茨大&経営者協会、ゼミナール方式の人材採用力強化研究会を始動
県内12社から23名が参加、最新の動向を学び新たな取組み目指す

 茨城大学と一般社団法人茨城県経営者協会は、「“新卒者”採用力強化研究会・ゼミナール」を共同で企画しました。参加するのは、茨城県内の12の企業の採用担当者・採用戦略立案者、計23名のみなさん。茨城大学キャリアセンターで就職相談等の実務も担当する小磯重隆・教育学野准教授のレクチャーにより、最新の雇用環境の動向やターゲットを意識した説明会・インターンシップの方法について理解を深め、新たな挑戦も展望する3時間×5回のゼミナールです。第1回の模様を取材しました。

賑わう講座の様子

 9月18日午後。会場の茨城大学水戸駅南サテライトにはゼミナールの参加者が続々とやってきました。1つのテーブルに4つの席。異なる企業の人事担当者同士が顔を合わせ、各テーブルで名刺交換をする姿が見られます。

 この研究会は、茨城大学研究・産学官連携機構(iRIC)のコーディネートにより、茨城県経営者協会に加盟する県内企業と大学との共同研究の促進を図る、「共同研究創発プロジェクトJoint結(ゆい)」(2021年度始動)の一環で今回初めて企画されました。

 就職・採用のあり方は、特にコロナ禍以降、大きく変わりつつあります。学生たちは戸惑いながらも情報を集め、懸命に就職活動に取り組んでいますが、変化に適応していかなければならないのは、採用する企業の側も同様です。小磯准教授はまず、そうした労働市場・採用活動の変化についてユーモアを交えて説明します。

 たとえば、採用活動の時期の流動化。企業の新卒者採用の活動の開始時期については「紳士協定」がありますが、実質的には「プレエントリー」などの言葉とともに建前が崩れつつあります。加えて学生と企業のマッチングをコーディネートする就職エージェントのようなサービスの利用も学生、企業双方で増えています。小磯准教授曰く、「昔のやり方が通用しない」のが現状です。加えて、外国人の採用や障害者雇用など、法制度の変化を踏まえた対応も必要となっています。

ユーモアを交えたレクチャーで会場を沸かせる小磯准教授
ユーモアを交えたレクチャーで会場を沸かせる小磯准教授

 小磯准教授によると、学生たちの地元志向は年々高まっているとのこと。そうなると、茨城の企業の方が東京の企業より有利のように聞こえますが、実際はそう簡単ではありません。たとえばインターンシップや面接で事業所への来訪を求める場合、学生たちの移動手段の問題が浮上します。茨城県内の企業の場合、車でないとアクセスできない事業所も少なくなく、運転免許を持たない学生にとってはそれだけでハードルが高くなってしまうのです。「コロナ禍のときは茨城県内の企業でもオンラインの採用活動は多かったのですが、ここ最近は再び対面にシフトしています。ところが茨城の企業こそ、オンラインを積極的に使った方が良い面もあるんです」と小磯准教授は話します。

 また、勤務地も勤務内容も曖昧な形での「総合職」採用も、だんだん難しくなってきました。完全な「ジョブ型」ではないとしても、仕事の内容、企業が求めるスキルは何なのかということを、採用段階である程度示せることが重要になってきています。

 その意味でも、「どういう人材を採用するのか」「誰に向けてプレゼンテーションをするのか」という、ターゲットに合わせた細かな配慮が必要だと、小磯准教授は語ります。たとえば留学生向けの求人票。「住所に『〇〇様方』を書かせる欄があったりしますよね。留学生はこの『方』の意味が、辞書を見ても今ひとつわからない。日本人相手に当たり前に使っていた言葉や項目を、ターゲットに合わせて見直してみること。ほんの些細なことが実はとても大事なんですね」(小磯准教授)。

 後半は、茨城県経営者協会の後藤さんとのじゃんけん大会で勝った3人が、普段企業説明会などの場で実施に行っているプレゼンテーションを披露しました。動画を使って現場の様子を伝えるプレゼンテーションや、聞き手との距離を縮めるような親しみやすい説明など、まさに三者三様。小磯准教授は、「笑顔の写真がもっとあるといい」などそれぞれの発表に短いコメントを付しながら、「説明会で一緒になっても、他の企業の説明を聞いている余裕はないですよね。こうして他の企業のプレゼンテーションを聞いてみることで、自社の説明の課題にもはっと気付いたりするものです」と語りました。

他社のプレゼンテーションを聞く貴重な機会に
他社のプレゼンテーションを聞く貴重な機会に

 最後はグループごとのディスカッション。「魅せる」プレゼンテーションを作るためにはどうしたらよいか。ターゲットを大学新卒・高卒・中途採用の3つから選んで、それぞれのターゲットがどんなことを求めているか話し合い、ホワイトボードにまとめていきました。「なんだかんだ言っても給与は大切」「企業の優れたポイントを強調しすぎると、『自分にできるだろうか』と不安を与えてしまう場合もある。身の丈にフィットしていると思ってもらうことも大事」「中途採用の場合、『経験を活かせる仕事』と思いがちだが、その『経験』が嫌で転職してきている可能性もある」などさまざまな意見が出ました。

グループで話し合う様子
グループ論議の報告の様子

 共同研究会は今後も月1回のペースで来年1月まで行われます。第2回以降も、オンライン採用のポイントや、ジョブ型雇用、外国人や障害者の採用などをテーマに、最新の動向を学びながら、雇用環境の変化を踏まえて企業単位だけでなく、地域や業界で協力してできることを議論していく予定です。

 小磯准教授は、「あくまで勉強会ではなく研究会。それぞれが実験的な取組みをしてみたり、たとえばUターン就職を増やすための地域レベルの取組みを考案して『茨城モデル』を生み出せたりできれば大成功」と、今後の展開に期待を寄せました。

(取材・構成:茨城大学広報・アウトリーチ支援室)

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