茨城大学カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)は、11月21日(金)、低エネルギーでの二酸化炭素(CO2)回収を可能にする「湿度スイング式DAC(MSA-DAC)」の実装化を目指す「MSA-DAC研究会」を、複数の企業や金融機関、さらに自治体の参加のもと発足しました。
カーボンリサイクルと低エネルギーなDAC
2023年開設のCRERCは、大気中のCO2の「回収」、回収したCO2を用いた燃料(e-fuel)の「合成」、合成した燃料の低コストでの輸送及び安全な「利用」という循環を1か所で一気通貫して研究・技術開発できる世界で唯一の拠点です。
脱炭素に向けた技術開発が世界中で進む中、大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)の技術も注目を集めています。
現在普及し始めているDAC設備の多くは、圧力を変化させてCO2の吸着・脱離を行う圧力スイング方式や、温度変化を利用した温度スイング方式と呼ばれるタイプです。これらのシステムの難点はCO2の回収プロセス自体に多くの外部エネルギーを必要とする点です。
一方、CRERCが研究・開発を進めている湿度スイング式DAC(MSA-DAC)は、乾燥した環境ではCO2を吸着し、湿潤な環境で脱離する機能をもつ陰イオン交換樹脂を吸着フィルターとして利用して、水を用いて常温でCO2回収・分離を行うことができる技術です。従来のDAC技術に比べ、理論上は約半分~1/4の外部エネルギー量でCO2を回収できます。 湿度スイング式DACは大きな規模の社会実装が困難と考えられていましたが、CRERCが実験室レベルで開発に成功した技術では、東京ドーム4 個分の広さの吸着フィルターで、日本国内で2050 年に運輸部門から排出されるCO2量相当を回収できると試算されます。
社会実装に向けて
2024年からは、NEXCO中日本と共同で、同社管内の高速道路のトンネル(場所は非公表)における実証実験を開始しました。この実証実験では、1年間あたり1トンの量のCO2回収を計画しています。この量は、回収したCO2を使って合成した燃料(e-fuel)で住宅1軒分の消費エネルギーを賄うのに相当するものです。
こうした進展も踏まえ、11月21日、企業や金融機関、さらに複数の自治体の参加のもと、CRERC内に「MSA-DAC研究会」を発足することとなりました。
同研究会は、年間300万円の規模の共同研究契約を結ぶ正会員と、寄附を行う賛助会員、さらに地域や業界内でのコーディネート等を担う特別会員とで組織します。研究会内において基盤技術を共有し、①湿度スイング法に最適な水と熱のマネジメント手法、②湿度スイング法に最適な吸着材、③ライフサイクル解析による製造から利用までの省エネ化 という3つの課題を掲げて社会実装を進めます。
11月21日時点での会員企業は以下のとおりです。
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正会員 |
中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)、大陽日酸東関東株式会社 |
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賛助会員 |
株式会社諸岡、昭和建設株式会社 |
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特別会員 |
茨城県、日立市、ひたちなか市、 株式会社常陽銀行、株式会社日刊工業新聞社茨城支局 |
CRERC田中光太郎センター長(応用理工学野教授)のコメント
低エネルギーのCO2回収システムである湿度スイング式DACが、実験室での開発フェーズを経て、いよいよ実証実験を行う段階にまで到達しました。今回の産学官金連携による研究会発足により、社会実装を加速化させていきます。企業や金融機関に加えて、茨城県、日立市、ひたちなか市といった自治体に参加いただいたのは、カーボンリサイクルを地域という単位で実装し、地域発の新たな産業の創出も展望できるという点で大きな意義があります。DAC技術の開発競争が激しくなる中、外部エネルギーの低さや、回収したCO2からの燃料合成・利用というCRERCの研究開発環境の強みを最大限生かし、世界の脱炭素化をリードしていきたいです。




