3月15～16日、茨城大学農学部を発信拠点として日本熱帯農業学会の第131回講演会公開シンポジウムがオンライン形式（Zoom）で開催されます。テーマは「カカオとチョコレート～Towards the Future～」。小規模カカオ農家の状況とそれに関連したチョコ―レートの生産・加工・流通について、国内外の報告者が最新の研究や動向を紹介し、議論を行います。どなたでも無料でご参加いただけます（事前登録が必要）。

　チョコレートは世界中で愛されており、近年商品の幅も広がっています。一方でその原料となるカカオの生産については、原産地となる熱帯地域の小規模農家における高齢化や知識・情報の不足といった問題により、原料生産から消費に至るグローバルな流通プロセスの持続可能性が重要となっています。今回のシンポジウムでは、世界第3位のカカオ豆生産量を誇るインドネシアにおけるカカオ栽培の問題点やカカオを通じた農業振興、カカオの栽培からチョコレート作りまでを手がけるFarm to Barや地域に根差したマーケティングなどの最新の取り組み、カカオ豆の発酵のメカニズムや味覚の決定要因に関する学術的知見などを国内外の報告者が紹介し、総合的な視点からカカオとチョコレートについての未来を展望します。

　このうちインドネシアのガジャ・マダ大学農学部のAni Widiastuti准教授は、「インドネシアの小規模農園におけるカカオ栽培と問題点（Cultivation and Problems of Cacao on Smallholder Farmers Field in Indonesia）」と題し、小規模農園の生産者の知識不足によるカカオの木の高齢化や病害といった課題とその解決の取り組みを報告します。同じガジャ・マダ大学の講師で事業も手がけるRachmad Gunadi講師、Farm to BarのメーカーであるDari K株式会社代表取締役の吉野慶一氏のお話ともあわせて、インドネシアの農家とつながった持続可能な生産と加工・流通の課題と新たなトレンドが示されることでしょう。

　また、意外と知られていないのが、チョコレート製造過程におけるカカオ豆の「発酵」というプロセスです。カカオ豆の発酵や乾燥はチョコレートの味覚に大きく関わりますが、発酵にどのような微生物が関わっているかなど、そのメカニズムにはわかっていないことも多いといいます。最新の研究事例を、東京農業大学の大西章博准教授が報告します。

　水戸でチョコレート店「パティスリー ショコラトリー ダルメゾン」を営む達聖氏のお話も、この講演会の中でユニークなものになりそうです。茨城県内でつくられる果物や地酒を使い、地域ならではのストーリーをもたせたチョコレート商品の開発秘話を通じて、チョコレートと地域とのつながりを考えます。

　最後に広島大学の佐藤清隆名誉教授は、ミルクチョコレートのおいしさを決める①カカオ豆、②砂糖と粉乳、③製造工程、④（チョコレートの）摂取条件のうち、カカオ豆の品質の占める割合の大きさを指摘した上で、カカオ農園の疲弊化が進む現状における課題と展望を語ります。

　このシンポジウムを通じて、普段何気なく味わっているチョコレートから、深い歴史やグローバルな課題が見えてくることを実感いただけるはずです。ぜひご参加ください。

日本熱帯農業学会第131回講演会公開シンポジウム「カカオとチョコレート　～Towards the Future～」

【日時】2022年3月16日13時～
【事前登録】こちらのフォームから登録
【プログラム】
＜挨拶＞太田寛行（茨城大学 学長）
＜趣旨説明＞久留主泰朗（茨城大学 理事・副学長）
＜講演＞　※英語の講演については日本語による解説もあります。

• 「インドネシアの小規模農園におけるカカオ栽培と問題点」
  Ani Widiastuti　ガジャ・マダ大学農学部准教授
• 「カカオ豆の発酵と微生物について」
  大西章博　東京農業大学応用生物科学部准教授
• 「インドネシアにおける発酵済カカオ豆増産に向けた共同事業会社」
  Rachmad Gunadi　ガジャ・マダ大学農学部講師／PT Pagilaran取締役
• 「カカオの可能性を拓く～付加価値創出に向けたDari Kの挑戦～」
  吉野慶一　Dari K株式会社　代表取締役
• 「チョコレートに託す茨城の魅力～la main par la main～」
  達　聖　パティスリー ショコラトリー ダルメゾン　オーナーシェフ
• 「チョコレートのおいしさは何で決まるか？」
  佐藤清隆　広島大学　大学院生物圏科学研究科　名誉教授

【お問い合わせ】
運営事務局　茨城大学農学部・浅木直美
メール：jsta131@ml.ibaraki.ac.jp