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スタートアップ創出へ、サイエンスアイデアソン開催!
―エネルギー・環境問題の解決へ、茨城のシーズを活用

 茨城大学は101日、水戸市民会館で、サイエンスアイデアソンを開催しました。「大学が果たすべきアントレプレナーシップ教育」や「スタートアップと創る環境エネルギーの未来」をテーマとした基調講演を通してエネルギーや環境分野における大学発スタートアップの必要性を確認するともに、シーズを持つ研究者とスタートアップ支援者、投資家をつなぐワークショップを行い、スタートアップ創出の機運醸成を図りました。

 大学での教育や研究の成果を活かした革新的で成長が見込まれる企業の創出が期待される中、茨城大学では、大学発スタートアップの創出や支援の取り組みを行っています。今年2月に、「世界を変える大学発スタートアップを育てる」プラットフォーム「Greater Tokyo Innovation EcosystemGTIE:ジータイ)」に参加し、経営者や投資家、他大学等とのコミュニケーションを重ねました。大学の有するシーズを活用したビジネスの創出と活性化にあたっては、外部の経営者人材とのマッチングが重要な鍵となるという認識を強め、今年6月には、業種の枠を超えた290社が入居するイノベーションセンターである「CIC Tokyo」内に、サテライトオフィスを開設しました。

司会の酒井先生.JPG サイエンスアイデアソンの司会を務めた
茨城大学研究・産学官連携機構(iRIC)の酒井宗寿准教授

 今回のサイエンスアイデアソンには、現地参加とオンラインで県内外の多くの研究者や支援者、投資家らが集まりました。

 開会挨拶で、茨城大学の金野満理事・副学長(学術)は、自身の専門分野である燃焼の化学反応に触れ、「研究シーズ、技術シーズをビジネス化するプロセスは燃焼反応に似ていると思います。初期段階はなるべく分子を密集させて衝突回数を増やし、必要に応じて外からエネルギーを加えてやることが大事なんです」と、研究者と投資家、支援者の連携を呼び掛けました。

開会あいさつ・金野理事.JPG

 今回のアイデアソンはエネルギー関連の研究を進める研究所や大学が集積する水戸市周辺地域や筑波研究学園都市からGTIEに参画している研究者らのシーズを活用しようと企画されました。東京科学大環境・社会理工学院教授で研究・産学連携本部副本部長の辻本将晴氏は、「『世界を変える』というと大げさに聞こえますが、少しでもより良い世界を作っていくと。そのために科学技術だけでなく、様々な知見を合わせて成果につなげていくという取り組みを進めていく必要があります」と話し、GTIEの事業について紹介しました。GTIEが実施するGTIE GAPファンド「エクスプロールコース」では、名だたる事業化推進機関が研究者とともに起業を推進しており、茨城大学工学部の田中伸厚教授のプロジェクトも採択されています。

 基調講演では、筑波大学の五十嵐浩也特命教授が「大学が果たすべきアントレプレナーシップ教育」をテーマに、学問とは何か、大学とは何かを定義しながら「自分で問を作り、解いていくという意味で研究の方法論とアントレプレナーの方法論は似ている」と語りました。また、世界的IT企業が集積しているアメリカ・カリフォルニア州のパロアルト市と、つくば市との類似点を挙げ、「茨城県はカリフォルニア州になれるでしょうか?『スタートアップのためには茨城に行かなきゃいけない』と思わせるにはどうしたら良いでしょうか?」と問いかけ、「茨城のオリジナルなアントレプレナーの方法、方法論を作っていくことを主軸に活動するのがすごく大切だと思います」と締めました。

筑波大・五十嵐先生.JPG

 また、NPO法人国際環境経済研究所の理事・主席研究員、東北大学特任教授、U3イノベーションズ合同会社の共同代表を務める竹内純子氏が「スタートアップと創る環境エネルギーの未来」についてオンラインで講演しました。国内のエネルギーは3割が電力で7割が非電力ですが、非電力部門で二酸化炭素(CO2)の排出削減を目指す上では、効率を上げても排出量はゼロにならず、非電力の機器の使用の抑制は生活の抑制につながることから、「これからは電気の時代になります」と竹内氏は指摘。「漠然と『エネルギーで何かやりたい』とお考えの時には、電気の時代をどうするか?に着目していただくと成長の余地があります」と持論を展開しました。

竹内さん.JPG

 続いて、スタートアップの参入が難しいとされるエネルギー系の事業を立ち上げた株式会社Blossom Energy代表取締役CEOの濱本真平氏と、京都フュージョニアリング株式会社Plant Technology Department Senior Engineerの井野孝氏が登壇し、それぞれの取り組みについて紹介しました。

 ワークショップでは、研究者、支援者、投資家と立場の異なる参加者が入るよう、7人ずつ8組に分かれて行いました。研究者が自分のシーズについてプレゼンした後、それぞれの立場で何ができるのかを考え、議論しました。

WSの様子.JPG

 閉会挨拶では、筑波大学国際産学連携本部審議役の西野由高教授が「アイデアを深く掘れば良いというものでも決してないですが、ちょっとしか掘らないというのも良くない。掘るためには投資が必要で、投資に見合った産出物があるかどうかということが重要になってきます。そこを見極めるというのはとても難しくて、どこを掘るかを決めていく一つの手段がアイデアソンなのだと思います」と話し、「今回のアイデアソンで、色々なメンバーが集まり、色々なチャネルができました。そのチャネルを継続して、次の一歩につなげてください」と期待を寄せました。

筑波大・西野先生.JPG

 イベント後は交流会を行い、参加者は親交を深めました。NEDOやリバネス、TCI、筑波大学、茨城大学によるスタートアップ支援の取り組みを紹介するPRタイムも設けました。

交流会・倉本副学長.JPG iRIC長の倉本繁副学長

 次回は、来年1月に「共創型サイエンスアイデアソンイベント」を開催予定です。

(取材・構成:広報・アウトリーチ支援室)