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日立キャンパスゆかりのメンバーが語る茨大工学部
―「日立市100人カイギin日立キャンパス」レポート

 71日、「日立市100人カイギ@茨城大学日立キャンパス&オンライン」が本学日立キャンパス&オンライン(Zoom)で開催されました。当日は工学部の乾学部長など日立キャンパスゆかりのメンバーが10分間のスピーチを展開。その後参加者間で交流を深めました。それぞれどんなことを語ったのでしょう。

日立市100人カイギとは?

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 「100人カイギ」は、街で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティです。その趣旨に賛同する「キュレーター」がそれぞれの地域で「100人カイギ」を立ち上げており、「日立市100人カイギ」は、つくば市、桜川市に次ぐ茨城県内3番目の「100人カイギ」として昨年(2021年)夏に発足しました。 発足メンバーは茨城大学日立キャンパスに通う大学生・大学院生のチームで、その後、茨城キリスト教大学や文化デザイナー学院の学生なども加わり、現在は8人で運営しています。
【参考記事】大学生たちが立ち上げた「日立市100人カイギ」―日立に住む人の輪の中から見えたこと

 「日立市100人カイギ@茨城大学日立キャンパス&オンライン」は、そのスピンオフイベントとして、初めて大学のキャンパスを会場に開催。ゲストは日立キャンパスゆかりの人物にこだわり、茨城大学工学部の乾 正知 学部長、同・理工学研究科(工学野)の柴田 傑 助教、同・工学部機械システム工学科2年生の嘉目 達之介さん、そして日立キャンパス内の食堂である茨城大学生活協同組合 日立食堂部で長年働く関 恵さんの4人が登壇しました。それぞれのスピーチの概要をご紹介します。

工学部 乾 正知 学部長--人口減少の地域で工学部ができることとは

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 地元、日立の出身です。私が生まれた1960年代の日立は、大きな工場がたくさんあり、常陸多賀の駅前の活気も今とは全然違ったものでした。今は近代的な大きな開発の時代が終わり、産業の空洞化が起き、人口が大きく減っています。そういう中で、大学は街を変えることができるでしょうか。
 1980年代、アメリカの鉄鋼業が衰退したとき、ピッツバーグの街はカーネギーメロン大学とパートナーシップを結び、地域再生戦略を発表しました。今では、先端製造、エネルギー、ヘルスケア・ライフサイエンス、IT・ロボティクスなどの産業が育っています。
 茨城大学工学部も、がんばればもっとできるかも知れません。まずは、小中学校や高校のSTEM教育のサポートなどできることから始めて、先端製造、エネルギー、ライフサポート、量子線科学、ITなど得意分野の実用化を図り、この地域の中核的な教育と研究を担っていきたいという夢を描いています。
 茨城大学工学部の前身である多賀工業高等学校の創立に大きく関わった、日立製作所の創業者・小平浪平氏は、日立という地にこだわった方でした。そして、国産技術を確立するということにもこだわりました。「痩せても枯れても自分が使うものは自分で作る。作れないのではなく、作らないだけだ」という信念をもっていたのです。こうした姿勢は、私たちの大学にも当てはめられるかも知れない。学部長という立場になったので、いろいろとチャレンジしたいと思っています。

理工学研究科(工学野) 柴田 傑 助教--地域の民俗芸能の伝承を技術で支援

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 コロナが広がる前の20199月に茨城大学の教員になりました。VRを活用した民族芸能の伝承支援技術の開発を専門しています。
 民俗芸能というのは、地域住民が主体の盆踊りや夏祭りのお囃子のような郷土芸能で、特定の家元とかがいるわけではなく、生活様式に合わせて変化し続けています。情報の視点でいえば、民俗芸能はアドホックなもので、伝統芸能はサーバー、クライアント型。民俗芸能は生きた芸能で、その人の生き方や地域性がストレートに出てくるものといえますが、それらの伝承は、震災やコロナによってますます危ぶまれています。歌舞伎のような伝統芸能と違って、素人がやっているから、研究の担い手もなかなか出てこない。
 日立の場合、たとえば日立風流物という、巨大な山車の上で人形劇をする民俗芸能がありますが、その研究や伝承支援を東京やアメリカの大学に任せることはできない。大学はいろんな観点で評価を受けますが、そうしたこととは別に、地方国立大学の研究者が誇りをもって挑戦すべきものだと思います。
 具体的には、うまい人の動きをモーションキャプチャを使ってPCで再現したり、VRを使って真似ることができるようなシステムを作っています。日立風流物では、博物館の協力により、カシラと言われる人形の頭の部分の3Dスキャンをして、誰でも閲覧できるようなシステムを作れないかとも考えているところです。また、ひたちなかの和太鼓サークルとは、太鼓の動きをCGで表現して、いろんなエフェクトを加えて伝える技術の開発に挑戦しています。
 今後も地域の民俗芸能の伝承に貢献していきたいです。

