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大竹昌士さん、幡谷史朗さんが附属学校園PTA活動で文科大臣表彰を受賞
―これからの「附属」の在り方について久留主理事・木村学長特別補佐と座談

 「国立大学附属学校PTAに係るPTA活動振興功労者の文部科学大臣表彰」の表彰式が2022930日に行われ、今年度は大竹昌士さん、幡谷史朗さんのお二人が授賞されました。大竹さんは現在全国国立大学附属学校PTA連合会の会長も務めています。
 茨城大学では「イバダイ・ビジョン2030」でも附属学校園と連携した連続性のある学びを展開することを宣言し、教育学部に留まらない全学的な視点からの附属学校園改革に取り組んでいます。
 茨城大学教育学部附属学校園の活動に長年携わり、全国の国立大学や附属学校園の動向にも目を配っている大竹さん、幡谷さんは、附属学校園の現状や未来をどう考えているのでしょうか。また、大学と附属学校園の連携をどう強めていけるでしょうか。今回は初めての取り組みとして久留主泰朗理事・副学長(総括理事・教育)、木村美智子学長特別補佐(附属学校園統括・ダイバーシティ推進)との4人の座談会を催し、語り合いました。

LUNA6821_sq.jpg大竹昌士(おおたけ・まさし)
2人のお子さんが附属学校園に通う。PTAに携わって14年。2016年度に附属幼稚園、2020年度に附属中のPTA会長を歴任。2021年度より全国国立大学附属学校PTA連合会(全附P連)会長。株式会社フジクリーン茨城代表取締役社長。

LUNA6762_sq.jpg幡谷史朗(はたや・ふみあき)
3人のお子さんが附属学校園に通い、PTAに携わって16年。2004年度に附属幼稚園、2013・2014年度に附属小、2017年度に附属中のPTA会長を歴任。茨城トヨタ自動車株式会社代表取締役社長。

LUNA6717_sq.jpg久留主泰朗(くるす・やすろう)●理事・副学長(総括理事・教育)
企業勤務を経て1995年に茨城大学農学部の教員として着任。専門は応用微生物学。農学部長・農学研究科長などを経て2020年より現職。附属学校園改革の学内ワーキンググループで座長を務める。

LUNA6727_sq.jpg木村美智子(きむら・みちこ)●教育学部教授、学長特別補佐(附属学校園統括・ダイバーシティ推進)
2009年に茨城大学着任。専門は被服学、人間環境学。2014年から3年間、教育学部附属中学校長を務めた。その後図書館長などを経て、2020年より学長特別補佐。現在はダイバーシティ推進室長とともに附属学校園の統括を担当している。

―文部科学大臣表彰のご受賞おめでとうございます。本学の附属学校園での取り組みもさることながら、全国組織での貢献も含めた授賞かと思います。まずは大竹さんより、全国国立大学附属学校PTA連合会の活動について教えていただけますか?

大竹「全国の附属学校教員組織である全国国立大学附属学校連盟と、PTAの組織であるPTA連合会(P連)とがあり、その2つをあわせて「全附連」と総称されています。
 P連では、いじめ防止や障害のある方への理解促進などをテーマとした講演や研修を企画して全国の附属学校で実施したり、文部科学省の教員養成企画室からの相談を受ける形で、子どもたちが先生への感謝の気持ちを表現する作文・絵作文コンクールを企画したりしています。
 また、附属学校の改革に関する勉強会を各地区で開催しています。ここでは大学の附属学校担当の先生や校長、副校長の先生からそれぞれの学校園や大学での改革の取り組みなどを発表いただき、P連のメンバーや文部科学省の方と意見交換をしています。また、そうしたところで確認された課題や具体的な取り組みを広報紙などで発信しています。
 全附連としては、こうした活動を通じて全国の保護者や学校、大学の懸け橋になることを目指しているところです」

幡谷「全附連の事務所は文部科学省の目の前にあるので、普段からいろいろな情報交換をしているようです。われわれも大竹さんを通じて国の政策の流れや課題を理解できるようになりました。特に国立大学の附属学校園については、地域との連携がどのように進んでいるのかが改めて強く問われているのだと感じます。とはいえ、先生方は大変多忙で、地域とのつながりといっても、いつどうやって関わればいいのか......われわれが地元のPTAとして各学校園と地域の皆様とをつなぐ役割を果たせないか、常に考えています。」

久留主「まさに地域との連携が重要ですね。今年から国立大学は第4期中期目標期間に入り、そこで最も重視されているのが、地域のステーホルダーといかに密着してやっていくかということなんです。この点でぜひ具体的な施策を進めていきたいと思っています」

左から大竹さん、幡谷さん

―大竹さんは全附P連の会長として、文部科学省や国会議員の方などとも意見交換をされていますね。そうした活動を通じて、全国の附属学校園に共通する課題をどのように捉えていますか?

