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茨城大学教育学部美術科卒業・修了研究展、開幕
―「その人のゴールを見たい一心で」

 茨城大学教育学部美術選修・大学院教育学研究科美術専修の卒業研究・修了研究の作品等を展示する展覧会が、水戸市のザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)で開かれています(3月15日まで)。新型コロナウイルス感染症の影響でキャンパスでの制作活動も限られましたが、最終的にはそれぞれの個性が発揮された作品が仕上がりました。

 はじめに話を聞いたのは、今回の展覧会で広報を担当している4年生の菊池周さん。ポスターやパンフレットのデザインも手がけました。

―キャンパスで思うように制作ができないなど大変な1年でしたね。
菊池「そうですね。特に絵画や彫刻の大きな作品は自宅では制作できず、卒展も含めて見通しが立たなかったので...。ただ、キャンパスに人が少ないことで制作に打ち込めた面もありました」

教育学部美術科卒業・修了研究展1展覧会の広報を担当している菊池周さん

―今年の特徴は?
菊池「僕らの学年は、良くも悪くも...かもしれませんが、お互いとても仲が良くて、たくさんコミュニケーションをしながら、それぞれの真面目さ、集中力が発揮された作品ができたと思います」

―お互いの作品について批評しあったり、作品論を議論したりとか?
菊池「はい。制作の途中を見てここの色がいいねとか、こうしたらいいんじゃない、とか。ゼミがどこかに関係なく話し合って、各々の作品を批評していたのは、終盤のすごくいい傾向だったんじゃないかと思います」

―そういうコミュニケーションの影響がそれぞれの作品からも感じられますか?
菊池「そうですね。影響は出ているんじゃないでしょうか。それでいて、個人が描きたいものを描く、作りたいものも作る、ということも成り立っている。4年間一緒にいてその人のことも良くわかっているから、シンプルにその人の"ゴール"を見たい、という一心でみんながやっていたと思いますね」

 菊池さん自身は彫刻作品を制作。芦野石という、複雑な表面をもった軟らかめの石を削り、人体をモチーフにした「あなたにも」「わたしにも」という対となる作品を仕上げました。

教育学部美術科卒業・修了研究展2手前が「わたしにも」、奥が「あなたにも」という作品

―最初から対のイメージで作り始めたのですか?
菊池「いえ、もともとは『あなたにも』という作品に取り組んでいたんです。思うままに削っていって、それが何に見えるかというところから考えていって、自分の中の人への関心につないでいった感じです。人が生物学的な性別に関係なくもっている女性性をモチーフにしています。それでこの作品ができたら、指導教員の島剛先生から『もう一個作ってみないか』と言われて、急ピッチでもう一個作ったんです」

―それが「わたしにも」の方ですね。その点では菊池さんの開放された気持ちも感じます。全体のフォルムがすごくいいですよね。
菊池「今度はもっと計画的にやってみようと思って、最初にスケッチをしてできた作品なんです」

―脚にあたる部分の切り方、残し方が絶妙ですが、最初からこの形でいこうと?
菊池「いえ、スケッチの段階ではこっちの脚もあったんですよ。でも、削っていくうちにどうしてもひびが入ってきて、『もしかしてこの石はこの部分が欲しくないのかな』と思い、臨機応変に対応していった感じです」

 続いては絵画。ギャラリーに並ぶ油画の作品はどれもテーマや世界観が確立している印象を受けます。高校野球を題材とした3つの大きな作品について、作者の今泉倫さんに聞きました。

教育学部美術科卒業・修了研究展3高校野球をモチーフにした油画を制作した今泉さん

―高校野球という題材はずっと描いてきたんですか?
今泉「そうですね。自分が高校生のときに学校応援で見に行ってから高校野球が好きになりました。大学に入ってから、自分が本当に描きたいものって何だろうと迷った時期があって、『自分は高校野球が好きなんだから描いてみようかな』と思って、描き始めた感じです」

―何枚も描いていく中で発見したことはありますか?
今泉「テレビや新聞で見せる見せ場があるじゃないですか、投げた、打ったとか。それよりは、見ようとしなければ見えない場面が自分は好きなんだな、と。駆け出したときの表情とか、助け合ったりとか信頼とか友情とか――ちょっと美化しているところもあるかも知れませんが――純粋な爽やかさを感じるな、と思ったのでそういう表現方法を研究してきました」

