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工・稻用研が手掛けた子育て支援拠点が完成!
―研究と教育が結ぶ地域との縁

 工学部都市システム工学科/応用理工学野都市システム工学領域の稻用隆一講師の研究室が、ひたちなか市のNPO法人ただいまの活動拠点「ただいまてらす」の設計などを手掛けました。稻用研の学生や卒業生たちが、823日、内壁の塗装や木レンガ貼り付けなどを仕上げて完成。翌24日には、オープニングセレモニーが行われました。

「ただいまてらす」と正安寺
「ただいまてらす」と正安寺

 NPO法人ただいまは子育て支援を行う団体です。乳幼児とその保護者の交流機会の創出やフリースクール、近隣小学校に通う小学生たちの放課後の居場所確保、フードパントリーなどの事業を行っています。NPOの代表をつとめる増田直さん・真紀子さん夫妻が住職と坊守を務める正安寺を拠点にしていましたが、利用者が増え事業も拡大したことで、約3年前、新たに建屋を建設する計画がスタートしました。

 稻用講師が当時顧問を務めた建築研究会の活動を知った増田さんが、稻用研究室に設計を依頼。「子どもたちが使う施設なので、地元の学生が良いと思う建物になったら素敵だな、と。一緒にやってほしい」。その言葉通り、基本的に設計は学生に任せました。「機能性を追求するよりも、遊び心を持って、その場を楽しめる場所にして欲しい」という思いでした。

 「学生を“無料の労働力”として捉えるのではなく、建築を学ぶ学生たちと一緒に作りたいという真剣さが伝わってきた。僕らが一緒にやらないとできないことだと思った」と稻用講師。NPOの理念にも強く共感しました。当時はまだ、研究室ができて間もない時期でしたが、「建築教育に本格的に取り組む茨城大学が、地域の大学としての本分を全うするための挑戦の機会にもなる」と受け止め、協力することにしました。

「ただいまてらす」と稻用研
「ただいまてらす」前で記念撮影する稻用研究室

 稻用講師と、当時博士前期課程1年だった佐藤天彦さんと村澤昌樹さんの3人が中心となり設計。周辺の台地状の地形の特徴を模して基礎を凸凹にすることで利用者の活動するきっかけを作ったり、部屋同士を壁で仕切らずスタッフが利用者の様子を確認しやすくしたりしました。

 今春同課程を修了し、現在は生物建築舎所員、東北大学技術補佐員として働いている佐藤さんは「設計に関われる機会はありがたかった」と振り返ります。それまでも学修の一環で模型などを作ることはありましたが、実際に建屋が立つプロジェクトへの参加は初めてで「(設計図の)1本の線の重みをより感じました」。数年経ち、当時佐藤さんが描いた完成イメージはスタッフTシャツのデザインに採用されました。

スタッフTシャツを手に笑顔の佐藤さん
スタッフTシャツを手に笑顔の佐藤さん

 建屋は木造。稻用講師は「用途が複合的かつ流動的なので、施設らしい施設とするのは違うと思った。子どもを中心とした利用者が行ったことがなくても行ったことがあると思えるような、でも新しいものを作りたいと思った時、木がいいな、と」と話します。それも、茨城県産材にこだわりました。ほぼすべてが八溝山系のスギとヒノキです。「本当は目の前に見える斜面の木々とかでやりたくて。あの木でできてるんだよ、みたいな。地域の資源と生活の拠点が直結するかたち。ただそれは難しいので、せめて県産材とすることで実現しようと」。ただ、屋根の野地板などに使用する合板を作る工場は、県内にはありません。そこで、茨城木材相互市場の協力で県産材を宮城県で加工することに。同社との縁は村澤さんが卒業論文で茨城県内の製材環境を研究していた際に生まれたもの。同社がこの施設の木工事も全て引き受けてくれ、至ることに県産材を使うことができたそうです。「普段の研究や教育活動の下地があったからこそ」(稻用講師)実現したことでした。

 今回の建築は、県の「いばらき木づかいチャレンジ事業」にも採択されていて、これを機に、研究室の学生が同事業に採択された物件について県産材をどれぐらい、どこに使っているのかなどを分析する研究を始めることに。研究と教育の好循環は今後も続きます。

 23日には、稻用研の学生や卒業生が壁の塗装や装飾のために集まりました。世代の垣根を超えて近況報告などをし合いながら、階段室の内壁を刷毛で柔らかい金色に塗り上げたり、工事の副産物である端材を2階の壁に貼り付けたりしました。和気あいあいとした雰囲気に、佐藤さんは「子育て支援拠点として作っている施設だが、稻用研交流の場でもある」と笑顔で語りました。

作業をする稻用研の学生ら

 24日のオープニングセレモニーで、稻用講師は増田さんらとともにテープカットを行いました。ひたちなか市の大谷明市長も駆け付け、施設への期待感を語りました。

テープカットする関係者

 3年の月日を経て完成した「ただいまてらす」。ただ、稻用研究室とのかかわりは終わりません。利用者のニーズや改善点などを聞きながら「今後も増改築して、活動や地域が育っていくイメージ」で、これからも寄り添っていく姿勢です。

(取材・構成:茨城大学広報・アウトリーチ支援室)

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