アカデミック・アドバイジング&教務事務の研修を水戸キャンパスで開催、全国の大学から79人が参加
―スチューデント・サクセス実現のために

 9月12日・13日の2日間、茨城大学水戸キャンパスにおいて、「アカデミック・アドバイザー養成講座」及び「教務事務担当者講習会」が並行して行われ、全国の大学から教務やアカデミック・アドバイジングに関わる教職員が集まり、一緒に学びを深めました。

 この研修は、愛媛大学教育企画室が運営する教職員能力開発拠点事業が主催し、茨城大学教学イノベーション機構と日本アカデミック・アドバイジング協会が共催しました。愛媛大学の同室は、大学教職員の能力開発を先進的に進めてきた実績が認められ、文部科学省から「教育関係共同利用拠点」の認定を受けており、大学内外でFD(ファカルティ・ディベロップメント)・SD(スタッフ・ディベロップメント)の企画・運営に取り組んでいます。今回の茨城大学での研修は、同様に教育の質保証の取組みを全国に発信している本学から愛媛大にオファーをし、実現したものです。

講座の様子

 講座のタイトルにも掲げられた「アカデミック・アドバイザー」とは、学生の履修に関する支援はもちろんのこと、学修上の困難や進路に関する相談など、学生固有のニーズや状況を総合的に捉えて、学生の自律的な成長を導くスタッフのことです。多様な学修者を中心とした大学教育が求められる中、アカデミック・アドバイザーの役割の必要性は増しています。「アカデミック・アドバイザー養成講座」には、そうした業務に関わっている教職員33人が参加し、アカデミック・アドバイジングが求められる背景と意義、カリキュラムとの関係、学生支援におけるポイント、支援者の育成などのテーマについて学びました。

 並行して行われた「教務事務担当者講習会」は「初級編」と銘うち、教育・学修に直接携わる教務事務の経験3年以下の職員46人を対象としました。法令・制度・政策、合理的配慮や国際化などについて、こちらもグループディスカッション形式で学びを深めました。

 このうち、912日午後の「スチューデント・サクセスと大学職員」という講座は、2つの研修をまたぐ形で行われ、冒頭には太田寛行学長も参加者のみなさんに挨拶を述べました。

 講座ではまず、日本アカデミック・アドバイジング協会の会長も務める愛媛大学の清水栄子准教授が解説。同協会の定義では、アカデミック・アドバイジングとは、「学生自身による将来の目的・目標の決定とその達成に向けて、担当者が途中段階のアセスメントを行いながら学生個人のニーズに沿った支援をすること」。清水准教授によると制度自体は100年以上前にアメリカで生まれたものだそうです。茨城大学が掲げる「スチューデント・サクセス」は、学生自身の「こうなりたい」という想いを重視するもの。アカデミック・アドバイジングはまさにスチューデント・サクセスを促す支援であるといえます。

アカデミック・アドバイジングについて解説する愛媛大・清水准教授
アカデミック・アドバイジングについて解説する愛媛大・清水准教授

 清水准教授は、「学生からの相談を、単なる事務処理ではなく、『学習・成長の支援』として捉えること、また正課だけでなく正課外での学びも視野に入れることが大事」と強調しました。

 続いて、茨城大学学務課職員の根本剛さんが、茨城大学のスチューデント・サクセスに向けた取組みを紹介しました。本学が教育のキーワードとしてスチューデント・サクセスを新たに打ち出した背景には、継続的な調査において学生たちの多様な悩みが明らかになったことや、iOPなどの独自の教育の仕組みを、意欲ある学生だけでなくすべての学生が主体的に活用できるようにしたいという想いがありました。根本さんは、「学生に伴走する人をどう育てていくかが課題。学生のサクセスと大学全体のサクセスをつなぎ、創造していきたい」と熱を込めました。

茨城大学のスチューデント・サクセスの取組みを紹介した根本さん
茨城大学のスチューデント・サクセスの取組みを紹介した根本さん

 後半は、東京都立大学と龍谷大学でそれぞれ教務の実務を担当している職員が加わり、茨城大学の大津正知助教の進行のもと議論が交わされました。このパートでは、かつてアカデミック・アドバイザーのような役割を期待して専門職を起用したものの、教員・事務それぞれの業務慣習の中で立ち回るのが難しく、活用しきれなかったという失敗談や、学問分野の幅広さを踏まえた総合的な履修相談の対応の難しさなどが語られました。大学の教務では公平性・効率性を重視する文化が長らく続いてきました。その意味で、個の学修者本位の対応はチャレンジであり、ましてや大学の学生数の規模を保ちながら具体的にどう実現していけるかは、共通した課題のようです。

後半の議論の様子

 今後アカデミック・アドバイジングの機能を果たしていく上で重要な点として、登壇者からは、「カリキュラムは4年間は変えられなくても、学生からの意見をFDなどで広く共有し、記録に残すことで、将来は必ず反映させられる」(龍谷大学・小野勝士さん)、「アカデミック・アドバイジングとは何かについて学内で語り、『学生を育てたいよね』という想いを共有してバトンをつないでいくことが、業務に対する爽やかなモチベーションにつながる」(東京都立大学・宮林常崇さん)などの考えが挙げられました。

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