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「チバニアン」の地層から明らかになった
直近の地磁気逆転の全体像

 国立極地研究所の羽田特任研究員(現所属:産業技術総合研究所)、菅沼悠介准教授、茨城大学の岡田教授らの研究グループは、地質時代「チバニアン」の名前の由来となった千葉県市原市の地層の分析により、直近の地磁気逆転である松山-ブルン地磁気逆転では約2万年間にわたって地磁気が不安定であったことを示しました。本成果は、地磁気逆転メカニズムの解明につながると期待されます。

>>詳しくは国立極地研究所のホームページをご覧ください。

背景

 棒磁石のN極とS極のように、大きさが同じで符号が逆の磁荷が作る磁場を双極子磁場と呼び、現在の地球の磁場も概ね双極子磁場と見なすことができます。地球の双極子磁場の向きは過去に逆転を繰り返しており、直近の逆転は「松山-ブルン地磁気逆転」と呼ばれ、約77万年前に起こりました。地磁気は、地球内部の核の対流に起因するダイナモ作用によって生じますが、詳細な発生メカニズムや、地磁気逆転の仕組みは未だ解明されておらず、国内外の複数のグループがスーパーコンピューターを使ったダイナモシミュレーションの研究を展開しています。
 堆積岩や溶岩からなる地層は、それらが形成された当時の地磁気の情報(古地磁気)を記録しています。そのため、地層に記録されている古地磁気を調べることで、地磁気逆転の過程を知ることができます。詳細な古地磁気記録はダイナモシミュレーションの精度を向上させ、地磁気逆転の発生メカニズムの解明にも貢献できます。

図1千葉複合セクションの一部である養老川セクション上部図1 千葉複合セクションの一部である養老川セクション上部

 これまで、地質時代「チバニアン」の名称の由来となった地層「千葉複合セクション(千葉県市原市、図1)」の分析から、松山-ブルン地磁気逆転前後の地層での古地磁気方位や古地磁気強度の記録が報告されてきました。しかし、千葉複合セクションの一部の地層では未だ古地磁気分析が実施されていなかったことから、数万年にわたる松山-ブルン地磁気逆転の"全体像"は明らかになっていませんでした。

研究の内容と今後の展開

 そこで本研究では、千葉複合セクションの一部である養老田淵セクションと養老川セクション上位の地層を対象にして新たに古地磁気分析を行い(図2)、松山-ブルン地磁気逆転の連続的かつ詳細な古地磁気記録を得ました。そして、松山-ブルン境界の地層上の位置が、養老田淵セクションの白尾火山灰層の1.6m上位となる結果を得ました。

図2養老田淵セクションでのサンプリングの様子
図2: 養老田淵セクションでのサンプリングの様子

 この結果も含め、千葉複合セクションのほかの地層と田淵地区で掘削されたボーリングコアで確認された松山-ブルン境界の位置は互いによく一致しており、それらの平均年代値を77万2900年前(±5400年)と見積もりました。また、新しい古地磁気データとこれまでのデータと組み合わせることで、79万年前から75万年前まで、4万年間にわたる連続的な古地磁気方位と古地磁気強度の記録の全体像を構築しました。その結果、松山-ブルン地磁気逆転前後の少なくとも2万年間、双極子磁場以外の磁場成分(非双極子磁場)が双極子磁場よりも強くなっており、地磁気が不安定な状態であったことが分かりました(図3)。本成果は、ダイナモシミュレーションの基礎データとして地磁気逆転の発生メカニズムの解明につながると期待されます。
 今後、地層に含まれる海洋微生物や花粉の化石の種類や量を古地磁気分析と同じ時間分解能で解析することで、地磁気逆転が環境や生物に与える影響などを明らかにできると考えられます。

図3松山ブルン地磁気逆転前後の古地磁気記録
図3: 松山-ブルン地磁気逆転前後の古地磁気記録

論文情報

  • 掲載誌:Progress in Earth and Planetary Science
  • タイトル:A full sequence of the Matuyama-Brunhes geomagnetic reversal in the Chiba composite section, Central Japan
  • 著者:
    羽田 裕貴(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 平野地質研究グループ 産総研特別研究員/旧所属:国立極地研究所 地圏研究グループ 特任研究員)
    岡田 誠(茨城大学 理学部 教授)
    菅沼 悠介(国立極地研究所 地圏研究グループ 准教授/総合研究大学院大学 極域科学専攻 准教授)
    北村 天宏(茨城大学大学院理工学研究科 博士前期課程)
  • DOI:10.1186/s40645-020-00354-y
  • 公開日:2020年9月1日(ドイツ時間)

※本研究はJSPS科研費(JP16H04068、JP17H06321、JP19H00710)の助成を受けて実施されました。また、国立極地研究所のプロジェクト研究費(KP-7、KP301)、東京地学協会の調査・研究等助成金の支援を受けました。