出てきたんです。どちらも経営・マーケティングの授業で聞いた言葉でした」と大平さん。顧客を観察する→ニーズを見つける→商品開発・販売と同様の構図が、社内のものづくりの工程の最適化にも適用できるということに驚いたと言います。「物事には共通の構図があるのだとわかりました。ひとつひとつのプロセスが確立されているものづくりの企業で実習したからこそ気付けたかもしれません」と話し、プレゼンテーションを聞きに来ている後輩たちにも「おすすめです」と呼びかけていました。
那珂市役所で事務補助や行政サービス業を体験した鈴木誉怜さんは、「行政の仕事は人間のあたたかさと支えあいによって成立している」とまとめました。地域創成データサイエンスプログラム でAIについて学ぶ機会が多く、また、自治体へのAIの導入や代替の可能性についてよく耳にしていたそうですが、「職員の皆さんは、市民の皆さんへの説明というよりも、安心の提供を重視していた。相手に寄り添って話したり話を聞いたりする姿を見て、再現できるものではないと思った」と生身の人間が対応することの良さを目の当たりにしました。
支所の利活用を検討する会議に陪席した際には、地域活性化に関する授業とのつながりを感じたといいます。市民同士の話し合いを見学するうち、「アイデア勝負ではなく納得感の積み重ねが大切であることに気づきました」と話しました。
勅使河原翔さんは、「人とかかわり新しい価値を生み出し、広める」ことを目標に、水戸商工会議所でSNSを活用した情報発信などに携わりました。縦画面のショート動画などを担当し、「リール動画マニュアル」も作成しました。もともとSNSでの発信には興味がありましたが、企業広報でSNSを使用する場合にはさまざまな制約があることも知り「営利目的で使用してはいけない編集サイトなどもあり、社会に向けて情報発信する上で考えるべきことの視野が広がった」と話しました。
大洗町役場では、村松真衣さんと中原大地さんの二人が実習を行いました。毎日のように様々な課を回り、選挙に関わる仕事や、子ども向けの学習支援、健康増進の計画、「にっぽん丸」出港イベント、ふるさと納税マニュアル作成、Instagram投稿など多岐にわたる業務を経験しました。
村松さんは、「実習前まで広報やマーケティングの専門性を発揮した業務にこだわっていた面がありましたが、今回多くの仕事をすることで、どんな分野でも行動によって自分の学びを形にできるということを実感しました」と振り返りました。大洗町を舞台にしたアニメ「ガールズ&パンツァー」の地域への効果に興味があったという中原さんも、ふるさと納税の業務などに携わる中で地域経済や財政への理解が深まったと話します。
会場へプレゼンを聞きに来ていた大洗町まちづくり推進課の坂本武蔵さんは、「2~3日のインターンシップと異なり、2週間の受け入れは私たちにとっても初めてでした。たくさんの『実務』に携われるようにしたいという大学側からの要望でしたので、複数の現場での業務を経験できるようなプログラムにしました。学生には刺激になったと思いますが、私たちにとっても刺激となる経験でした。今日の報告を来年度の実習に生かして改善したいです」と語っていました。
ちなみに茨城大学として初めてのコーオプ実習、学生はもちろんのこと、教職員もその運営は試行錯誤です。プレゼンテーションでは、複数名で一緒の実習先に行った学生に対して「実習やプレゼンテーションに向けて相互の情報交換はどの程度しましたか?」など、 教員が実習方法の改良ポイントを探るような質問をする場面もありました。また、来年度同じくプレコーオプ実習に取り組む予定の1年生も出席しており、 発表者の2年生が1年生へアドバイスを送る姿も何度も見られました。
全学生のプレゼンテーションを終え、福与学環長は、「学生のみなさんへのアンケートでは満足度が高いという回答を得ていたのですが、今日のプレゼンを聞いて『なるほど』と納得しました。実習先のみなさんにとっては初めての試みで大変だったかと思い、感謝いたします。来年は3か月という期間にわたってコーオプ実習に取り組みます。引き続きよろしくお願いします」と、会場の学生や実習先のみなさんに向けて挨拶しました。
(取材・構成:茨城大学広報・アウトリーチ支援室)