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【著作・制作物紹介】人社・青山和夫教授監修「カラー版 マヤと古代メキシコ文明のすべて」

カラー版 マヤと古代メキシコ文明のすべて


aoyama.png青山 和夫(人文社会科学部 教授)監修

出版社:宝島社新書
出版日:2023年6月
ISBN:978-4-299-04388-7
価格:本体1,200円+税

監修者コメント

 本書では、マヤ文明、アステカ文明を中心に、オルメカ文明、サポテカ文明、テオティワカン文明、トルテカ文明などのメソアメリカ文明について解説します。メソとは「中央、中間」を指す言葉であり、アメリカ大陸中央の文明だからメソアメリカ文明です。私が参加する国際調査団が2020年にイギリスの『ネイチャー』誌に成果を発表した、メキシコのアグアダ・フェニックス遺跡の最新の調査成果についても紹介します。アグアダ・フェニックス遺跡では、マヤ文明最古(前1100年頃)かつ最大(長さ1.4㎞)の公共祭祀建築がライダー(航空レーザー測量)、発掘調査と放射性炭素年代測定によって発見されました。

 世の中にはマヤやアステカの名前を聞いたことがある人は多いが、その実像はまだあまり知られていません。アメリカ大陸の多様性に富んだ諸文明は一括して語られ、「インカ・マヤ・アステカ」、「インカ・マヤ」という風に同一視あるいは混同される場合が多いのが問題です。マヤ文明(前1100年頃~16世紀)は、先スペイン期(16世紀以前)のアメリカ大陸で文字(4万~5万)、算術、暦、天文学を最も発達させました。それは、スペイン人が侵略する直前に発展したアステカ王国(後1428~1521年)や南米のインカ帝国(15世紀~1532年)よりも2500年ほど前に興りました。マヤ文字の発達は、インカやナスカに代表されるアンデスの無文字文明と対照的です。

 メソアメリカ文明のデータは、技術や自然環境をはじめとして西欧中心史観やユーラシア大陸中心史観を相対化します。たとえば「文明は乾燥した大河の流域で生まれた」という考えは、高地と低地の極めて多様な自然環境(熱帯雨林、熱帯サバンナ、ステップ、針葉樹林など)で発達したメソアメリカには当てはまりません。メソポタミア文明やエジプト文明とは異なり、メソアメリカ文明は、大河流域で大規模な灌漑治水事業を発達させませんでした。メソアメリカは、主に中小河川、湖沼、湧水などを利用した灌漑農業、段々畑、家庭菜園などの集約農業と焼畑農業を組み合わせて多様な農業を展開した非大河灌漑文明でした。

 メソアメリカでは、石器を主要利器とする新石器段階の技術と人力エネルギーによって巨大な石造神殿ピラミッドが林立する都市が築かれました。それは、世界の他の文明と同様に農耕を生業の基盤としながらも、ユーラシア大陸の諸文明とは異なり、鉄器、荷車、人や重い物を運ぶ大型の家畜を結果的に必要としませんでした。メソアメリカ文明を正しく理解することは、メソアメリカ独特の文明の特徴を知るだけでなく、人類の文明の普遍性と多様性を理解する上でも極めて重要です。

監修者プロフィール

青山 和夫(人文社会科学部 教授)

専門はマヤ文明学、メソアメリカ考古学、文化人類学。
1962年京都市生まれ。東北大学文学部史学科考古学専攻卒業。ピッツバーグ大学人類学部大学院博士課程修了。人類学博士(Ph.D)。
日本を代表するマヤ文明学の推進者。古代アメリカ学会会長。
1986年より、ホンジュラスのラ・エントラーダ地域、コパン遺跡、グアテマラのアグアテカ遺跡、セイバル遺跡、メキシコのアグアダ・フェニックス遺跡や周辺遺跡などでマヤ文明の調査に従事している。
近著に『マヤ文明の戦争』(京都大学学術出版会)。