1. ホーム
  2. NEWS
  3. 茨大陸上競技部、3年ぶりに箱根駅伝予選会出場決定―コロナ禍に負けず幸運引き寄せる

茨大陸上競技部、3年ぶりに箱根駅伝予選会出場決定
―コロナ禍に負けず幸運引き寄せる

 茨城大学陸上競技部の長距離ブロックの選手たちが、今年の箱根駅伝の予選会に出場することが決まりました。3年ぶりの快挙です。活動自粛や新入生へのアプローチがなかなかできない中で勝ち取った予選会出場。その道のりは平たんではなかったものの、最後はしっかりと幸運を引き寄せました。ケーズデンキスタジアム水戸で行われていた練習現場を訪れ、取材しました。

 東京箱根間往復大学駅伝競走、略して「箱根駅伝」。全国ではなく関東の大学の大会でありながら、それは日本の年始の風物詩として完全に定着している。多くの大学生ランナーの聖地である箱根駅伝だが、実は予選会に出場するのでさえ、ハードルは低くない。
 茨城大学の陸上競技部は2016年度に、10年ぶりに予選会出場を決めた。その翌年度も出場したが、一昨年度、昨年度は参加要件にあと一歩及ばず辛酸をなめた。そして2020年の今年、3年ぶりの出場が決まった。

track2.jpg

「正直、今年も厳しいと思っていました」と語るのは、陸上競技部の長距離ブロックのリーダーを務める金子暖慈さん。理学部の3年生。初めて臨む箱根の予選会となる。2年前、「なんとなく」入部した当初は「箱根」なんて意識していなかったが、程なく、前年に予選会に出場した先輩たちの強い想いに触れ、参加要件をめざして年中通して記録を追い求めるサイクルに足を踏み入れることになった。

 箱根駅伝の予選会は毎年10月に陸上自衛隊立川駐屯地周辺で行われる。出場するには、10000メートルを34分以内、という記録を10人以上のメンバーが達成していなければならない。昨年度は惜しくも9人どまりだった。「(タイムを)切れそうなメンバーは揃ってたんですけど、記録が出やすい冬とか春で切れなくて、せめてあとひとり夏の間に、と思ったけどダメでした。悔しかったです」と金子さん。

track3.jpg長距離ブロック長の金子さんがチームを引っ張る

 そして迎えた今年度。この「あと1人の壁」を突破するには夏に賭けるしかなかったが、活動自粛で体力は落ちてしまっており、厳しかった。あとは新入部員の活躍に期待したいが、新型コロナウイルス感染症によって大学は入構規制が敷かれ、新入生への勧誘も難しかった。

 しかし、その中でも、陸上の経験をもつ新入生たちが1人、2人と入部してきてくれた。そのうちのひとりが、教育学部1年の矢吹雅行さん(日立市出身)。高校時代は陸上部で、春は遠隔授業を受けながら「趣味程度で」走っていたが、そのうちひとりで走るのに飽きてきて、誰かと走りたくなった。そんな折、同じ遠隔授業を通じて仲良くなった同じ学部の友人が、陸上競技部を紹介してくれた。7月のことだった。

「誰かと練習できればいいな、という気持ちだったんですけどね」と矢吹さん。しかし、すぐに「上には、すごい上の人がいる」ということを知り、大学の部活が高校のそれに比べて広い世界であることを実感した。そして、「箱根」という山が突如面前にあらわれた。

 コロナ禍の影響で記録会がなかなか開催できなかったため、今年度の予選会には、特例で「5000メートルを1630秒以内」という条件が加わった。「その偶然を味方につけられた」(金子さん)。「特に1年生にとっては、10kmは暑さもあって厳しいと思いましたが、5kmならもしかしたらいけるかも知れない」。

 エントリー段階で、「あとひとりなので、協力をお願いします」と先輩に言われ、そのハンパない期待を背負って、矢吹さんは福島大学で行われた記録会に出場した。そして、見事その期待に応えてみせた。暦は9月になっていた。

track4.jpg1年生の矢吹さんの記録が予選会出場をもたらした

1630秒以内という条件に対し、矢吹さんの記録は?」と訊ねたところ、「これはちょっと恥ずかしいのですが...」と前置きした矢吹さんの答えは、耳を疑うものだった。

162997」。

 首の皮一枚、とはまさにこういうことをいうのだろう。
 もっとも、記録会でゴールしたあと、矢吹さんが手元の時計を確認したところでは、「16分31秒」だったという。それを聞いて「何だよ、それー」と肩を落とした先輩たちは、その少し後に公式記録を耳にし、今度は満面の笑みで「何だよ、それー」と矢吹さんの肩をたたき、讃えた。

track5.jpg

「せっかく出られるからには、自分が満足できる走り、攻められるところまで攻める走りをしたいです」と矢吹さん。金子さんも、「ハーフマラソンを走る機会はあまりないですし、私立や箱根に出ている選手は速いので、それを肌で感じながら、自分の実力がどれだけ通用するのかを噛みしめながらやっていきたいです」と意気込む。関東の数ある大学のうち、箱根駅伝の本番に出場できるのは、前大会でシード権を獲得した10チーム、予選会を通過した10チーム、そして予選会で良い記録を出した選手で構成される関東学生連合の1チームの合計21チーム。つまり、出場選手上位10人の合計タイムで争われる予選会では10位以内を目指さなければいけない。極めて厳しいハードルだ。

 強豪校はいずれも私立だが、国公立大学にも希望はある。昨年度、筑波大学が26年ぶりに予選会を突破したことが話題になった。顧問の渡邊將司准教授も、「同じ国立大学、しかも茨城県勢が出場したことは、学生たちにとって、『自分たちもがんばれば行けるかもしれない』と感じさせてくれましたね」と語る。

 練習環境が限られる中、近隣の競技場なども借りつつ、メンバー各々時間を見つけて走り込みをしている。それぞれが走った距離や練習内容は、メニュー表に記入して全員でシェアをしながら、モチベーションを保っている。あとは、活動自粛期間中の体力低下をどこまでリカバーできるか。「3、4年生が精神的にも競技的にも支柱になっていければ」と金子さん。チームプレイで、まずはいざ、立川へ!

(取材・構成:茨城大学広報室)

関連リンク