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(株)エンドファイトを茨城大学発ベンチャーに認定
―農・成澤才彦教授らが起業 植物内生菌の技術で課題解決図る

 農学部の成澤才彦教授らが今年(2023年)4月に起業した株式会社エンドファイトに、「茨城大学発ベンチャー」の称号が付与されました。714日、阿見キャンパスにおいて称号授与式が行われ、成澤教授と共同創業者の風岡俊希氏が、太田寛行学長より称号記を手渡されました。茨城大学発ベンチャー称号を付与された企業はこれで9社目となります。


集合写真 左から風岡氏、成澤教授、太田学長、金野満副学長、宮口右二農学部長

 株式会社エンドファイトは、ビジョンとして「全人類に食の幸福を生み出す企業」となることを掲げ、植物の生育を支えるエンドファイト(植物内生菌)を活用した苗の販売を起点として、食糧危機解決、土地の再生、農業におけるカーボンニュートラルなどの実現につながる事業を多角的に展開するとしています。
 エンドファイトは、宿主植物の組織(葉、茎、根)に明らかな病徴を示さずに定着した菌類で、ヒトの腸内細菌と同じように植物の生育を支える働きを有します。
 成澤教授は、根部エンドファイト(DSEDark-septate endophytic fungi)を混ぜた土で作物を育て、これまでイチゴやトマト、テンサイなどのDSE接種苗を製造し、栽培試験を行ってきました。その結果、DSE接種苗には生育の促進や病害への耐性、さらには、花芽形成の促進といった効果が確認されています。

成澤教授とDSEを接種したイチゴ成澤教授とDSEを接種したイチゴ

 成澤教授は、この技術を農業における収量増加やエネルギーコスト・肥料コストの削減につなげるべく、産業化などの社会実装の機会を図り、茨城大学の研究・産学官連携機構(iRIC)とも相談を進めてきました。
 そうした中、大学発スタートアップの支援や投資事業の経験をもつ風岡俊希氏が成澤教授の研究とビジョンに強い関心を示し、2023413日、風岡氏と成澤教授が共同創業者となって株式会社エンドファイトが設立されました。同社では風岡氏が代表取締役CEO、成澤教授が取締役CTOを務めます。まずは苗販売や再生農業の支援から事業を始め、今後は海外展開やDSEを活用した農法に関するライセンス事業などの展開も見通しています。

株式会社エンドファイト共同創業者の風岡氏 株式会社エンドファイト共同創業者の風岡氏

 この日は茨城大学発ベンチャー称号の授与式に続いて、報道機関向けの事業説明会も行われました。
 説明会では農学部附属国際フィールド農学センターの実験圃場で、DSE接種苗から栽培したテンサイの様子を見学。砂糖に加工されるテンサイは、冷涼な北海道地域での栽培に適しており、関東地方では育ちづらい作物です。実験圃場では、DSEを接種していない苗を植えたコントロール区画(下の写真の黄色い部分)と、2種類のDSE接種苗を植えた区画(下の写真の青や赤の部分)とで、葉の発育状態が明らかに異なっていることが見てとれます。

endo-phyte04

 コントロール区画では、早い時期に枯れてしまって育たなくなった苗も多く見られました。この成果は、今後温暖化が進行した場合でも、DSEを活用することで持続的にテンサイを栽培できるという可能性を示唆するもので、気候変動適応への貢献が期待されます。

 今回の起業について成澤教授は、「これまでもさまざまな企業と共同研究をしてきたのですが、どうしても今の市場で売れる作物をつくるという段階に留まってしまい、その先の食糧危機や気候変動の問題などにアプローチできていませんでした。それをやるには、自分で起業するしかないと考えていたところに、風岡さんとビジョンが一致し、前へ進めることができました」と言います。また、「学生に対しても、こういう仕事の作り方やキャリアもあるのだと、新しいモデルを示したかったんです。その意味で教育の効果も高いと思っています」とも語っていました。

株式会社エンドファイト

  • 代表取締役:風岡 俊希
  • 設立年月日:2023年4月13日
  • 本社:東京都港区虎ノ門1-17-1虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階
    ラボ:茨城県稲敷郡阿見町中央3-21-1 茨城大学農学部
  • 資本金:1,000,000円
  • 事業内容:エンドファイト培土の開発・販売/エンドファイト苗の開発・販売/エンドファイト農法の導入支援/自社圃場による農業

(取材・構成:茨城大学広報室)