―日本画っぽいテイスト。これは今泉さんの持ち味?それとも高校野球という題材にあわせたもの?
今泉「笠間高校の美術科出身なんですが、そこで油絵に進むか日本画に進むかという選択があって、私は平面的で、線で描写する日本画の表現が好きで選びました。画材はあくまでも手段であって、油絵だから厚塗りで、日本画だから日本画っぽくではなくて、油絵であっても自分の世界観で描けたらなと思って描いています」

教育学部美術科卒業・修了研究展4

―球児たちの坊主頭や風合いから、仏画を見ているような、全体的な光を感じます。高校野球ひとりひとりのキャラクターを描こうとしているわけではなく、関係性や世界を描こうとしているのがすごく伝わりますよ。
今泉「そう捉えていただけるのは嬉しいです。先生方からいろいろ言葉をいただく中で、もっとこうしたらいいのかなと迷ってしまった時期があったんですけど、誰のために描くのかといえば、結局自分のため。そう気持ちを切り替えたら手が動くようになりました」

―そういう、制作を進める上での気持ちの持ちようも大学で学べたんですね。

 ギャラリーに入って右回りに歩くと、デザインのゼミによるさまざまな形式の作品が目に入り、この展覧会のバラエティの豊かさが感じられます。NINTENDO SWITCHのソフトのポスターがあるぞ、と思って目を凝らして見てみたら、「NIMTENDO SMITCH」と書いてありました。架空のゲームを構想して、そのポスターや設定資料集(キャラクターの創作メモなどをまとめたファン向けの資料)を作ってみたという作品、作者は長谷川果苗さん(4年)です。

教育学部美術科卒業・修了研究展5

―こういうものを作ってみたいと最初から思っていたんですか?
長谷川「最初はポスターを作って、そのうち設定資料集も作りたくなってどんどん作っていきました。私がもともと本づくりをしてみたかったというのと、ゲームの世界観を伝える設定資料集が好きだったということが合わさって、こういう作品にしました」

―普通はゲームの作家さんと、設定資料集の編集・デザインをする人って別ですよね。それをひとりでやるというのはどんな体験でしたか?
長谷川「一言でいえば大変でした(笑)ただ、実際の現場では、作家さんと編集の方とで意図がずれることもありますけど、ひとりでやれば好きにできます。どこに何を置いたら効果的に伝わるのか、そういうことを考えたので勉強になりました」

教育学部美術科卒業・修了研究展6架空のゲームの構想メモが記された設定資料集

―ゲームの世界観を全部組み立ててからレイアウトを作るんですか?レイアウトも先行して作って、必要な世界を考えるんですか?
長谷川「先に世界観を作ってから編集ですね」

―つまり、設定資料集に出てきていない設定もあるということ?
長谷川「そうですね。載せられなかったことがいっぱいあります」

―すごいですね。せっかくならゲームも作りたいですよね。
長谷川「プログラムの技術があったら作っていたと思います。そのぐらい、シナリオは作り込みました」

教育学部美術科卒業・修了研究展7

―今回の制作を、これからのキャリアにどう活かせそうですか?
長谷川「卒業したら教員になるのですが、レイアウトの技術を学んだので、書類とか展示物を作るときに、よりわかりやすく作れるのではないかと思っています。あとは、授業以外の場でも子どもたちに絵の描き方を伝えたいです」

―ゲームに関わる仕事はしたいと思わないですか?
長谷川「どちらかというと、子どもたちと関わるときに、ゲームが間をとりもってくれる存在になっています。......でも、ゲームの仕事もやってみたいですね」

 その他、修士論文の展示や、屋外の彫刻展示も。学生たちが互いに刺激しあい、また自分の「ゴール」に向き合う中で生まれた作品の数々を、みなさんもぜひご覧ください。

教育学部美術科卒業・修了研究展8

教育学部美術科卒業・修了研究展9

茨城大学教育学部美術科 卒業・修了研究展

  • 日時:202139日(火)~315日(月)9:0017:00(最終日は正午まで)
  • 会場:ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)

>>>詳しいイベント情報はこちら

教育学部美術科卒業・修了研究展

(取材・構成:茨城大学広報室)