コロナ禍の大学生活の不安も知恵もみんなで共有して前へ
―全国大学生サミットに託した大学2年の私の経験
10月31日(日)13時から、全国の大学生が集まってコロナ禍での学生生活の不安や過ごし方を共有するWEBサミットが開催されます。全国大学生活協同組合連合会学生委員会主催のこのイベントで運営メンバーを務めるのが、茨城大学教育学部2年で茨城大学生活協同組合学生員会(GI)委員長の白井花音さんです。入学式も中止になり、コロナ禍でのオンライン中心の大学生活が「普通」の状態になっている2年生の白井さんは、今どんな思いでこのイベントの運営を進めているのでしょうか。
コロナ禍での大学生活について自分なりの答えや共感できる人を見つけてほしい
―「全国大学生サミット」というのはどんなイベントですか?
白井「全国からいろんな大学生が集まるオンラインのオープンキャンパスのようなイメージです。他の大学での授業や生活の話、異なる価値観の話を聞いて、コロナ禍の中での大学生活について、自分なりの答えを見つけたり、共感できる人を見つけたり、ということを目標にしています。
前半が全体会で、実行委員の学生たちが授業や部活、就活などの話をして、そのあと専門家からアドバイスをいただくパートやパネルディスカッションがあります。ライブアンケートというリアルタイムで質問やコメントを送れる仕組みを使って参加者の声も取り上げながら進みます。
後半は分科会で、「集まれ!普通の大学生」「オンライン授業の今を語ろう」「心理カウンセラーと話してみよう」「コロナ禍の就活」という4つの"部屋"に分かれて話し合います。
全体で4時間ぐらいのイベントで、大学生はもちろん、それ以外の方も含めてどなたでも参加できますし、部分参加もOKなのでまずは気軽に参加してほしいです」
―このような企画は初めて?企画の経緯は?
白井「全国の大学の生協学生委員会同士の交流はありましたが、それ以外の大学生も広く含めたイベントというのは初めてじゃないでしょうか。
今年7月に、(全国大学生活協同組合連合会で)「届けよう!コロナ禍の大学生活アンケート」というのを行って、7832人から回答がありました。その結果から、2年生の半分以上が「意欲がわかず、無気力に感じる」という回答をしているなど、深刻な状況がわかったんです。いろんな悩みを他の人と共有したい、他の大学生の状況を知りたい、といった意見も多かったので、誰でも気軽に参加して、大学生活について話ができるこのサミットを企画しました」
不安に関する質問への回答では学年ごとの違いも見られる(「届けよう!コロナ禍の大学生活アンケート」報告書より)
―白井さんは茨城大学生協の学生委員会(GI)の委員長としてこのサミットの運営に関わっているんですか?
白井「学生委員会の全国組織のような事務局(全国大学生活協同組合連合会学生員会)があって、そこの方から声をかけられて、やることにしました。学生の運営メンバーは20人ぐらい。そのうち事務局の学生メンバー以外で運営に参加している学生は、私ともうひとりの2人です」
―そのぐらいの規模だと、白井さんも企画の中心メンバーというわけですね。
白井「そうですね。私はオンライン授業についての分科会を担当していて、当日の進行や、いろんな大学の授業の状況を調べた結果の報告を担当します。
茨大では去年のうちから対面授業も行われていますが、大学によっては規模が大きすぎるとか都心に近いといった理由で未だに対面授業ができていない、未だに学校に行ったことがないという人たちの声も聞いています。私も最初は茨大の中だけの視点で考えていたのですが、このサミットに参加していろんな人がいるんだと、学びがありました」
―白井さんはなぜこのサミットの運営に関わろうと思ったんですか?
白井「私自身はGIに入ったので、その中で友達や先輩ができたし、大学の授業も含めていろんな学びができて充実していると思えているんですが、一方で自分だけではそういう場に行けない、出遅れちゃった、と思っている人もいて、今回の企画はそういう学生にも手を差し伸べられる機会だと思ったんです。GIとしてもいろんな活動をしていますが、家から一歩も出られずにいる人にはまだ何もできていないと感じていたので、この機会を生かしたいと思いました」
孤独感や不安は自分も大きかった
―アンケートからは2年生が置かれている状況の厳しさが目立ちます。白井さんも2年生ですがどう受け止めていますか?
白井「孤独感や不安というのは自分も大きかったですし、将来に向けての不安、この状況がいつ終わるんだろうという不安は学生でなくてもあると思うので、このまま就職して大丈夫なのかな...とか考えてしまいます。孤独感を解消できているという人も、このあとどうするの、と悩んでいる人が私の周りでも多い気がします」
―それがコロナ禍で増幅している?
