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生徒が登校しない期間の教育実習
―水戸二高からのレポート:今だから学べること

 例年9月は教育実習が多く行われる時期です。通常は5~6月と9~10月の2つの時期に振り分けられますが、今年度、本学では新型コロナウイルス感染症への対応として、ほとんどの実習を9月に集中。その結果、国の緊急事態宣言によるオンライン授業や分散登校対応の時期と重なってしまいました。イレギュラーな状況の中でも実習生を受け入れてくださった各学校の皆様には心より感謝いたします。
 学生にとっても、児童・生徒がほとんど登校しない状態での教育実習には、「何をどう学ぶべきか」「子どもたちとの直接の交流がほとんどないまま教員になって大丈夫だろうか」といった不安もあったと思います。
 そうした中、「こんな状況を活かして実習生たちががんばっている」と、水戸第二高等学校から本学へ写真が届きました。

 学校現場に実際に入って教師の仕事を体験する教育実習は、教員養成の中でも重要な役割を果たしていますが、昨年度来、新型コロナウイルス感染症の影響によって、本来の形では実施できなくなっています。文部科学省でも、実習が実施できない場合は学内での代替授業でも可とする、特別な措置を続けています。
 一方、茨城大学では、教職課程履修者の貴重な学校現場体験を失うことは避けたいという思いから、オンライン授業のサポートなど子どもたちが登校しない状況でも体験できる取り組みを例示しながら、各学校へ受け入れのお願いをしてきました。

 そうした中で、水戸二高の校長である石井純一先生から、学生たちがオンライン授業の実習に取り組んでいる写真をお送りいただきました。そこで、石井先生と実習生に話を聞きました。

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 この写真は、家庭科の研究授業の様子。オンライン授業の実践を、校内の先生方に見てもらっているところです。

 今年度本学から水戸二高に受け入れていただいた実習生は4人。実習期間は2週間の実習生が2人、3週間も2人でした。茨城県内の高等学校は、夏休み期間を延長するとともに、9月も登校を控え、授業やホームルームをオンラインで行ってきました。
 石井先生によると、水戸二高では昨年度来、オンライン授業の質を高める工夫をしてきたことから、実習生に対しては、「高いレベルで取り組んでいるオンライン授業を直接目にして、肌で触れてほしい」と伝えたそうです。加えて、担当するクラスや教科だけでなく、他の授業やホームルームも積極的に見てほしいと呼びかけました。

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 石井先生は、「オンラインの教育実践はトライ・アンド・エラー。まずはやってみて、うまくいかなければ直せば良い」と語ります。さらに、登校ができなくなったこの9月の期間は、実は正規の授業にはカウントされておらず、あくまで「臨時休業期間」であることから、「なおさら、やりたいことにどんどんチャレンジしてほしい」(石井先生)。
 実際に学生たちはいろんな試行錯誤をしていたそうで、さまざまな授業やホームルームの様子を見て貪欲に学びつつ、「自分たちが今できることは何か」「どうしたら生徒たちに伝えられるか」を悩み、遅い時間まで残って準備をしている姿が見られたそうです。

 3週間の実習を行った理学部4年生の仲田遥香さんは、同校の卒業生。実習では化学を担当しました。「母校で実習ができることを楽しみにしていたので実習の実施が決まって嬉しかった」と感じつつ、生徒が登校しない中での実習について、どのようにして生徒の雰囲気をつかめば良いのか戸惑ったそう。しかし、グループワークを上手に取り入れた水戸二高の複数の教科のオンライン授業を見学し、生徒たちが主体的に学習に取り組んでいる姿に触れて、「オンラインなのにこんなにアクティブな授業ができるんだ」と刺激を受けました。
 そこで仲田さん自身も、生徒の主体性を引き出すよう授業を組み立てていきました。最初はデバイスの操作に手間取ったり、共有資料の中で強調したい場所をシェアするのが難しかったりして、グループワークでも生徒の発言をうまく引き出せなかったとのこと。それに対しては、指導教員の先生から「『自分がここでどうするか』ばかりを考えるのではなくて、発問を通じて『生徒がどう考えるか』『生徒がどう動くか』をもっと考えてみて」というアドバイスを受け、その後はヒントを出しながら活発なグループワークを進めることができたそうです。
 また、3週目の後半からは登校が始まったことから、対面授業も体験できました。5クラスで3回の授業を行うにあたり、1・2回目はオンライン、3回目が対面となったことから、3回目には実験を組み入れる形で授業を構成。「オンラインと対面の組み合わせという条件の中でできる限りの工夫をしました」と、自らのチャレンジを振り返ってくれました。

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 このような形で、実習生たちは通常の教育実習では得られない貴重な体験をしたといえそうです。実際、こんな状況だからこそ良く見える教師の姿がある、と石井先生は語ります。
 それは、たとえばホームルームが終わったあと、オンラインの部屋を開いたままにして、一部の生徒と継続的にやりとりをする姿や、提出物を良く読み込んで見えないながらも生徒の状態を把握しようとする姿。教師が普段から自然と行っているこうした幅広いフォローは、通常の授業やホームルームではその姿に溶け込んでいて見えづらいこともあります。一方、今回のようにオン/オフがはっきりと分かれている状況だと、ぐっと焦点化されることになります。
 また、教師同士が率直に学びあう姿にも触れることができた、と仲田さんは振り返ります。「デバイスの利用に慣れている先生もいれば、そうでない先生もいる中で、オンライン授業をどう進めるかについて、年代を超えて相談しあっていた。新しいことをやっていく上での先生たちのチームワーク、『チーム学校』の姿が感じられました」(仲田さん)。

 石井先生は、「来年4月に教職につく学生のみなさんには、あと半年間、高校だけに限らずいろんな実践に触れてほしい」と語ります。さらに、今回の実習生たちの姿を踏まえ、「今の学生たちは、大学で自らオンライン授業を体験している分、学校現場のデジタル化に対しても砂のように適応力がある。各学校でデジタル活用を引っ張っていく存在になってくれるのではないかと期待している」とエールを送りました。
 仲田さんも「まさに、やってみないとわからないことばかりで、とことんチャレンジしていくことが重要と感じた。こんな難しい状況で実習を受けいれてくださった水戸二高の先生方に本当に感謝したいし、オンラインと対面の両方の授業ができたというこの貴重な体験をしっかり活かしたい」と語ってくれました。

 水戸二高の皆様、ありがとうございました。そして実習生のみなさん、お疲れさまでした!素敵な教師になってくださいね。

(企画・構成:茨城大学広報室)