茨大発「教育の質保証」がテーマの本、4/28に発売
―『現場が動きだす大学教育のマネジメントとは』
茨城大学の教育マネジメントの特色をまとめた一般向けの書籍『現場が動きだす大学教育のマネジメントとは 茨城大学「教育の質保証」システム構築の物語』が、4月28日、技術評論社から発売されます。編者は太田寛行学長、嶌田敏行全学教育機構教授、著者は「茨城大学コミットメント」プロジェクト。
大学の教育活動も企業・自治体のニーズも多様化・複雑化している中にあって、高等教育の「質保証」の取り組みがこれまで以上に注目されています。
茨城大学では、①教員個人、②学科・コース等、③学部、④全学 という4つの階層による独自の教育質保証のシステムを2017年度から構築しました。ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)に基づいた学生・卒業生の学修達成度評価では、卒業時の達成度の割合が年々向上するなど、顕著な結果が見られ、取り組みのきっかけのひとつとなった文部科学省の補助事業「大学教育再生加速プログラム」の最終的な事業評価では最高位の「S」ランクの評価を獲得しました。
本書は、そのような茨城大学独自の教育の質保証やそのためのマネジメントの特色について、前半(第1章)は関係者へのインタビューなどをもとにしたノンフィクションの物語、後半(第2章)は高等教育の現場で取り組むための10のポイントをまとめた「実践編」という形でそれぞれ紹介するものです。
第1章では、高等教育において「質保証」が求められるようになった背景について、大学評価のシステムや国立大学法人化、大学ごとのポリシー策定の要請、大学IR(Institutional Research)の広がりといった歴史的な経緯も紹介しており、高等教育関係者以外でも、日本の高等教育政策や昨今の大学教育の変化について概要を知ることができます。あわせて、かつて「何もしない大学」というレッテルまで貼られていた茨城大学が、国や社会の動きに懸命に対応するようにしながら、独自の教育マネジメントの仕組みを構築するまでの試行錯誤のエピソードは、読み応えも充分です。
第2章では、教育現場での「困りごと」を問うことから始めて、組織的・継続的なマネジメントを実現する、その具体的な方法や考え方について、茨城大学での経験をもとに、体系だったノウハウとして紹介しています。
近年では高等学校でもスクールポリシーの策定が求められるなど、大学において取り組まれてきた教育マネジメントについての経験と知見は、幅広い領域において活かされるものと考えています。
- 学生の自己評価こそが質保証のカギ
- 教育の悩みから始まる授業評価
- 学修データを教員の査定に使うな
- ディプロマ・ポリシーは役に立つ
- データは弱く活用すべし
編者を務めた太田寛行学長のコメント
昨今、教育が「未来への投資」「イノベーション」など勇ましい言葉で語られがちですが、私たちにできるのは、日常の教育、研究をきちんとやること、それに尽きると考えています。だからこそ、教育のマネジメントは、日常として行われるのでなければ意味がないし、新たなアイデアや取り組みも、そのきちんとした日常を土台にしてもたらされるのだと思います。
本書では、そのような日常の教育マネジメントの大切さと、そのことへの本学としての気付きの系譜をまとめました。この本が、日常の取り組みに真摯に向き合っている日本中、世界中の教育機関のみなさん、あるいはそれ以外のさまざまな現場の方を少しでも勇気づけ、それぞれの自由な活動を後押しするものになれば幸いです。
『現場が動きだす大学教育のマネジメントとは 茨城大学「教育の質保証」システム構築の物語』
編者:太田寛行(茨城大学学長)・嶌田敏行(茨城大学全学教育機構教授)
著者:「茨城大学コミットメント」プロジェクト
出版社:技術評論社
発売日:2023年4月28日
体裁:A5判、264ページ ISBN 978-4-297-13509-6
〈目次〉
第1章 茨城大学「教育の質保証」システム構築の物語
- 大学の教育は誰のもの?―大学評価の歴史と茨城大学型マネジメントの萌芽
- 全学の教育目標をつくる―「何もしない大学」を変えたディプロマ・ポリシー
- 「教育の質保証」とは何か―学修データと大学運営
- 質保証の現場と物語の力―データの「弱い活用」とコミュニケーション
- 教育の成果はどう現れたか、そして未来へ―実現した「チーム茨大」が目指すもの
第2章 【実践編】内部質保証システムはこうつくる―組織的・継続的な教育マネジメントへの提言―