大竹「全国で共通しているのは財政的な問題です。国立大学の運営費交付金についても、競争的資金の割合が増えているということですよね。今後、附属学校園の施設整備に予算措置が行われることがあったとしても、恐らく全国一律ではなく、申請が認められたら、という形になると思います。そうなったときにきちんと手を挙げられるような準備が大事なのではないでしょうか。
 もうひとつ、特に他大学での課題として聞くのが定員割れの問題です。良い教育をされていても、定員割れをしていると、地域にとって必要とされていないのでは、という見方をされてしまいがちです。存続のためには地域の方々の声というのが非常に重要になってくると感じています。地域が最大の力なんですね。そのためには、附属学校園でやっている取り組みがいかに地域に発信されるか、いかに知ってもらうか、あるいはそれが自分たちの幼稚園や学校にも還元されているんだという実感をもっていただく、それが大切だと思います。」

木村「附属学校園の存在意義をどう地域に知ってもらうか、附属学校園のブランドとは何なのか。それが改めて問われているのだと思います。
 とはいえ、目に見えやすいブランドというのは難しく、附属の伝統はむしろ目に見えない形で子どもたちの育ちに反映されています。それをもっと見えるようにしたいというときに、大学をどう活用するか、という視点が重要になります。教育学部だけでない、多様な施設や大学教員の存在を活用していく。そのためにも連携を強めていきたいと思っています」

木村教授

―地域の理解を得ていくことが重要ということですが、地域の企業のトップも務めている幡谷さんから見て、地域は附属学校園をどのように捉えていると思われますか?

幡谷「東日本大震災のときに附属小学校へ地域の方が避難されてきたのですが、附属小は水戸市の避難所に指定されておらず、大人向けの備蓄品もなくて、子どもたちもいたので、地域の方にどのように接したらいいのかわからず、お役立ちできなかったという話を聞きました。附属小学校の場合は水戸城址にあって、「地域住民」との普段の交流といっても難しいところはあるのですが、それでも有事の際はしっかり門戸を開くということが大事になると思います。
 中学校については周辺にたくさんの方が住んでいらっしゃいますが、まだまだこちらからどんどん声をかけていかなければならない段階ですね。
 一方で、われわれPTAも地域の代表として、それぞれのコミュニティに戻って附属学校園のことを発信することもできます。附属という名前を聞くと特殊なところというイメージを持たれがちなので、開かれた学校というものに向けてみんなで知恵を絞らなきゃ、と思い続けています」

―具体的にはどのようなことができるでしょうか。

大竹「附属学校園は通学圏が広範囲で地域との関係が希薄だと言われますが、やはり周辺地域とのつながりはあった方が良いと思うんですよね。たとえば周囲の町内会。そこに住んでいる保護者は限られていると思うのですが、ここに学校がある以上、町内会との連携の取り組みは大事だと思っているので、そのパイプ役をPTAが担えるといいなと思っています」

幡谷「附属中のPTAに「青雲の志応援団」という特別委員会があるのですが、その活動として校内でお芋を作ろうとなったときに、焼き芋パーティーをしてご近所に配ったらどうかという話が出て、そこからお芋畑をつくるのに地域の方にレクチャーをいただいたりもしました。結局パーティー自体は実現できなかったのですが、そういう活動が地域の毎年の恒例行事みたいに習慣化してくといいですよね」

幡谷氏

―さきほどの避難所の問題もそうですが、地域との連携ということを考えたとき、附属学校園は市町村の教育委員会とは別系統にあるという点に難しさがありますね。

木村「特別支援学校や幼稚園も含めて、校長会で各市町村の状況を把握し、情報収集することはできます。一方、教育委員会をもたないため、セキュリティの問題や災害など大きなリスクが発生したときの対応は今後もっと考えていかなければなりません。さきほど教育学部以外も含めた大学の施設や教員の活用という話をしましたが、あわせて、教員を目指す学生、子どもや学校との関わりを求めている学生が、附属学校園とつながって子どもたちをサポートするような体制もつくっていきたいです」

久留主「高等学校でも「総合的な探究の時間」が始まり、初等中等教育で大学のリソースを活用してもらうことを組織的に進めていきたいと本気で考えているところです。学生という話もありましたが、教員志望でなくても、各分野の研究に携わっている大学院生などが関われるのではないかと思っています。もちろん関わった学生にも対価が必要でしょうから、そうしたことも含めてシステムづくりを進めます」

ディスカッション

―そうした連携の活動が増えていく上では、やはり附属学校園の先生たちの負担軽減、働き方の改革が前提となってくると思います。それはいかがですか?

