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食用微細藻類パラクロレラ由来の細胞外多糖の構造と機能を解明
―抗酸化・抗高血圧・抗白髪・育発毛など多様な生理活性を確認

 茨城大学 学術研究院 応用生物学野の朝山 宗彦教授、バイオックス化学工業株式会社の佐々木 大作氏、大和薬品株式会社の猪狩 直樹氏らの研究グループは、食用緑藻 パラクロレラBX1.5 が産生する細胞外多糖(bxEPS)の組成、構造、および抗酸化・抗高血圧・育発毛などの多機能性を明らかにしました。

  微細藻類は、光合成による炭素固定能や急速な増殖性を有することから、次世代型の「バイオリファイナリー資源」として注目されています。特に、BX1.5藻が分泌する細胞外多糖(EPS)は、機能性食品や化粧品原料としての応用が期待されますが、安全性評価や具体的な機能解明が進んでおらず、産業利用に向けた課題となっています。
 本研究では、BX1.5 株を窒素源欠乏培地(BG11-N)で培養し、効率よく生産されたbxEPSを抽出・精製し、単糖組成や分子構造を多角的に解析するとともに、in vitroによる機能性評価(抗酸化能、アンジオテンシン変換酵素阻害活性、チロシナーゼ活性)およびマウス経皮投与による育発毛試験を実施しました。
 得られたbxEPSは、硫酸基を持たず、主にラムノースとキシロースから構成される高分子の酸性ラムナンであることが明らかになりました。また、化粧品素材としてカチオンに対する高い安定性を示した他、抗酸化作用、抗高血圧、抗白髪作用といった複数の機能を有することを確認しました。さらに、0.2%濃度のbxEPS水溶液の経皮投与は、マウスにおいて毛包の肥大化を伴う育発毛効果を示しました。
 bxEPSは、安全性が確認された非毒性緑藻由来の新規バイオポリマーであり、飲食品、化粧品、医薬品素材などの幅広い分野における応用が期待されます。今後は、スケールアップ生産や実用化に向けた試験が進められる予定です。

 この研究成果は、国際科学誌『Carbohydrate Polymers』(Elsevier社)に採択され、2025年7月2日に暫定版掲載、8月25日付で最終版がオンライン掲載されました。

背景

 持続可能な社会の実現に向けて、植物や微細藻類など再生可能な生物資源を活用した「バイオリファイナリー技術」の開発が世界的に注目されています。特に、健康や美容分野では、安全性の高い天然素材へのニーズが年々高まっており、機能性を持つ藻類由来素材の発掘が求められています。

 微細藻類は、光合成による炭素固定能や急速な増殖性を有することから、次世代型の「バイオリファイナリー資源」として注目されています。微細藻類が分泌する細胞外多糖(Extracellular Polysaccharides; EPS)は、その構造や機能によって健康食品や医薬・化粧品への応用が期待されてきましたが、それらの知見は未だ不十分であり、そもそも藻自体の安全性に関する基礎的な研究も限られていました。 そのため、産業利用に向けた素材開発の足がかりが不足しているのが現状です。

研究手法・成果

 本研究では、増殖力と有用物質の生産性に優れ、かつ屋外大規模培養にも成功している食用緑藻パラクロレラ(Parachlorellasp. の特許株BX1.5を用いました。BX1.5株の安全性を見極めると共に、細胞外多糖(bxEPS)を抽出・精製し、その構造・機能を体系的に評価することで、産業利用に向けた基盤データを更に蓄積させることを目的とするものです。

 まず、BX1.5 株を窒素源欠乏培地(BG11-N)で、コスト安にかつ短時間でbxEPSを効率良く生産後、抽出・精製し、その構造と機能性を評価しました。その後、単糖組成や分子構造、化学的特性などを多角的に解析するとともに、in vitro による機能性評価(抗酸化能、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性、チロシナーゼ活性)及び マウス経皮投与(皮膚塗布)による育発毛試験を実施しました。

 その結果、bxEPSは、主要成分としてラムノース、キシロース、グルクロン酸を含み、硫酸基を含まない高分子の酸性ラムナン(~1.81 × 106 Da)であり、同類の緑藻ヒトエグサなどが生産するラムナン硫酸とは区別され、ユニークな組成を有することが確認されました。また、bxEPS水溶液はカチオンと反応しにくく、高粘性を維持できることから、化粧品などへの応用が期待されます。

 更にin vitro試験では、抗酸化活性、ACE阻害活性(抗高血圧効果)、チロシナーゼ活性増強(白髪予防)といった多機能な生理活性を示しました。加えて、0.2% 濃度のbxEPS水溶液をマウスに皮膚塗布した結果、毛包の肥大化とともに顕著な育発毛効果も確認されました。毛包の大きさは毛髪の太さと強度に関与することから、bxEPSは太く、早く毛髪を育てる育毛剤としての応用が期待されます。(図1

図1. パラクロレラBX1.5細胞の無毒安全性ならびに抽出された細胞外多糖 bxEPSの特徴づけと多機能性
図1. パラクロレラBX1.5細胞の無毒安全性ならびに抽出された細胞外多糖 bxEPSの特徴づけと多機能性

今後の展望

 本研究で得られたbxEPSは、食用可能な藻類由来の安全なバイオポリマーであり、その高い安定性と多機能性から、飲食品、化粧品、医薬品素材としての応用が期待されます。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けた持続可能な微細藻類のバイオリファイナリー構築にも貢献する可能性があります。

 今後は、bxEPSの生合成経路や分泌機構の解明に加えて、動物実験を超えた臨床応用に向けた安全性・有効性の詳細な検証が必要です。また、大量生産のための培養技術に加え、コスト削減のための精製プロセスの最適化も課題として挙げられます。

論文情報

  • タイトル:Composition, structural features, and multifunctional properties of extracellular polysaccharides from the non-toxic green alga Parachlorella sp.
  • 著者:Yuuya Uejima†, Reo Yamane†, Reiya Ishida, Daisaku Sasaki, Naoki Igari, Akihiro Nakamura, Munehiko Asayama* (†Contributed equally, *Correspondence)
  • 雑誌:Carbohydrate Polymers
  • 公開日:Accepted 1 July 2025, Available online 2 July 2025, Version of Record 25 August 2025
  • DOI:https://doi.org/10.1016/j.carbpol.2025.123996

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