茨城大学と茨城県は、茨城県の人口減少に対する効果的な政策立案や、県・市町村におけるEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、根拠に基づく政策立案)の支援ツール開発に関する共同研究を開始しました。EBPMの重要性は広く認知されている一方、データサイエンス人材が全国的に不足する中、統計的な専門知識を有さずともEBPMを実践できる支援ツールの開発と活用を図ります。
茨城県では、「人口減少に対して効果的な政策立案を可能とするための転入・転出等にかかる構造分析」という取組みが、令和6年度総務省地方統計機構支援事業に採択されました。同事業は、地方におけるEBPM推進を目的に、国の統計作成の知見を前提とした地域別統計の作成などに係る技術支援などの検討・研究を支援するものです。本事業において茨城県では、地域人口に関する統計データの分析とそれらを可視化するツールを作成しました。
その後、同事業に外部有識者として関わった茨城大学の鈴木智也教授(工学部/学術研究院応用理工学野)との協議により、同ツールを改良・発展させて茨城県や市町村におけるデータ利活用を推進することを目指し、両者の間で共同研究に取り組むこととなりました。共同研究の契約期間は令和7年8月から令和8年3月末までで、茨城県内の人口減少問題に対する効果的な政策立案を目的に、地域データの分析による県内人流動向の実態把握や、EBPM支援技術の検討に取り組みます。
共同研究に先立つ今年7月、茨城県が同県及び県内市町村の職員を対象に実施したアンケートでは、回答者の4分の3以上(75.6%)が、既存の分析ツールを改良したアプリについて必要性を示しました。データ分析について「データの取得が難しい」「難しいイメージがある」といった意見が多く見られ、また、既存のツールでは実数をつかみづらい、地図の位置データと統合して可視化させたい、といったニーズも確認されました。
今後は、アンケートの結果等を踏まえ、茨城大学大学院理工学研究科の鈴木智也研究室の学生たちを中心に、データの再分析やツールを改良し、茨城県や市町村の職員が分析しやすい新たなアプリを開発するとともに、茨城県や市町村の行政の最前線での技術の普及・活用を図ります。また、茨城大学においては、同大が進めるデータサイエンス教育と自治体における実習を連動させた先進的な取組みにつなげていきたい考えです。
開発中のツールのイメージ画像
各自治体における人口増減率をKGIとし、その要因を社会増減率および自然増減率 (KPI-I)、さらに転入率・転出率・出生率・死亡率(KPI-II)に分解してKPIツリーを作ります。各自治体を特徴づける客観的データ(属性-II)を多数収集し、主成分分析によって要約(属性-I)しつつ、各属性がKGIに影響するメカニズムを重回帰分析によって可視化します。施策の効果検証には、各属性の値を仮想的に変えることでKGIの改善効果をシミュレーションすることも可能です。
※KGI:Key Goal Indicator(重要目標達成指標)、 KPI:Key Performance Indicator(重要業績評価指標)
主成分分析:多くの変数で構成されるデータを、少数の「主成分」に要約する手法)
重回帰分析:複数の要因が、結果に対してどのように影響を与えているかを分析する統計的手法)
