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茨大広報学生プロジェクト企画「iOPラボ アフリカから見た世界」を開催 
アフリカ再考 ~あなたの選ぶ道は~

 513日、インフォメーションラウンジ(水戸キャンパス図書館1階)& オンラインにてトークイベントiOPラボ「アフリカから見た世界 ~アフリカは本当に「暗黒の大陸」なのか~」がおこなわれました。本イベントは「茨大広報学生プロジェクト」が企画したもので、当日は会場とオンラインを合わせ、40人以上参加しました。ゲストには、茨城大学人文社会科学部在学中で、3月から海外に飛び立ち、現在ウガンダにある図書館でボランティア活動をしている山口二千翔(にちか)さんを招きました。同プロジェクトの学生によるレポートをお届けします。

 イベントのはじまりは、山口さんによる村の様子の中継からであった。最初に訪れたのは調理場。日本とウガンダの時差は6時間、夕方の日本に対し、現地はまもなくお昼時で、伝統料理ウガリを作っていた。次の行き先は学校で、小学6・7年生の授業にお邪魔した(ウガンダの初等教育は7年)。「将来の夢は何?」と尋ねられた子どもたち。その答えは「ドクター」や「パイロット」が多かった。幼稚園の授業にも参加させてもらえた。ウガンダの公用語の1つである英語の授業をしていた。英単語を教えているとのことだ。さらに、小学3年生の授業にも。当日は学期が始まったばかりで人数が少なかったようだ。なんでも「学期初めは学校の掃除をやらされるから」と学校に行かせない親もいるとのことだった。

 続いて訪れたのは図書館。「水戸にいた頃のアパートの方が広い」(山口さん)と言われるだけあり、コンパクトな空間だった。図書館では現金をモバイルマネーへの変換もすることが出来る。どうやら、モバイルマネーへの変換を目的に図書館へ来る人の方が多いらしい。

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 村の見学を終え、アフリカをめぐる課題について考える時間となった。そこで山口さんから与えられた前提条件は、このイベントが「笠間焼教室」と同じようなものということ多様な表現が可能な地元・茨城名産の「笠間焼」のように、今回得られたアフリカについての情報を、一人ひとりが自由に形作ってほしい、そんな思いが込められていた。

 山口さんはアフリカに着いてからというもの、さまざまな感覚を覚えたそうだ。そうしてたどり着いたのは「アフリカに本当に必要な支援とは何か」だった。貧しいのではないかと考えてしまいがちなアフリカ。しかし、経済発展が必ずしも幸福に結びつくとは限らない。ケニア・ナイロビのように発展を見せている場所はある。一方で、今住んでいる村はバナナやコーヒーの森の中にある。同じアフリカでも環境は一様ではない。それでも、「手に入るもので生きる」方法を心得ているのは同じである。

 山口さんによれば、アフリカには2000以上、ウガンダには65の民族が存在している。植民地支配を受ける以前、彼ら多くの民族の暮らし移動と交流を伴うものだった。そこに国境はなかった。民族の垣根もほとんどなく、「協調」が主な価値観であった。自然に逆らわず、限られた資源を共有しながらお互いを受容し合っていた。マサイ族の家にホームステイした際、「水は人間以外も含めたみんなの財産」と言われたそうだ。絶対に人間が独占してはならないと。

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 そんな協調性のある人たちが住む大地にヨーロッパの為政者や商人たちは目を付けた。彼らは文章で歴史を残す習慣のなかったアフリカに、自分たちと同じような人間、気遣うべき相手はいないとした。すなわちアフリカの人たちは遅れていると判断した。争うことを知らないアフリカの人たちは抵抗するという発想がなかった。よって、農業への従事や定住化を強いられ、必要としていなかった境界線を引かれた。それだけでなく、協調していた多くの民族を分断し、要らぬ争いを引き起こす結果となった。「民兵がドアをこじ開けようと、斧で壊した跡が今も生々しく残されている」と山口さんが話すのは、ニャマタ虐殺記念館(ルワンダ)のことである。他にもウガンダ内戦や内戦に付随した形で少年・少女兵が発生した。加えて、このような分断の余波は今でも続いている。

 地力を見失ったアフリカの人たちは、他を頼るばかとなった。「アフリカで支援をしている人たちに話を聞くと、必ず言うことがある」(山口さん)、それは「あなたは何をくれるの?」と尋ねられてしまうことだそうだ。援助依存を示す最たる例だ。また、物が無くて不便だろうから、と単に寄付をすればいいわけでもない。届いた物資と同じ種類の商品を扱う店もあり、場合によっては現地の産業が立ち行かなくなる。援助を行うならば、アフリカで真に解決が望まれる「課題」を見極める必要があるといえる。
 けれど、援助が必要な状態には変わりない。例えば、サブサハラ地域の絶対貧困率は海外からの援助によって改善されている。加えて、NGOが学校を建てたことで、「学校まで3時間歩く必要がなくなった」人もいるそうだ。

iOPlabo_3.JPG そして、山口さんから最後に投げかけられたのはやはり「アフリカに本当に必要な支援とは何か」であった。この問いを受けて、参加者の1人はこう述べた。「援助をおこなうのであれば、インフラを整備するよりも学習支援をおこなう方がよいと思う」。その理由として、学びを得夢や目標を設定、それらを追い求めることできる点を挙げた。加えて、インフラの整備だけでは根本的な社会の変化を引き起こせないだろう、との意見であった。このように経済発展あるいは教育機関の拡充を目指すのか、それとも植民地支配を受ける以前に営まれていた自給自足の生活に回帰するのか、選択肢はさまざまである。誰しもが選ぶ選択肢があるとするならば、それはただ1つ。アフリカで暮らす彼らを、常に主役として考えることであろう。

iOPlabo_4.JPG本イベントを企画・運営した「茨大広報学生プロジェクト」のメンバーと山口二千翔さん

(取材・構成:茨大広報学生プロジェクト 永島彰人(人社2年))