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3人の起業家からのメッセージ「まずはやってみよう」
―「茨城大学アントレプレナーシップ教育プログラム」キックオフシンポ

 今年10月から始まる「茨城大学アントレプレナーシップ教育プログラム」。本格スタートを前に、まずは世界や地域を舞台に活躍するアントレプレナーの方々の貴重な話を聞いてみよう―ということで、7月31日にキックオフ・シンポジウムが開かれ、約200人(そのうち約半分は1年生!)から申込があり、それぞれ会場や動画配信で参加しました。
 滞在先の上海からオンラインで登壇したC Channel株式会社代表取締役社長・元LINE株式会社代表取締役社長の森川亮さんの、「今度は中国の歴史を変えるようなことをやってみたい!」というスケールの大きなビジョンにびゅんびゅんと刺激を受けつつ、その後の茨城県内で活躍する3人のアントレプレナーによるパネルトークでは、より身近でリアルな形で「アントレプレナーシップ」を捉えることができました。

 シンポジウム後半のパネルトークでパネリストを務めたのは、以下の3人です(進行:武田直樹・社会連携センター講師)。

  • 堀下 恭平 さん:認定NPO法人グリーンバード つくばチーム創設者/株式会社しびっくぱわー代表取締役社長
    熊本県出身。筑波大学在学中に大学生たちが集まるカフェを起業したことをきっかけに、イベント企画や自治体のコンサルなどの事業を展開。すべての人のチャレンジを応援するべく、サードプレイスの経営やイベント事業、起業支援などを行っている。
  • 三浦 綾佳 さん株式会社ドロップ代表取締役
    広島県出身。アパレル業、広告代理店で勤めたあと、茨城へ移住し「ドロップファーム」を開業。生産から販売・ブランディングまでワンストップで手がける農業ビジネスをスタートし、出産を機に25歳で代表取締役に就任した。
  • 三ツ堀 裕太 さん株式会社ユニキャスト代表取締役社長
    茨城県神栖市出身。小さい頃からエンジニアを目指し、2005年、茨城大学大学院理工学研究科在学中に起業。現在、ロボット事業の他、学生向けのシェアハウスの運営なども手がける。2019年にはシリコンバレーにUnicast Robotics Inc.も設立した。

 笑いあり、しみじみとした共感ありの充実したパネルトークを振り返ります。

みんなが聞きたい(?)「失敗」の話

 今回のシンポジウムの参加申込にあわせてパネリストへの質問を募集。一番多かったのは、「これまでの大きな失敗は?それをどう乗り越えた?」「苦労したことは?」という質問だったようです。

 行政相手の仕事からスタートした堀下さんにとっての当初の苦労は「資金繰り」。特にコンサルタントの仕事は、すべての事業が終わって初めて「納品」となって料金が支払われるので、手元の資金をどうやってショートさせずに活動を行うかは文字通り死活問題というわけです。

entrekickoff2.jpg堀下恭平さん

 そんなひやひや感が共有されたフロアを前に、3人の中で一番年上の三ツ堀さんは、「どうしてみなさん、失敗したことを聞きたがるんでしょうね。宝くじを買うときに当たったらどうしようと考える人はいても、外れたらどうしようと考える人はいないと思うのですが...」とニヤリ。その上で、「苦労したことは、全部」と明かしつつ、「とはいえ、やってしまった失敗よりも、やらなかったことで『失敗だった』と思うことが多いです」と話しました。
 「やった失敗」よりも「やらなかった失敗」が気になる―それは、数々の失敗を懸命に乗り越え続ける中で得られる感覚なのかも知れません。三浦さんの「資金繰り、土地調達、みんな本当に大変でしたけれど、それを乗り越えて実績ができると、その先にはワクワクが待っています」という言葉も、そういう側面をポジティブに表していました。

アイデアはどこから?

