1. ホーム
  2. NEWS
  3. 農学部研究室訪問交流会、工夫凝らした初のオンライン開催が盛況!

農学部研究室訪問交流会、工夫凝らした初のオンライン開催が盛況!

 茨城大学と茨城県経営者協会では、県内企業等の方々に茨城大学の多様な研究を知っていただく機会として、理学部・工学部・農学部の研究室訪問交流会を開催しています。10月29日には、農学部の研究室訪問交流会を2年ぶりに実施。初めてのオンライン開催となったことから、学生による研究室プレゼンとそれらに対する「企業賞」の進呈など、工夫を凝らしたプログラムとなりました。広報室の山崎が報告します。

 農学部の研究室訪問交流会、初のオンライン開催。いやあ、楽しかったです。何より良かったのは、Zoomのブレイクアウトルームの機能を使って、12の部屋に分かれて展開された各研究室の学生たちの熱いプレゼンテーション。教員とのやりとりに比べてハードルが下がるのか、参加していた企業のみなさんもリラックスした感じで質問やコメントをしていたように感じました。

 その前に、まずは今回の訪問交流会の流れをざっくりと紹介しておきましょう。
 前半は、①戸嶋浩明農学部長による農学部の教育・研究の紹介、②農学部のインターンシップ事業の紹介、③佐藤達雄教授による基調講演。後半は、ブレイクアウトルームを使ったオンライン研究室訪問と、各協賛企業からの「企業賞」の発表&表彰式(それがまた大盛り上がり!)という構成でした。

 佐藤教授の講演タイトルは「岩手県陸前高田市における復興支援事業への参加で学んだこと」。陸前高田市といえば、2011年3月11日の東日本大震災で津波の大きな被害を受けた地域で、震災発生から10年以上が経った今でも復興作業が続いています。そうした中、津波で被災した土地を農地として再造成し、産業や生活の復興を図るという取り組みがスタート。佐藤教授も植物生産科学の専門家として参加し、地域農業の復興になるような新たなノウハウの確立のための実証実験を行いました。
 最初の実験は2016年。施設を失ってしまった農家の方と、初期投資が少ない露地キュウリの栽培を始めました。導入したのは、佐藤教授が20年ほど前から研究してきた「かん水同時施肥栽培」という技術。2週間に1度、キュウリの葉を数え、それをもとに最適な肥料の必要量を算出し、施肥量の調節をリアルタイムで行うことにより効率的な栽培を行うというものです。

nou_houmonkouryu1.jpg

 佐藤教授は毎月岩手を訪問。生産者の方も研究熱心で、毎回欠かさず葉数調査を行い、綿密な記録をつけていきました。研究室ではその報告をもとに施肥量を伝えます。その結果、93%増という大きな増収効果が見られたということです。
 ただ、実験開始当初はネットワークが広がらず、なかなか波及しなかったということですが、その後、他の地区でも実証実験をスタートし、また学生も現地での実証実験に参加するようになって、より簡易な仕組みも開発。農家の方と学生たちとの交流も深まり、他の地域にも広がりを見せていきました。さらに、なんと、この経験を学生たちはインドネシアで開催された国際学会でも報告し、津波被災経験を持つ研究者とシェアしたそうです。

nou_houmonkouryu_ekihi.jpg

 今回の復興支援事業への参加の経験を踏まえ、佐藤教授は、「基礎研究成果の社会実装作業においては、厳密な調査分析をすることが難しく、業績として反映されるような学術論文につながりづらい。そのため大学の研究者は腰が重くなりがちですが、このような作業に参画することによって自分たちの努力が社会に貢献しているという実感を得ることができます」と語ります。
 また、「現地試験が成功した」ことと「農家の誰でも実践できる」ことは同じではない、とも指摘します。「謙虚な姿勢で生産者と対話を重ね、カスタマイズして使える技術にすることが大事だと改めて認識しました」と振り返りました。今後、技術が定着するまでは継続的に関わっていきたいということです。

 さて、後半はいよいよ研究室訪問です。140分というたっぷりの時間で、参加者はZoomのブレイクアウトルーム機能を使い、12の部屋(参加研究室数は13)から興味のあるところを選んで「訪問」していきます。そこで学生たちが待っていて、短いプレゼンテーションを行うというものです。

 私が訪れたのは、ヒトや動物の「味覚」にフォーカスして生活習慣病予防や動物の味覚バイオセンサーの開発に取り組んでいる吉田悠太研究室、藻に関する基礎・応用研究に取り組んでいる朝山宗彦研究室、生物有機化学が専門の鈴木義人研究室など。いずれの研究室でも参加者からたくさんの質問、コメントが出ていて、学生たちが懸命に答えているのが印象的でした。

 このうち、個人的に印象に残ったのが、鈴木研究室のプレゼンテーションです。同研究室で発表を担当したのは修士課程の2人の大学院生。2人が現在進めているのが、昆虫が植物に作る「ゴール」という組織(「虫コブ」と言った方がピンと来るかも知れません)に関する研究です。昆虫による刺激が植物の成長プログラムに働きかけることによって、葉の一部などにコブ状の組織ができるということですが、「刺激」の本体はずっと解明されていませんでした。
 これに対し、鈴木研究室では、ゴールを作る昆虫が、オーキシンやサイトカイニンといった植物ホルモンを自ら作ることを発見。そして今は、これらの植物ホルモンの生産に関わる酵素の特定が進められています。たとえば、虫コブを作らない昆虫も、これらの酵素を豊富に持てば虫コブを作れるようになるかも知れない......そんな実験結果にも取り組んでいるそうです。成功すればもちろん「世界初」です。
 ゴールの研究自体は100年以上前から取り組まれていますが、ここに来てゴールの形成機構が一気にわかってきました。将来的には、植物にとっては「害」であるゴールの駆除に留まらず、植物組織の新しい培養技術の開発にもつながるかも知れない、ということです。何より、学生の発表からは「ゴール」への溢れる愛が感じられました。

nou_houmonkouryu2r.jpg

 さてさて、今回の研究訪問交流会がいつも以上に盛り上げてくださったのが、協賛いただいた企業からの「企業賞」の存在です。学生たちの発表を聞き終えた各企業の担当者が、「これぞ!」という研究室を選んで表彰するというものです。そのラインナップがこちら。

nou_houmonkouryu3.jpg

 選んでいただくだけで名誉ですが、学生たちにとってさらに嬉しいのは、各企業からの豪華賞品をいただけるというところ。たとえば株式会社幸田商店からは「ほしいも」、日本ハム株式会社からは「ソーセージ」、不二製油グループ本社株式会社からは「業務用チョコレート」というように、さすが農学部の企画!という副賞が並びました。
 ドキドキしながら発表を待っていた学生が、受賞を聞いて大喜びする様子がとても印象的でした。また、各企業の担当者からは、受賞理由はもちろんのこと、それぞれの企業の取り組みについても説明。これは学生にとっては今後の就職活動の参考にもなったはずです。

nou_houmonkouryu4r.jpg

 ということで、初のオンライン開催ということを踏まえてアイデアを凝らした今回の研究室訪問交流会。学生によるプレゼン&企業賞という交流は、今後対面で開催したとしても続けても良いのではないかと感じました。さらにはぜひ、農学部以外の学部でも、学生たちがそれぞれの研究室のことを紹介し、互いに交流できる機会があれば、学部・分野をこえた研究交流や、後輩たちのゼミ選択のきっかけにもつながるのではないかと思います。
 次回も楽しみにしています!

(取材・構成:茨城大学広報室 山崎一希)