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買い物を通じた高齢者の見守り態勢を学生たちの手でつくりたい
―茨城町の地元のつながりから生まれたvegecommuプロジェクト

「えっ!こんなにたくさん!?」。11月12日(木)、水戸市のあるクリニック。2人の大学生から、白菜やほうれん草などの野菜がぎっしり詰まった袋を受け取った女性は、目を丸くして驚いていた。2人は茨城大学人文社会科学部3年の福間しおんさんと、上智大学総合グローバル学部3年(休学中)の綿引麻衣さん。どちらも茨城町出身で中学時代の同級生だ。今年の夏から、LINEで注文を受けて茨城町の野菜を届けるボランティアを始めた。11月29日(日)にはイベントも企画している。その背景には、食を通じて高齢者の孤立を解決したいという思いがある。

 2人は毎週木曜日、朝7時30分に、茨城町のイオンタウン水戸南に「出勤」している。町の人たちが楽しみにしている「木曜市」の仕込みをするためだ。赤いエプロンの胸元には、「茨城町生活改善クラブ連合会」という刺繍が見える。

 木曜市を足かけ20年にわたって開いている生活改善クラブ連合会に、それまで直接的な縁がなかった2人がLINEで注文を受け付け配達する仕組みを提案したのは、今年の7月のことだった。「若い人が新しいことやるっていうんだから、そりゃあなんでも協力しますよ」と、前会長の安島せつ子さんはそのときのことを振り返る。

ベジコミュ2木曜市の準備中、笑顔を見せる福間さん(右)と綿引さん(左)

 上智大学の綿引さんはアフリカに関わる研究に取り組んでおり、今年度は休学してガーナへ行く予定だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、その計画は断念。前学期は茨城町の実家でオンライン授業を受ける日々を送っていた。しかし、活動への意欲が抑えられず、「地元でもできることがあるのではないか」と考え、もともとガーナでも取り組む予定だった「農業」に着目したコミュニティ支援を思い立ち、所属していたインカレの学生団体Bizjapanで新しいプロジェクトの発足を宣言した。プロジェクトは「vegecommu(ベジコミュ)」と名付けた。今年4月のことだ。

 とはいえ、その時点で具体的なアイデアが固まっていたわけではない。そこで綿引さんが相談したのが、地元の中学時代の同級生である福間さんだった。茨大生の福間さんも前学期は実家でのオンライン授業の毎日。その中で、少しでも体を動かした活動ができればと思い、初めて田植えを手伝った。「それで、あ、農業っていいな、と思っていたんです」という彼女は、中学時代からアクティブだった綿引さんの提案に賛同。それから議論を重ねてアイデアを出し合い、家族や近所の人たちとも会って話をする中で、おじいさんの家の隣に住んでいる方が家庭菜園の野菜を「木曜市」というところに卸していると知った。

 一人暮らしの高齢者が増えていたところにコロナ禍が襲い、高齢者の孤立は深刻化している。彼女たちのビジョンは、「高齢者の見守り態勢を、買い物をとおして作る」というもの。デジタルツールの利用にも長けている自分たち若者が関わり、茨城町の豊富な農産物の新しい流通・販売のチャネルを作り出し、その生産者と消費者の直接的・間接的なつながりを媒介することで、オンライン/オフラインを柔軟に行き来する新しい支えあいのコミュニティを生み出したい――

ベジコミュ3SNSに載せる野菜の写真を撮影中

 といっても、学生2人だけではできることも限られる。まずは仲間集めだ。最近メンバーに加わったのが、2人と同じ中学校の後輩である常磐大学1年生の増形すぐりさん。増形さんのおばあさんも家で作った野菜を木曜市に卸しているので、その出荷作業も兼ねて毎週木曜市を手伝うことになった。さらに福間さんは、自身が所属している人文社会科学部現代社会学科メディア文化メジャーの鈴木栄幸ゼミのメンバーにも相談。想いに共感してくれて、ゼミの活動として動画制作などに携わってくれることになった。

 今回のために新しく立ち上げたLINEのアカウントに、木曜日の朝になると注文が届く。品目の指定はできない。福間さんたちがその日のおすすめの野菜を袋いっぱいに詰めて、そのセットを1000円で販売する。福間さんたちの家族からじわりと口コミが広がり、現在は多い日で5件程度の注文があるそう。

ベジコミュ4この日用意した野菜セットの中身 種類も豊富でボリュームもいっぱいだ

 15時までは木曜市に来るお客さんの対応などをして、その後、野菜のセットを車に詰め込み、配達へ出発。配達先は茨城町や水戸市の個人宅、事業所などだ。その際、彼女たちは小さなメッセージカードを添えている。そこには生産者の想いが手書きで綴られている。こうした小さな取り組みが、食を通じた人と人のあたたかなつながりを育てていくのだ。

ベジコミュ5購入者にはメッセージカードが届けられる

 冒頭で紹介した、水戸市でクリニックを開いているご夫婦は、今回初めて注文。ずしりと重い袋を手に、「1000円でこんなにたくさん!スーパーだと荷物が重くなってしまってなかなかこんなに買えないから助かります」と満面の笑みを浮かべ、「これからもぜひ注文したいです」と話していた。

 とはいえ、限られた人数、しかもボランティアで野菜を届けられる軒数には限界がある。コミュニティづくり、といってもあまりに時間がかかってしまう。このLINE注文で茨城町の野菜の興味をもった人たちと生産者が、より触れ合える場も作れないか。そう考え、福間さんたちはBizjapanや茨城町内で出会った団体・個人の協力のもと、イベントを企画することにした。「Ibaraki Grandmas Market」と名付けたそのイベントは、11月29日(日)11時から、茨城町内の「しもはじ埴輪キャンプ場」で開催する。地元野菜マルシェ、それらの野菜を使った料理の提供、茨城町の伝統料理「つと豆腐」を作るワークショップ、クリスマスワッグワークショップ、和太鼓演奏と、盛りだくさんの内容だ。

ベジコミュ6木曜市での地元のお客さんとのコミュニケーションも楽しい

 福間さんと綿引さんは、今後の目標として、「学生だけで回せる見守りの仕組みをつくりたい」と語る。そのための地道な取り組みとして、毎週木曜市に参加し、そこに来たお客さんや生活改善クラブの方々と自然体で会話を交わしている姿が実に眩しく、その光は町の未来を照らしているようだった。

ベジコミュ7

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(取材・構成:茨城大学広報室)