白井「同じ学年での横のつながりは授業でもつくれますが、先輩・後輩はサークルに入っていないとなかなかできません。縦の関係がないと、自分の将来をイメージしたり、相談したりすることができなくて、それが不安ですね。就活セミナーもオンラインだとどうしても実感がわきません」
―去年の4月に入学して、最初の1カ月間は入学式も授業もないという状態でした。どのように過ごしていたのですか?
白井「アパートを契約しちゃっていたので引っ越してはいたのですが、4月の空白の1カ月間は何をしていたんだろう...と今でも考えてしまいます。後から考えると、入学直後の慌ただしさがない分、この期間に自炊とか自分の身の回りのことがちゃんとできるようになったとかはありますけど、結局この1か月間、友達とかできなかったよな...とか毎日思っていた感じです」
―GIに入ったのはいつ?
白井「去年の5月です。とにかくなんでもいいからサークルに入りたくて探していたんですけど、見つけたサークルはまだ活動を始められないものばかりだったので、そんなときにGIの募集を知って、ひとまずここに入っておこう、という安易な気持ちで入ったんです」
―ちょっと入ったつもりが今では委員長に(笑)
白井「GIの活動も結局最初はオンラインで企画を決めたりという感じだったんですが、緊急事態宣言が明けてちょっと規制が緩んだときに、初めて先輩に初めて会ってご飯行ったりしたんですが、それがめっちゃ楽しいな、って。今までだったら大学に入ってすぐ、普通にみんなが体験することだったと思うのですが、それがありがたく感じたんですよね。
先輩たちも私たちの状況をたくさん聞いてくれたんですけど、先輩は先輩でずっと対面だったのが急にオンラインになっちゃって、それも辛いと思うんですよ。私たちは最初からこうですけど、先輩たちは楽しいところから急に落とされちゃったような感じですから。
そのうち、生協の職員さんに向けて学生の状況を代表して説明したりとか、今年になってからは新入生向けに自分の経験をもとにしてアドバイスしたりとか、そういうふうになってきました」
救ってくれた、助かった、そのつながりを止めちゃいけない
―入学前に想像していた自分とは違うのでは?
白井「あのとき学生委員会に入っていなかったら、ひたすら遊ぶだけのサークル活動をしていて、こんなことは絶対していなかったと思います(笑)人生が変わりました」
―何が白井さんを変えたのでしょう。
白井「GIの先輩たちが自分を救ってくれたという思いがあるんです。救ってくれた、助かった、そのつながりを止めちゃいけないな、って思ったんです。コロナ禍にもオンラインにもだいぶ慣れてはきましたが、そうすると今度は別の問題も出てくるわけで、そのときに自分と一緒にがんばってくれる人、そばにいる人がいる、という状態を続けていかなきゃいけないな、と思いました。それが今、GIの委員長として一番やりたいと思ったことです」
―その思いが、大学内だけでなく、さらに日本全国の大学生へ、というこの活動へとつながってくるんですね。そういう自身の変化を経て、コロナ禍での大学生活というものを、今どのように捉えていますか?
白井「入学前に考えていたのとは全然違いますけど、それでもやっていくしかないし、それが運命というか、そこで負けちゃいけないな、と。大学生で就職先が決まり、それで将来が決まってくるという意味で、大学時代は人生の分かれ道だと思いますが、それがコロナに左右されちゃうんじゃなくて、コロナも含めたいろんな状況の上に自分が立って、それを利用するぐらいになりたいと思っています」
―その経験を、今そうできずに足掻いている学生たちにも共有したい、ということですね。白井さんとしてどんなメッセージを伝えたいですか?
白井「自己肯定感が下がっちゃったりとか、これで悩んでいるのは自分だけなんじゃないかとか思っているとすれば、あなただけではないよ、その気持ちを抑え込まないで出していいんだよ、と伝えたいです。今回のサミットを、そういう気持ちをはける場にもしてほしいし、周りに同じような人やがんばっている人がいることがわかって、これなら自分でもがんばれるかな、できるかな、という形で、少しでも目指せるものができる機会になればいいなと思っています。
私も含めて、みんな最初は同じ地点にいたと思うんですよ。きっかけがなかったからダメとか、遅かったとか、そういうことは全然なくて、ちょっとのことで変わるし、今この瞬間もきっかけをもてる機会があるんだよ、ということを伝えたいです」
全国大学生サミット2021
- 開催日時:2021年10月31日(日)13:00~17:00(時間は予定、部分参加も歓迎)
- プログラム概要:事例報告・交流/パネルディスカッション/テーマ別分科会
- 参加対象:全国の大学生、大学院生、大学教職員、応援・支援したい一般社会人
- 開催方法:Zoomウェビナー・Zoomでのオンライン開催(予定)
- 参加規模:約2000名
- 参加申込・企画詳細:https://www.univcoop.or.jp/
関連リンク
茨城大学生活協同組合学生委員会(GI)twitter:@ibaraki_gi