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茨城大学の研究・産学官連携の現状と展望
―金野満副学長に聞く

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 茨城大学では、昨年度(2020年度)の外部資金獲得額が過去最高に達しました。2018年度の研究・産学官連携機構(iRIC)の設置以降、全学的な研究マネジメント体制の確立が進み、組織対組織の連携をベースとした共同研究も進んでいます。
 一方、地域産業の疲弊や気候変動、カーボン・ニュートラルなどのグローバル規模の課題を解決していくための、大学としての研究基盤の強化はますます重要になってきています。
 本学の研究・産学官連携の現状と展望について、iRIC機構長も務める金野 満 副学長に聞きました。

―本学の産学官連携についての基本的な姿勢や特に重視している点を教えてください。

金野「茨城大学は地方国立大学として、地域の社会、産業界にいかに貢献できるかということが重要です。地域の多様な企業等と連携しながら、茨城大学のプレゼンスを地域の中で上げていくということがひとつです。
 地域という面では、茨城大学は、東京を除く関東地方の大学の中で、県内企業等との共同研究数が常にトップレベルを誇っています。そこはしっかり保っていきたいですね。
 ふたつめは、地域の大学とはいえ、やはり国立大学ですから、世界を見て勝負していくという面が必要です。地域と世界、その両面をおいかけていくというのが基本姿勢です」

―まずは地域への貢献ということで、茨城県の産業構造の特徴を踏まえると、本学としてどのようなことに重点的に取り組めるでしょうか。

金野「茨城は恵まれた地域だと思っています。特徴としては、まず、農業。首都圏に接しながら農業が盛んな地域であって、茨城大学としても農学部の役割は大きいと思っています。
 一方、北は工業ですよね。ただ、ここは産業転換が加速度的に進んでいて、世界の大きなトレンドとリンクする形で、工業の拠点が茨城の地を離れようとしています。人口減少という深刻な実態がありますから、できれば、茨城県の北部を工業の地域としてもう一度立て直したい、と強く思っています。従来の典型的な工業である必要はありません。SDGsやカーボン・ニュートラルといった、これからの持続可能な社会の実現に貢献するようなモデルケースとなる工業を、この地で立て直していく、そこで本学が貢献できたら良いなと思っています」

―県北地域の「工業」での復興。その兆しのようなものはありますか。

金野「兆しといいますか、同じような志を持った方々との連携ということで、本学の重要なステイクホルダのひとつである日立製作所と、県北地域をどうしていくかを考えるプロジェクトを去年立ち上げました。現在、3つのチームで活発な活動を始めています。地域の良さや歴史、背景をしっかり分析した上で、SDGsや持続可能な社会の実現に向けてどうあるべきかという提言が、人文系の先生方の取り組みを中心にまずは作られてきています。今後はこれを、他の大学の方や自治体の方も入った動きにしていけないかと考えています。
 それからテクノ系では、防災や安心安全のまちづくり、さらには将来のエネルギーとして、水素の活用についての研究が進んでおり、うまくいき始めているところです。
 さらに、日立製作所といえば、その技術のルーツともいえるのが電気モータですね。カーボン・ニュートラルや宇宙産業にも貢献できるような軽量超小型超効率モータの開発を進めていまして、これには中小企業、支援機関、茨城県も一緒になって取り組んでいます」

Konno2.jpg手の平に載るサイズの1kW出力モータ

―工業地域といえば、県北だけではなく、鹿島臨海もあります。鉄鋼の高炉廃止のニュースは衝撃を与えました。

金野「茨城県としては、水素の基地にしていこうとしていますね。水素が本格的に輸入されるようになれば、東京との近さという点でもポテンシャルは高いと思っていますが、水素自体が基盤的なエネルギーとしてどこまで化けていくかは未知数です。
 あるいは原子力をどうするか、ということも含めて、地域としてのエネルギー戦略については今後数年にわたる議論が必要となるでしょう。茨城県でのカーボン・ニュートラルやグリーン・イノベーションについての会議には、私たちも一緒に入っていき、しっかりとタッグを組んでいければと思います」

研究・産学官連携機構(iRIC)を立ち上げ、URAやコーディネーターといった専門職も大きな役割を果たしています。本学の研究推進体制の現状をどう受け止めていますか。

