1. ホーム
  2. NEWS
  3. 感動と気づきを共有しよう!― 人社・西野由希子教授がナビゲートする土曜アカデミー「ブック・カフェ」

感動と気づきを共有しよう!
― 人社・西野由希子教授がナビゲートする土曜アカデミー「ブック・カフェ」

 茨城大学図書館では、一般の方や学生を対象とした無料のイベント・講座として「土曜アカデミー」を開講しています。茨城大学の多様な分野の教員が講師を務め、幅広いテーマで学ぶことのできるこの土曜アカデミーは、図書館がリニューアルした2014年から行われてきました。人文社会科学部の西野由希子教授が案内人となり、参加者同士で本について語り合う「ブック・カフェ(読書会)」は、通算30回を超える人気のイベントです。西野教授に、「ブック・カフェ」に込めた思いを聞きました。

-土曜アカデミーで「ブック・カフェ」を始めたきっかけは何ですか?

西野「ある作品を事前に読み、皆で感想などを語り合う読書会は、この土曜アカデミーが始まる前から、ゼミの学生たちを中心にときどきおこなっていました。そのうち、学生だけでなく地域の一般の方にも参加していただけたらいいなと思うようになったんです。2014年に大学の図書館が新しくなって、1階にカフェが入ったということで、コーヒーを飲みながら読書会をするのも素敵だなと。それで、当時図書館長だった高橋修先生に提案したところ、ちょうど土曜アカデミーを構想されていらっしゃり、その中でやってみようということになりました」

-読書会というと、皆がそれぞれおすすめの本を紹介するというものが多いと思いますが、この「ブック・カフェ」では、ひとつの作品について皆で語り合うという形式なんですよね。

西野「ブック・カフェには、基本的には本が好きな方が来てくださるのですが、きっかけは様々です。自分が好きな作品を扱っているから来てみた、とか、本を読む機会がほしいと思っていたところ、この会を見つけた、とか。毎回アンケートをお願いしているのですが、本を読むきっかけになった、という声と同じくらい、他の方の意見や話を聞いて、作品についての考えが変わったり深まったりしたという感想も多くあります。私自身も読み直すと必ず発見があったり、思うことがあったりしますので、参加者の皆さんと共有できるのがとてもうれしいです。何度読んでも新しい感動があるなと改めて思います。ある参加者は、初めて参加してくださった回にとりあげた作品が好きで、何度も読み込んできたが、みんなで共有したら楽しかったと、それ以降も続けて参加してくださっています。読書は自分一人のアクションだから、他の人を意識することは少ないと思うんですけど、語り合うことで自分の読書人生を振り返ることもできるのかもしれません。当日までに読み終えられなかったという方も、帰ったら最後まで読んでみます!と必ずおっしゃいますね」

DSC_9642①.JPGのサムネイル画像-西野先生は、大学での「ブック・カフェ」のほかに、地域でも読書会を開かれてきたと。大学での開催と合わせると、回数にして通算60回以上!続けてこられた秘訣はなんでしょう。

西野「一度来てくれた方が、レギュラーのようになってくれるのはうれしいですね。始めた当初は10人ほどだった参加者も、繰り返し参加してくれる方が増えて、今では多いと40人の方が集まります。もともと本が好きな方でも、まだまだ読んだことがない作品は多いと思うんです。次に取り上げる作品は何かな、と楽しみにしてくれたり、毎回欠かさず来てくださる方がいるというのが、励ましになっていますね。私も、感想を語り合うだけでなく、文学史的なことや作家のエピソード、新しい視点からの読み方など、これは聞いてよかったなと思っていただけるような内容を提供するようにしています」

-これまで取り上げてこられた作品は、日本文学から海外の文学まで多種多様ですね。どのように選んでいるのですか?