工学部機械システム工学科2年生 嘉目 達之介 さん―入学後の出会いで自分が変わった

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 つくば市出身で、日立市100人カイギの運営メンバーでもあります。その他には、茨大東北ボランティア「*Fleur*」の副代表や、子どもたちの遊び場づくりをする「まちのこ団」という地域活動に参加しています。
 2年生から日立キャンパスに来たのですが、その半年前から日立市で一人暮らしを始めて、ボランティアを探しているうちに「まちのこ団」に出会ったのが、地域活動を始めたきっかけです。「フルール」でも水戸や福島で地域の防災啓発活動などに関わっています。
 それから自分にとって大きな出会いとなったのが、アントレプレナーシップ教育プログラムです。この授業では外部講師として企業家や経営者などが話してくださるのですが、そこでいろんな人に出会ったのがすごくいい刺激になって、いろんなイベントにも登壇したりするようになりました。まさに人生を変えてもらった、新たな道を開いてくれたプログラムです。中高時代は部活しかしていなかったのですが、いろんな挑戦ができて新たな楽しさを味わえています。
 日立市は大学生が楽しめるものがあまりない。山、海、日立駅、あと、電気、ガス、水道、みたいな(笑)大学生もやることがあまりないから、地域に参加していくという環境がもっとできていくといいなという想いがあります。それもあって、日立キャンパス周辺でゴミ拾いのイベントを企画しています。目的は参加者の交流。学生でも近所の方でも、いろんな方が参加してくれたら嬉しいです。
 今後はビジネスプランコンテストへの参加も考えています。

茨城大学生活協同組合 日立食堂部 関 恵 さん―顔を見れば学生の体調までわかる

DSC_1112.JPG みなさん、いつも生協をご利用いただきありがとうございます。生協食堂部でレジを担当している関恵です。いわゆる食堂のおばちゃんではなく、お姉ちゃんの「めぐちゃん」です。私は食堂に勤務して今年の冬で15年です。
 この仕事はとても楽しく、いつも学生から元気をもらっています。天性の職業だと思っています。学生たちが楽しく会話しているのを見ると、ついその中に入ってしまいます。働くうちに、顔を見れば学生の体調までわかるようになりました。
 やっていて良かったと思うのは、「今日のテストはばっちり」とか「内定決まったよ」という報告があることです。卒業間近な学生からは、「いろいろお世話になりました」「ありがとうございました」と言われることもありました。そういうときは涙が出るほど嬉しいですし、卒業生も食堂に来てくれて自分の近況報告をしてくれることもあります。
 私が大事にしているのは、「お客様を待たせない」「あいさつをしっかりする」「感謝の心を持つ」の3つです。スマイルはゼロ円ですが、本当はもっと高いです(笑)
 最近はタブレットで交流できてしまって、若者は会話不足、内向的といわれるのは残念です。私は、今も昔も若者の本質は変わらず、いいところがたくさんあると思っています。
 生協は学生のみなさんに寄り添う存在でありたいと思います。こんなメニューを食べたいとか、ぜひ言ってください。期待にこたえられるようにがんばります。

イベントを終えて―地域や大学への想いを語り、交流する時間の大切さ

 運営メンバーの学生たちがこだわって選んだ4人のゲスト。大学主催のイベントに比べて、終始リラックスした雰囲気の中で、ユーモアを交えながらそれぞれの言葉で語るスピーチがとても印象的でした。乾学部長、柴田助教の話は、茨城大学工学部として日立という地域に関わっていく強い決意、使命感が溢れていました。また、嘉目さんの話は、大学でのさまざまな出会いが刺激となり、楽しみながら新たなことにチャレンジし続けているというもので、現在進行中の取り組みを含めて、心強さと期待感を感じさせてくれます。
 そして、「学生の顔を見れば体調がわかる」といい、コロナ禍の中でも積極的に学生たちに声をかけてくれていた「めぐちゃん」こと生協食堂の関さんのスピーチからは、学生や教職員の日々の生活を支えてくださっている多様な方々の存在のありがたさを改めて実感させられました。本当にありがとうございます!
 日立キャンパスで多くの時間を過ごす人たちが、それぞれの立場や経験を活かしながら、地域や大学への想いを語り、交流する大切な時間となりました。企画・運営をしてくれた日立市100人カイギのメンバーのみなさんにも感謝します。

 なお、日立市100人カイギはこれからも続きます。次回は初の屋外開催も構想しているそうです。詳しくは日立市100人カイギのWEBページをご確認ください。

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