金野「iRICが立ち上がってからの動きは、スムーズだと思っています。かけたコストに対するリターンは十分に出ているのではないでしょうか。いろんなバックグラウンドをもったURA(研究支援高度専門職)などのスタッフがうまく機能していると思います。
 研究マネジメント体制の確立にはまだ課題もありますが、教員のマインドは変わってきたと感じます」

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―それは実感としてありますか。

金野「あります。第二期(中期目標期間)から第三期(中期目標期間)の前半にかけては、地方貢献に軸足を置く中で、研究のパフォーマンス自体は少し落ちたところがありましたが、それが明らかに回復基調にあります。外部資金についても、このままでは思うような研究ができなくなるという意識が高まり、その危機意識が外部資金の獲得につながっていると思います。去年は過去最高の外部資金になりました」

―さらに今年4月には茨城県経営者協会と、共同研究推進のための連携協定を締結しました。学内のURAやコーディネーターだけでなく、学外のハブとなる存在と有機的につながっていく中で、より細かな社会ニーズと本学のシーズを結びつけることが期待できます。こうした取り組みのねらいと今後の展開の構想は?

金野「われわれは地域とつながっている、貢献していると思っていましたが、一方で地域の方々からも同じように見ていただいていたかについては疑問があります。まだ身近でない部分があるのではないでしょうか。そこをもっと身近な存在、頼りにしてもらえる存在になりたいな、と。
 茨城県経営者協会の会員企業の方々は、社会のさまざまな課題の本当の当事者ですよね。今回そうした方々と直に話ができる場ができたというのは、本当にありがたいです」

konno4.jpg茨城県経営者協会との連携協定締結式の様子

―そうした場に教員も参加することで、新たなアイデア、有意義な研究テーマも出てくるということですよね。

金野「もうひとつは、これまで『共同研究』というと理工系というイメージが強かったのですが、今回直接話をする中で、人文系や教育系の先生の研究へのニーズが高いうことがわかったということです。茨城県経営者協会とスタートした「共同研究創発プロジェクト『Joint結(ゆい)』」のキックオフイベントには、人文社会科学部・教育学部からも多くの先生に参加していただけたんです。それが大学としてはとても大きいと思っています。
 文理融合というんですけど、この重要性が改めてわかってきたということです。それをいかに大学の総合力を活かして形にしていくか、ぜひ進めていきたいと思いますね」

―一方、国は大学ファンドや大学債といった政策や規制緩和を目まぐるしく展開しています。国の政策の状況をどう見ますか。

金野「私個人としては、今の国のやり方では日本はダメになると思っています。選択と集中で進んでいますが、あまりに集中させすぎではないか、と。東大、京大、東北大といった旧帝大などの限られた大学だけで良い成果が出ても、日本全体の科学技術は発展しないのではないか。そうした大学による真のイノベーション技術の開発は重要ですが、一方で私たち大学は、それを社会に浸透させていくための人材を育てていくことが求められており、それこそが、戦後に地方国立大学ができたときからのミッションですよね。その機能が弱まっている、あまりに選択集中させすぎて、技術を社会へ浸透させていく人の層が薄くなってきているのではないかと。市民としてもそうですし、会社でいえば、中堅として技術分野を担っていく層です。この点が私には心配です」

―その点では、地方国立大においてグローバルで勝負できる研究をすることが地域貢献にもなる、ということですね。

金野「まさにそのとおりです。都市にいるか地方にいるかはあまり関係ない。地方の企業も世界を見て商売することになるんですよね」

―グローバルな課題にも取り組んでいくという姿勢を含め、読んでいる方へメッセージをお願いします。

金野「たとえば気候変動に代表されるような、環境に関する研究については、茨城大学が全国の中でも大きな実績のある大学です。そこは伸ばしていきたいですし、ぜひ若い研究者、学生のみなさんもどんどん参加してほしいです。カーボン・ニュートラルについても大学全体の重点分野としてやっていくことにしていますから、気候変動の適応策、緩和策という両翼で貪欲にやっていきたいと思います。企業のみなさんにも、ぜひ一緒に世界を目指しましょう、と呼びかけたいです」

(取材・構成:茨城大学広報室)