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AIによるアブラムシの齢期診断技術を開発

 茨城大学農学部の菊田 真吾准教授と同学部生の益子 優希さん(2024年3月卒業)らは、人工知能(AI)を利用してエンドウヒゲナガアブラムシの齢期を判別する、画像診断ツールを開発しました。この研究成果は4月18日、Springer Natureの日本応用動物昆虫学会誌「Applied Entomology and Zoology」にオンライン掲載されました。
>>くわしくはプレスリリース(PDF)をご覧ください

背景

 アブラムシは小さな害虫で、農作物に被害を与えることが知られており、農薬を使っても効果が薄れる薬剤抵抗性の問題があります。アブラムシの若い段階では、農薬に対する解毒酵素遺伝子が働くことが知られており、農薬の効果を素早く評価する上では、幼虫の成長段階を早く判断することが重要です。アブラムシの幼虫の段階を判断する方法にはいくつかあります。一般的なのは、脱皮を繰り返して成長することから、1頭ずつアブラムシを飼育して脱皮の回数を数える方法です。また、齢期を判別できる熟練した眼を養う方法もありますが、属人的な技術を必要とするものであり、その眼を持たない本研究チームでは、個々のアブラムシを飼育する方法を採用していました。一方でその方法は多くの時間を要することから、AIを使って幼虫の段階を判断するシステムを作ることを計画しました。論文は、この技術を多くの人と共有するために発表したものであり、すべての画像やソースコードにアクセスできるリンクも記載しています。

研究手法・成果

 画像認識の人工知能として有効であるYOLO (You Only Look Once) v8を用いて、多様なアブラムシの画像を学習させました。本研究では、モデル実証として、エンドウヒゲナガアブラムシを用いました。これまでに、YOLOを用いて害虫トラップをカウントするAIツールは多く発表されてきましたが、本研究では、害虫数のカウントではなく、齢期診断に重点をおいています。本研究では、白色、黄色、自然光の様々な光条件と撮影倍率を用いて学習させ、頑強性が高いAIの構築をめざした点が特徴です。その結果、本チームが検証した3つ(論文では2機種)の顕微鏡、及び、拡大レンズを装着したスマートフォンでも、アブラムシの齢期診断ができました。このツールでは顕微鏡の倍率や撮影時の光条件を考慮しなくても齢期診断が可能であり、現在のところ様々な撮影条件下で適用できます。さらに、撮影したエンドウヒゲナガアブラムシをアップロードするだけで、齢期の診断ができるウェブサイトも公開しました。

プレスリリース菊田教授.png

今後の展望

機械学習の分野はとても進展が速く、もっと良いツールがすぐに開発される可能性はありますが、本ツールやソースコード等が次のアイデアや開発に役立つことを期待しています。

論文情報

  • 研究論文タイトル:Image recognition-based deep learning model for identifying the developmental stages of Acyrthosiphon pisum (Hemiptera: Aphididae)
  • 著者:Masaki Masuko, Shingo Kikuta
  • 掲載雑誌:Applied Entomology and Zoology
  • DOIdoi.org/10.1007/s13355-024-00873-w

研究助成等

本研究は、茨城大学学長リーダーシップ経費による特色研究加速イニシアティブの支援を受けて実施されました。