久留主「附属学校園の教員人事については、これまで教育委員会との人事交流がメインでしたが、それ以外に本学を卒業した学生を生え抜きで採用する視点も重要だという議論をしています。生え抜きの人材を増やしていくことで、附属学校園をより深く理解した先生を育てていく。そういうことが長い目で必要だと思っています。 
 その点でも安定的な予算の確保は重要です。冒頭で大竹さんから、競争的資金の応募に備えておくという話がありましたが、私たちも同じように考えています。今、大学と附属学校園が連携して教育開発に取り組むカリキュラム開発センターという拠点をつくろうと考えており、それも構想や提案の場となるはずです。あわせて、幼・小・中一貫という視点でカリキュラムを運営し、ポリシーを発信していく上で、統括校長という新たなポストをつくるという計画があります。そうした改革によって安定した教育体制を構築することを大学として真剣に考えているところです」

大竹「大学との関わりでいえば、附属学校園の子どもたちが大学の授業を受けたり、大学でディスカッションできたりという機会があれば、教員を目指す大学生はもちろんですが、子どもたちにとっても刺激になると思うんです。附属学校園の子どもたちがキャンパス内を歩く姿をぜひ見たいです」

久留主「それはぜひやりましょう!」

大竹「そして、そうした関わりを公立学校へも広げていけば、さらに大学の価値も高まると思っています。附属学校園との取り組みがそのきっかけになればと思います」

大竹さん

―地域との連携や納税者の理解が安定した財政基盤にもつながる。この点で、PTAの方々も大学運営の立場も目指す方向は一致していると思います。改めて幡谷さん、大竹さんから大学へのご要望、ご期待をお聞かせください。

幡谷「長年附属学校園の先生方にお世話になってきました。附属にいた先生方が、その体験を地元の学校や職場で活かされていると思うのですが、それについて直接聞く機会がありません。他の学校に勤務した上で気付いた附属の良さや、反対の不自由さについてフィードバックされる場があれば、附属の価値がより輝きを増すのではないでしょうか」

木村「教員OB会は開催しているのですが、なるほど、PTAの方との交流の場はないですね。そうした場も作っていけるといいですね」

幡谷「それから附属小学校には『はらから』(同胞の意味)と呼んでいる異年齢活動があります。これは良い仕組みで人間形成として価値があると感じています。伝統として残してほしいですし、そういうものが茨城大学のシンボリックな、目指す姿になってほしいと思っています」

大竹「コロナ禍でこの3年間は小学校の宿泊学習ができておらず、上級生が下級生の面倒を見る『はらから』の活動についても空白ができつつあります。これについてはケアを考えていかなければなりませんね。
 私からの要望としては、今後の競争的資金もそうですが、教育課程特例校、授業時間数特例校の指定を附属学校園が受けられるよう、ぜひ申請に手を挙げていただきたいです。これに指定されていないと学習指導要領以外の取り組みがなかなかできず、公立学校とは異なる特色ある活動ができなくなってしまいます。
 それから、附属中学校の改修の際は、同窓生を中心として2000万円もの寄附が集まりました。教育後援会という組織がありますが、これは保護者でなくても入れますので、同窓生の方にも積極的に入っていただくなどして、大学として貪欲に寄附を求め、活動していって良いのではないでしょうか。
 最後に、附属4学校園のPTAの情報交換会をやっているのですが、そのときはぜひ久留主理事にもお越しいただいて、附属学校園をどう良くしていくか、それを通じてどう大学の価値を高めていくのか、ぜひお話しいただきたいです」

久留主「それはぜひ、こちらこそよろしくお願いいたします。私たち大学の経営陣としても、附属学校園PTAの皆様の声、要請というのは大変重要です。これからも日常的に情報交換をさせていただければと思います」

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木村「特に先生方が働きやすい環境づくりについては、形に見えるところまでは時間がかかってしまいますが、それでもひとつひとつ積み重ねていきたいと思っています。どうぞこれからもよろしくお願いいたします」

(この座談会は、20221124日、附属中学校カンファレンスルームで行われました。)