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最低賃金はどうあるべき?
―人文社会科学部の学生たちが最低生計費試算調査に協力

 各都道府県が定める「最低賃金」では、労働者のどんな生活が想定されているのでしょうか。あるいは「ふつう」の生活をイメージした場合、実際にどのぐらいの生活費が必要なのでしょう。
 茨城県労働組合総連合(茨城労連)がこのほど、労働者へのアンケート及び市場価格調査をもとに、労働者がふつうに暮らすために必要な最低限の生計費を試算しました。全国各地の組織で順次取り組まれているこの調査ですが、茨城労連での調査では、人文社会科学部の長田華子准教授(アジア経済論)のゼミ生たち10人が協力し、729日には茨城労連のみなさんとともに記者会見にも臨みました。
 学生たちが感じたこととは―

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全国で取り組まれる最低生計費試算調査

 今回の調査は、「茨城県における最低生計費試算調査」というもの。同様の調査は、全国労働組合総連合(全労連)加盟の各地の地方組織が取り組んでおり、その結果をもとに各組織が最低賃金の引き上げを要求します。

 茨城県労働組合総連合(茨城労連)による調査は、今年1月から5月の期間に実施されました。アンケートは、生活実態調査(35問)と持ち物に関する調査(253問)で構成されており、その後、持ち物調査の結果に応じて実際に店舗などを訪問して市場価格調査を行い、ふつうに暮らすために必要な費用を算出します。

 今回、長田ゼミの学生たちは、1030代の若者(単身世帯)190人分のデータの整理・分析と市場価格調査に協力しました。この最低生計費調査に大学生が関わる例は全国で初めてということです。

調査結果―試算の月額は約25万円、時給換算で1500円程度

 まず、生活実態調査をもとに、生計費を計算するための「ふつうの暮らし」を具体的に想定しました。

  • 水戸市の茨城大学水戸キャンパス近辺のワンルームマンション・アパートに住み、家賃は35,000円。
  • 中古の軽自動車を持っており、大型家電は量販店で最低価格帯のものを購入。
  • 1ヵ月の食費は男性が約42,000円、女性が約33,000円。月2回、同僚や友人と会食を行う。
  • 休日は家にいることが多いが、時折ショッピングモールで映画・ショッピングを楽しみ、年2回ほど泊まりの旅行をする。

 この暮らしから、学生たちが取り組んだ市場価格調査の結果などを踏まえ、水戸市内で若者がふつうに一人暮らしをするために必要な生計費を計算すると、男性が月額252,987円、女性が月額251,124円(ともに税・社会保険料込み)となります。これは年額に換算すると約300万円、時給に換算すると男性=1,456円、女性=1,445円となるそうです。ただし、この時給は大型連休などが考慮されておらず、ワーク・ライフ・バランスを配慮した労働時間でさらに換算すると、男性が1,687円、女性が1,674円となるとのこと。

 これに対し、7月時点での茨城県の最低賃金は849円。茨城労連では、この賃金では「ワーキング・プア状態である」と指摘し、「最低賃金は全国一律で1,500円以上に引き上げなければならない」と主張しています。

nagatasemi2.jpg茨城労連による報告

記者会見で学生たちが語ったこと

 さて、この試算結果は、茨城労連が729日(水)に茨城県庁で開いた記者会見で発表しました。この記者会見には、調査に参加した長田ゼミの学生たちのうち3人が代表して参加。調査過程や結果を踏まえて感じたことを語りました。

 まず、限られた期間での市場価格調査は思いのほか大変だったようで、学生たちは「同じ品目に関する価格帯の幅が大きく、標準価格の決定が難しかった」などと振り返りました。

 そして、試算結果については、戸澤琴音さん(4年)は「この額で一人暮らしをするとなると、本当に最低限の生活すら危うい」、中橋彩乃さん(4年)は「ギリギリ生活できるお給料ではなく、若い世代が自分の未来に希望を持てるような生活を送るためには、やはり現状の最低賃金では低すぎると思います」とそれぞれ指摘しました。また、3年生の野口峻太郎さんは、都道府県間で賃金格差が発生している現状を踏まえ、「全国一律の最低賃金にすることは、若者の人口流出といった問題の解決にも一定の効果はあると思います」と述べました。

 今回、最低賃金の決定プロセスについても勉強した学生たち。新型コロナウイルス感染症の影響に関連し、事業者側の負担も踏まえて中央最低賃金審議会が最低賃金の大幅な引き上げに慎重である点について、野口さんは、「企業側の都合であり、賃金が低くて困窮している人々は配慮されていない」と厳しく指摘しました。そして中橋さんは、そうした最低賃金の決定のプロセスがもっとオープンであるべきとし、最低賃金審議会の傍聴の自由化などに取り組んでいる鳥取県の事例を挙げて、茨城県でもそうした仕組みを取り入れることを提言しました。

 記者会見を終え、戸澤さんは「私たちが学生の立場から調査をし、それに関して抱いた率直な感想を記者会見の場で伝えられてよかった。メディアを通して、特に私たちと同じ世代である若者にこの事実を知ってもらい、少しでも興味を持ってもらう事によって、最低賃金引き上げの第一歩になればよいと感じている」と感想を述べています。

nagatasemi3.jpg会見に参加した学生たち 一番奥が長田准教授