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アルツハイマー病に関係するアミロイドβ1分子の凝集動態を観察

 茨城大学大学院理工学研究科の倉持昌弘助教を含む、日本大学生産工学部の吉宗一晃教授、京都大学大学院農学研究科の保川清教授らのグループは、認知症の大部分を占めるアルツハイマー病(AD)に関係するアミロイドβ(Aβ)の1分子の動態を回折X線ブリンキング法(Diffracted X-ray Blinking: DXB)を使って観察し、アデノシン三リン酸(ATP)によるAβ動態の上昇がその凝集過程に影響を与えることを示唆しました。この成果は脳内に蓄積すると有害なAβ凝集体の形成過程の理解だけでなく、アルツハイマー病の治療や、新しい治療薬の評価などへの貢献が期待できます。
 本研究の成果は、国際学術誌「Scientific Reports」に2024年4月7日付けでオンラインにて発表されました。
>>くわしくはプレスリリース(PDF)をご覧ください

研究内容

 多くのAD患者の脳内にはAβの凝集体が存在することが知られています。このことからAβ凝集体を脳から排出することが、ADの根本的な治療であると考えられています。日本で2023年に販売が開始されたレカネマブは脳内のAβを標的にした抗体薬で、Aβに結合する抗体を使って脳内のAβを減少させADの進行を抑制します。Aβは非常に凝集しやすく、すぐに凝集体となります。その形や大きさは様々で、Aβが規則正しく並んだ線維状凝集体や、不規則に集まった非晶質凝集体があり、それらの生体への毒性も様々です。この様に凝集体は経時的に変化するため、その観察は非常に難しく、Aβ凝集体の理解を阻んでいます。
 今回、研究グループは、Aβの溶解性を高めるハイドロトロープであるATP存在下でAβが線維化しにくくなることを示し(図1)、ATP存在下におけるAβの1分子の動態をDXBで観察することで、線維化しない原因がAβ動態の上昇であることを示唆しました。この結果は、Aβ凝集体の毒性を低減させる方法の開発に寄与できるものであり、さらに、Aβ凝集体の形状に影響を与える物質の評価にDXBが有効であることが示されました。
 本研究成果はScientific Reportsのオンライン版で公開されています。
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掲載誌情報

  • 論文名:Adenosine triphosphate induces amorphous aggregation of amyloid β by increasing Aβ dynamics
  • 雑誌名:Scientific Reports
  • DOI:10.1038/s41598-024-58773-6