西野「まずは私自身が、自信をもってこれは好き!、絶対皆さんと読みたい!という気持ちを常に大事にしています。読書が趣味という学生でも、ライトノベルとか人気小説を好んで読む傾向があります。そんな学生にも、何度となく読み返されてきた文学的な深さがあるような作品を手に取るきっかけにしてほしいのです。たまたまこの会でその作品を読んで、大げさだけど、その人の人生を変えてしまうというようなものに出合ってほしいと思っています」

-西野先生が本を好きになったきっかけや当時のエピソードを教えていただけますか。

西野「文字が読めるようになったときから本が好きで、特に小説を好んで読んでいました。学校の図書館で手当たり次第に読んでいましたね。そのうち、繰り返し読みたいと思う作品が出てくるんです。大学での「ブック・カフェ」の記念すべき第1回に選んだ作品は、その「何度も読みたくなった」、フランスの作家・モーパッサンの「女の一生」です。主人公が女性であることと関係があるのかどうかわかりませんが、自分の人生の中で何かがあるとこの作品を読みたい、読み直したいと思って読んできました。読むタイミングによっては、思っていたところと違うところにぐっときたり。大学院生のときに鶴見俊輔氏の「再読」という本と出合ったのですが、その人にとって大切な一つの作品を、いろんなタイミングで繰り返し読むことの大切さを、自分でも自然に体感してきたんです。読書会の楽しさは高校時代に文芸部で経験していて、もう一度読みたい、自分にとっての大事な作品を読書会で読むという今の活動につながっています」

DSC_9666②.JPGのサムネイル画像

-幼い頃の夢も、やはり本に関わることだったのですか。

西野「いくつの頃だったかは覚えていないのですが、本がいっぱいあるところで働きたい、本に囲まれて暮らしたいという夢がありましたね。それが本屋なのか図書館なのか、当時はわからなかったのですが。今、私の研究室は縦横にいろいろな本が積み重なっているのですが、まさにこれが夢でした。読み切れない本がいっぱいあるのは、幸せです!」

-5月14日(土)に今年度初となる「ブック・カフェ」が開催されますね。選ばれたのはドイツの作家、ミヒャエル・エンデの「モモ」ですが、どのような思いで選ばれたのでしょう。

西野「できるだけ世界じゅうのいろんな作家の、いろんなジャンルの作品を、と思って選んできました。多くの人によく知られている作品だったり、自分で一人では手に取って読むことが難しい作品だったり、というバランスも考えています。今回は、土曜アカデミーとしては少し間があいてしまったということもあり、できるだけ皆さんが手に取りやすい作品を選びました。

「モモ」は、物語を自分の状況に引き寄せたり、社会の状況に重ねながら読めるような作品で、子どもにも大人にも心に残る奥が深い作品だと思っています。コロナの状況下であることを意識して決めたわけではないですが、こういうときに読むのも意味があるかもしれませんね。学生たちのビブリオバトル(参加者が自分の気に入った本を持ち寄り、その本の魅力を書評しあうゲーム)でもよく取り上げられていますし、たくさんのひとに参加していただけたらうれしいです」

-今回も今年1月に続き、オンラインでの開催となりますね。

西野「ブック・カフェを毎回楽しみにしてくださっている方が多くいらっしゃったので、コロナの中でも、オンラインでやってみようと思いました。オンライン授業を経験して、グループワークや意見交換の方法もわかりましたし、中断したままよりは何とか再開したいという気持ちが強かったです。前回初めてオンラインでおこないましたが、事前に学生を中心に練習としてオンライン読書会をして、やり方を確認しました。環境がなく参加が難しいという方もいらっしゃると思いますが、オンラインであってもやっぱり作品を読んで語り合うことの楽しさや大切さを、皆さん感じてくださったようです」

-最後に、皆様へメッセージをお願いいたします。

西野「すでに茨城大学の学生だけでなく、高校生や一般の方からの参加希望をいただいています。読書会が、新しい作品や本が好きな方々と出会える場、文学の世界への扉になれたらと願っています。皆さんとご一緒できるのを楽しみにしています!」

DSC_9684③・サムネイル.JPGのサムネイル画像

(取材・構成:茨城大学広報室)

関連リンク

① 日時:令和4年5月14日(土)13:0015:00
テキスト:ミヒャエル・エンデ「モモ」
方法:オンライン(Microsoft Teamsを使用します)
申込み:以下のURLから開催前日までにお申し込みください。
https://forms.office.com/r/chDM5rVzME

② 日時:令和4年7月8日(金)19:00~21:00
テキスト:コンラッド「闇の奥」
方法:オンライン(Microsoft Teamsを使用します)
申込み:以下のURLから開催前日までにお申し込みください。
https://forms.office.com/r/K2fLimqrug

【問合せ】茨城大学図書館 
TEL
029-228-8076/e-mail:ser-lib01[at]ml.ibaraki.ac.jp
※[at]を@に置き換えてください。