水戸キャンパス図書館本館の建物に巣を作っていたツバメたちが巣立ちの時期を迎えたようです。フンによる汚れは気になりますが、実は茨城県内において絶滅危惧種にも指定されているコシアカツバメということがわかり、今のところ大事に見守っています。
約10年前にリニューアルした水戸キャンパスの図書館本館。連続したアーチ状の屋根が印象的なレンガ調の外観は、茨城大学のシンボル的な存在です。建物に近づくと、たくさんのツバメの巣が目に入ってきます。5月から8月にかけては、頭上のすぐ上を何羽ものツバメたちが飛び交います。もはや夏の風物詩、かわいらしいと思いつつ、ツバメたちが落とすフンによる汚れは、特に図書館で働くメンバーにとっては悩みの種でもあります。
今年の7月末。オープンキャンパスを目前に迎え、地面のフンをスタッフ一同で清掃した日の夜、生物系が専門のある先生からメールを受け取りました。
「もしかしたら、あれはコシアカツバメかもしれません」
その先生は普段は別の地域で勤務をしています。その日は健康診断で水戸キャンパスを訪れており、その際に図書館のツバメたちを目にしたようです。
先生が教えてくれた「ツバメの種類の見分け方」というサイトによると、コシアカツバメは一般のツバメよりも大きく、名前のとおり腰部分に赤茶色の模様が見られます。巣の形も特徴的で、よく見るツバメの巣がおわん型なのに対し、コシアカツバメの巣は入口が狭まった「とっくり型」だそう。
図書館で年々数を増やしている巣も、まさにとっくり型でした。そして羽を広げて飛ぶツバメたちの腰あたりには、確かに赤い色がのぞいています。
そしてこのコシアカツバメ、「茨城における絶滅のおそれのある野生生物 2016年改訂版」(茨城県版レッドデータブック)によれば、「2004(平成 16)年の環境省調査で県北の分布が 20 年前に比べ激減し,その状況が現在も継続している」ということで、絶滅の危険が増大している「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されています。
コシアカツバメは、大学のキャンパスや公共ホールのような大きな建物にたくさんの巣をつくる習性があるようです。フンを落とす厄介者ではあっても、見方を変えると、地域の生物多様性を伝えてくれる希少な存在なのです。その視点に気付かせてもらえたのも、総合大学だからこそ、かもしれません。
そこで広報・アウトリーチ支援室では、コシアカツバメの生態を紹介するポスターを急遽作成。カラーコーンにくくりつける形で、巣を見上げる複数の場所に設置しました。すると、オープンキャンパスの日も、多くの人たちがポスターの前で足を止め、巣を指さしながら言葉を交わす様子が見られました。
8月9日から19日にかけて、大学は夏季一斉休業でした。休み明け、たくさんのフンが落ちているであろうことを覚悟して出勤した職員一同でしたが、思いのほか地面はきれいでした。どうやら夏休みの間に多くが巣立っていったようです。
ちょうどそこに、鳥の生態を研究している理学部の卒業生・Aさんが通りかかりました。Aさんもコシアカツバメのことを気にかけていたようです。「今はスズメが巣を使っているようですね」と言いながら、首からぶら下げた双眼鏡に手を添えます。確かにレッドデータブックにも、スズメと競合することも減少の原因と書かれていました。もっとも、スズメもそのうち移動するので、「来年の5月頃にはまたコシアカツバメたちが戻ってくると思いますよ」と教えてくれました。
「コシアカツバメは本当に数が減っているので、ここで見られるというのはラッキーですよ。ぜひ大事に見守ってほしいです」と笑顔で語ったAさん。「サステイナビリティ学」を標ぼうする茨城大学として、コシアカツバメたちとどう付き合っていくか。彼らと同じく図書館に棲息する私たち職員としても、これからのことをしっかり考えていきたいと思います。