 3人ともアイデアを形にし、ビジネスとして展開しているわけですが、そのアイデアはどこから生まれるのでしょう。

 3人に共通していたのが、アイデアが急に下りてくる...ということではなく、自分が行く場所、参加するイベントなどの場で、いつもいろんなものを見て、考えている、ということでした。「ホールのようなところへ行けば、この場所なら何人入ればひとりあたりいくらで......みたいなことをぐるぐる考えていって、はまったときに、よし、これをやるか、という感じ」(堀下さん)、「いろんなものを見る。私の場合はターゲットが明確なので、その人が行っている場所、見ているものを見て気づかされることが多いです」(三浦さん)、「いつも妄想しています」(三ツ堀さん)。

entrekickoff3.jpg三浦綾佳さん

 コーディネーターの武田講師が思わず「まさに童心。純粋なんですね」とつぶやいたように、「自分は斬新なアイデアが浮かばない」と嘆くよりも、普段から観察し、考える・妄想する癖をつけるという、新鮮な目と好奇心にこそ、アイデアの源泉があるのかも知れません。

まずはやってみる

 2つめに多かった質問が、「経営に携わりたいのだが、まずどういうことを勉強しておけば良いか」というもの。これも3人の答えは一致しました。「まずはやってみる」。

「法務局に行って25万円払えば株式会社が作れるし、6万円払えば合同会社が作れる。ローリスクで始められる事業であれば、7万円の法人税が払えれば良い。それぐらいならバイトで稼げるかも知れない」と語ったのは堀下さん。「やってみた上で、真に必要になったら、大学の授業も『こんなことまで教えてもらえるのか!』と身に入る。そして僕たち経営者も、『会社を作りたい』という相談よりも、『会社を作ったんだけどどうすれば良いか』という相談の方が、俄然、本気で対応できます」というアドバイスには、リアリティがありました。

 また、三ツ堀さんの次のコメントも示唆に富んでいました。

「始める前から深掘りするというより、必要になったら深掘りする。ひたすら深めれば事業ができるというわけでもなくて、僕の場合も、自分だけじゃ何もできないと気づいてから会社が成長し始めました。『これを勉強してからじゃなきゃ起業できないのではないか』という考えにならない方が良いと思います」。

entrekickoff4.jpg三ツ堀裕太さん

モチベーションの保ち方

 続いて会場からの質疑。最初に手を挙げてくれたのは、1年生の学生です。「茨大生はマジメと言われているし、自分もリスクを恐れてしまいます。エネルギー、モチベーションをどう継続すれば良いのでしょうか」という質問を投げかけました。

 これに対して、「『継続しなければ』というカルチャーは、日本の特徴かも知れない」と口火を切った三ツ堀さんの答えは、学生にとってやや意外なものだったかも知れません。「ダメだと判断したならすぱっとやめて次に進めばいいので、始める前から最後までやり遂げなきゃいけないなんて思わなくてもいい」と助言。一方で、「ただ、どんな難しい状況でも、そういう大変なことを楽しむマインドは大事」というメッセージも三ツ堀さんらしいといえます。

 三浦さんは、「鈍感力が大事。何も考えずに飛び込むことがポイント。ちなみに私のモチベーションの保ち方は、ハードワークのあとにわが家のビーグル犬をわしゃわしゃやることです」とコメント。それに対して堀下さんも、「ビーグル犬以外ほぼ同じ」と賛同し、「『続けなくては』と思っているとしたら、それ自体を取っ払った方が良い。一見続いているものも実は変化を続けている。楽しくなければやめてしまえばいい。まずは始めてみて自分でどう感じるかを考えてみてほしい。違うと思ったら全力で逃げればいい、変えればいい」と熱っぽく語りました。

entrekickoff5.jpg

学生のみなさんへのメッセージ

 最後に、パネリストのみなさんから、アントレプレナーシップに興味を持ち始めている学生のみなさんへメッセージ。

 まずは堀下さん。

「アントレプレナーシップは起業するために必要な能力ではなくて、社会で生きていく上で必要な素養だし、本や授業だけでは学べず、能動的な自分の行動からしか学べない。日々何かに挑戦し、ワクワクして進んでほしいです」

 続いて三浦さん。

「(アントレプレナーシップ教育プログラムについて)私自身も他の大学のカリキュラム策定に関わったりしていますが、それらは社会人がメインの学部。それを学部生のみなさんの年代で、なおかつどの学部でも受講できるというのは羨ましいし、自分が学生だったら絶対に受講していると思います。きっと人生観が変わります」

 最後に三ツ堀さん。

「アントレプレナー、スタートアップ、ベンチャーなど、難しい世界に聞こえるかも知れないけれど、今日のメンバーを見てわかるように、遊びなのか仕事なのかわからないし、学生はこうで、社会人はこう...ということではなく、連続性、グラデーションがある。身構える必要はないので、アントレプレナーシップというのを当たり前の教養のように学んでくれると嬉しいです」

 パネリストのみなさんには、今後も講習や実習などでもお世話になります。学生のみなさん、ぜひチャレンジを!