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農・地域総合農学科でAI・データサイエンス教育プログラムを開始
―戸嶋浩明学部長が語るビジョンと実践

 農学部地域総合農学科では、2022年4月から「農学分野データサイエンス教育プログラム」が新たにスタートします。スマート農業の進展を踏まえ、気象データや生育データに基づいた生産や管理ができる人を育てることを目指し、プログラミングの科目などを新設するほか、附属農場である国際フィールド農学センターにもさまざまな設備を導入し、最新の環境で実践的に学べる仕組みを整えつつあります。狙いなどを戸嶋浩明学部長に聞きます。

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数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムに農学分野として唯一参加

―農学部でAI・データサイエンス教育プログラムを開始。その経緯を教えてください。

戸嶋「AI・データサイエンスを駆使できる人材の育成は農学分野に限らず国が政策として強化していることです。そうした中、複数の大学や高専でつくる『数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム』というものもできたのですが、茨城大学農学部は農学関係として唯一このコンソーシアムに特定分野協力校として参加しています。

 農業ではこれまでのような経験のみに頼る方法ではなく、気象条件や土壌条件、病害虫の発生状況などの数値化されたデータに基づいた予測をしながら生産すること、そうしたデータの取得・活用を統合した『スマート農業』がますます重要になってきています。そうした中で、農業を実践的に学ぶ地域総合農学科で、理論だけではなく実データ、実課題を用いてAIやデータサイエンスの知識や技術を身につけることを目指して、設備投資やプログラムの準備を進めてきました」

―このプログラムを学んだ学生の卒業後のキャリアのイメージは?

戸嶋「地域総合農学科には卒業後に就農したいという学生がいます。彼らの中には実家が農家で、おじいさんやおばあさんが苦労している姿を見ながら、どうにかしたいと思いをもっている学生もいる。そうした学生にとっては、自らデータを活かした新しい農業を切り拓いていってほしいですね。

 流通においても、オンラインで生産者と消費者が直接つながるようになってきて、個人単位の形態でも儲かる構造が生まれています。消費者からのフィードバックが生産者にとっても嬉しい。情報産業を理解している人が参入すれば、そういう場もどんどん作ったり活用したりすることができます。

 農家や農業生産法人でなくても、農や食はSDGsのすべての目標の根幹にかかわるものですから、実はいろんなビジネスチャンスがあります。本学の農学部でAIや数理データに関しても学び、視野や活動を広げていくことが、地域や世界の農業、SDGsへの貢献につながるんだということをみなさんには知ってほしいです」

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生産プロセスに科学的な観点で関われるというアドバンテージ

―フードロスの問題やコロナ禍での食の流通・消費の変化を受けて、食のビジネスに関わりたいという人は少なくありません。農学部には「食」という言葉のついた「食生命科学科」もありますが、「地域総合農学科」ならではという点は?

戸嶋「地域総合農学科は、生産の現場を直接見て体験できる、という点が大きいですよね。特に農業科学コースなら1年間とかそういう長い期間をかけて、栽培管理の計画を組んでいきます。その中で、実際の情報、データを用いながらどう改良するか、付加価値をつけるか、ということを体験しながら学ぶのですから、それをもって食のビジネスに関わっていくというのは大きなアドバンテージといえるでしょう」

―6次産業といわれますが、「1次」を体験として知っているということが差別化にもつながるということですね。

戸嶋「そうですね。2次、3次のところでいろんな技術やサービスは出てきていますが、それらはある種均質化していってしまうところがあります。その中で本質的な付加価値をつけ、差別化するとしたら、やはり品種、育種なんです。生産物はどうしても最終的に出来上がったものだけ見られがちですが、その栽培、生産のプロセスに科学的な観点で関われるというのは大きな力ですよね」

IoTやドローンを導入した農場へ歩いて行ける

―AI・データサイエンス教育プログラムを始めるにあたって、教育環境をどのように整備していますか。

戸嶋「附属農場である国際フィールド農学センターには、ドローンや草刈りロボット、IoTに対応できるフィールドサーバー、などを設置しました。茨大だけを見ていると実感しづらいですが、実はキャンパスから歩いて行けるところに農場があるというのは貴重なんです。バスに乗らないとキャンパスから農場へ移動できないという大学も多いですからね。しかも私たちは農業生産の国際的な認証システムであるGAP認証も取得しています。最新のデータを駆使した農業とグローバルな基準の生産知識をすぐ近くで学べる、というのは私たちの自慢です」

AI_DS_kyouikuPG3.jpg農場でのドローン操作

AI_DS_kyouikuPG4.jpg草刈りロボットのデモンストレーション

―プログラミングの科目も設置しました。どのようなレベルの人材を育てることができるカリキュラムなのでしょうか。

戸嶋「もちろん工学部や情報系の学部・学科で専門的に学ぶようなレベルではないですが、ツールとして農業に活かしたいという人であれば十分に学修できます。実際、データサイエンス単体で課題解決ができるわけでありません。スキルを身につける上でも大事なことは、実データ、実課題に対応させながら学ぶことです。最初はうまくいかないことも多いと思いますが、うまくいったときには、『これが役立つんだ』という強い実感を得られるはずです。そうすると一気に伸びていき、活用もできるようになると思います。それができるのが農学部のプログラムです」

間口は広く チャレンジできる人をしっかり育てたい

―地域総合農学科は、高校のときに文系を中心に学んだ学生にも間口を開いていますね。数学Ⅱ・Bまでしか学んでいないといった学生も対応できますか?

戸嶋「苦手であっても、興味や必要性を感じて始めれば、つまみ食いのような感じかも知れませんが自分の知識や技術として活かせるようになると思います。そういう学生を、私たちも取り残すことなくしっかり育てたいですね」

―先日の「茨城県学生ビジネスプランコンテスト2021」では水戸農業高校の生徒たちがグランプリをとりました。高校生たちの関心や意識がどんどん高まっている印象です。

戸嶋「これからそういう経験や志向性を持った学生がたくさん入学してくるとしたら嬉しいですね。まさにそういう学生がより専門的な知識を身につけて、新しいことにチャレンジし、地域や世界の農業に貢献できる、そのための土台が今回できたといえます。あるいは、既に就農している人、これから就農したいという人のリカレント教育の場としてももっと貢献したいですね」

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―大学院の農学研究科でもAI・データサイエンス分野を強化していくそうですね。

戸嶋「農学研究科の方は、文科省の統計エキスパート人材養成プロジェクトというものに採択されました。新しい教員の採用も含めて、教員の育成を図り、それによって農学部の学部から大学院まで一貫的な教育を進めたいと思っています。

 また今回の学部のプログラムの開始にあたっては、農学部の教員の協力のもと、農学実習や既存の専門科目についてもAI・データサイエンスとのつながりを意識した形にシラバスを更新してもらったんです。教員も懸命に努力をして、意識が高まってきています。こうしたひとつひとつの取り組みが、学生の教育はもちろんのこと、個々の研究の底上げにもつながるのではないかと期待していますし、茨大農学部が日本の農学教育をリードしていけるのではないかと思っています」

(取材・構成:茨城大学広報室)

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