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地域の方々から学生たちへの食料支援活動に300人
―「人間関係」の場がそこに

 たまねぎ、白菜、カップ麺、さらには洗剤やトイレットペーパーなどの日用品までがうず高く積まれた空間を、学生たちが練り歩き、それらをバッグいっぱいに詰めていく。「遠慮しないでもっていって!がんばって!」という呼びかけと「本当にありがたい」という感謝の声がこだまする。地域の方々による学生たちへの食料・日用品支援の現場を訪れた。

 2021年1月30日(土)午後、本学水戸キャンパスでは大学入学共通テストの第二日程の試験が行われていたが、その目の前の歩道では、学生たちが何十メートルにも及ぶ長い行列をなしていた。「最後尾」というプレートを手にしたスタッフなどが、「あちらで検温をお願いします!」などと声をかける。列の先では、袋に詰めた食料品セットを順に渡すブースがあって、その先にはさらに野菜や日用品の箱が並んでいる。

食糧支援プロジェクト1

 この場所での学生向けの食料・日用品支援活動を企画したのが、「学生食料支援プロジェクト」のみなさんだ。昨年12月に第一回の支援活動を行い、そのときは100人分の食料セットを用意したのに対し、約200人の学生が集まったという。その後、報道などを通じて活動の情報が広がり、茨城県外からも含めて、食料品・日用品の提供がさらに増えた。「とにかく未来ある若い人たちを助けたい、という想いをもっている方がこんなにもたくさんいるんです」と、プロジェクト代表の岩清水昌子さんは話す。

食糧支援プロジェクト2プロジェクト代表の岩清水さん

 対面活動が減り、家計もひっ迫した学生たちが、経済的な不安と孤独を感じている――そうした姿に心を痛めた岩清水さんが、身近なつながりから声をかけていって輪が広がり、このプロジェクトが生まれた。前回の支援で、学生のひとりから思わず漏れた「食べるものがあって良かった」という安堵のつぶやきを聞き、心に染み入った。

 提供された食料は多様だ。「これ、じゃがいもですよね?」「いえ、サトイモよ」といった、学生とボランティアの方との会話が微笑ましい。どのように調理すればおいしいかを、人生の大先輩から教わっている学生もいる。これでもかと、箱にぎゅうぎゅうに詰まった野菜たちが、県外から来て一人暮らしをしている学生たちに、農業大国・茨城の魅力を雄弁に語っている。

食糧支援プロジェクト3

 炊事に慣れない学生には、カップ麺やレトルト食品が嬉しい。申し訳なさそうにカップ麺1個をそろりと袋に入れる学生に、「遠慮しないで!いくつでも持って行っていいんだから!」と、ボランティアの方からの威勢の良い声がかかる。
 清掃用具などの日用品も嬉しい。少し離れたところに、さらにいくつか段ボールがあったので覗いてみると、生理用品だった。女性向けの配慮も行き届いている。

食糧支援プロジェクト4

 今回は前回の倍以上の240人分のセットを用意した。さらにそのセットは受け取れなくても、前述のように野菜などの食品や日用品がわんさとある。行列はなかなか途切れず、後で聞いたところによると、今回は約300人が訪れたという。
 パンパンに膨らんだバッグを両手に提げた工学部の1年生たちのグループに話を聞いたところ、「アルバイトの募集がない」「何回か選考に落ちた挙句、ようやく入れたと思ったらまもなく閉店になってしまった」といった厳しい状況が窺えた。アルバイトがなく、月の生活費は家賃含めて8万円。ギリギリの生活。支援に対しては、「本当にありがたい、とてもありがたい」と強調していた。

食糧支援プロジェクト5

 中身が空になった段ボールを手際よく片付けるスタッフの中に、学生の姿があった。教育学部4年の阪井一仁さんだ。支援場所の提供をしているみかど商会の代表の安斎栄さんとのつながりで、今回の活動に加わることになった。自身は実家暮らしなので、幸い、食に困るということはなかったが、「大学内では、『食べるものに困っている』というような話を直接聞くことはあまりないけれど、こうやってたくさんの学生が集まっているのを見ると、多くの人が他の人にはあまり言わないけれど実際に困っていたんだなって思います」と語る。一方で印象的だったのが、こうして集まった学生の表情が、大学内とは違ってとても明るく見えることだという。

食糧支援プロジェクト6支援スタッフを務めた教育学部の阪井さん

「オンラインだけの生活で、サークルも充分にできない。そういう中で、誰かに何かしてもらう、何かしてあげるという人間関係に触れる場がなかったということ。食料や日用品の支援という直接的なサポートもさながら、人を感じられる場、ちょっと喋れる場があるというのも大きいと感じます」(阪井さん)

 今回のプロジェクトを始め、さまざまな団体や個人がこの1年間、学生たちの生活をサポートしてくださった。それは、この地域に住む学生たちの大きな支えとなり、大学にとっても本当にありがたいことだ。
 一方で岩清水さんは、「コロナ禍の中で、困っている人たちに何かをしたいという方は多い。大学が呼びかければ、さらに多くの支援が集まり、学生たちに届けられるはず」「食料・日用品の提供活動を、大学施設の中でできれば、多くの学生にとって、より参加しやすくなるのでは」と語る。また、提供物資が増えれば、電話での受付、一時ストック場所への搬入、情報の整理、お礼のメッセージ送付などの作業も手に負いきれなくなってくる。今回の支援にあたって学生対象に行ったアンケートでは、「次回は自分たちも支援の側に回りたい」という声も少なからずあったという。そういう声を大事にくみ取り、「誰かに何かしてもらう、何かしてあげるという人間関係に触れる場」を学生・教職員が一緒になって作れればと思うし、大学としても、学費免除や奨学金制度、対面機会の拡充という直接的な支援とともに、そういう場づくりも積極的に支えていきたい。

(取材・構成:茨城大学広報室)