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茨大生が考案した茨城交通の路線バスツアー販売
―現地調査重ねて実現、コロナ禍に負けず活性化願う

 路線バスの旅といえばテレビでも人気の企画です。このほど茨城大学の学生たちが、水戸市や茨城交通との連携で、「御前山トレッキングコース」と「大洗ふらりバスの旅」という路線バスツアーの企画を開発。昨年度の「プロジェクト演習」という授業で企画を進めていたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で販売が延期に。学生たちは授業終了後も調整をつづけ、6月1日、ようやくお得なツアーチケットの販売に漕ぎつけました。プロジェクトメンバーは、海老根弘人さん、荒川祐太さん、匂阪浩聡さん、山形賢志さん(いずれも人文社会科学部3年)、伊藤玲美さん(理学部3年)の5人。今回は海老根さん、荒川さん、匂阪さんと、授業担当の鈴木敦・人文社会科学部教授にインタビューしました。

路線バスツアー1茨城交通の皆さんと 右から伊藤さん、荒川さん、匂阪さん、山形さん、海老根さん

―「プロジェクト演習」は、自治体や企業の担当者からさまざまな地域の課題についてレクチャーを受けて、その解決につながるプロジェクトを自分たちで考え、各機関と連携しながら1年かけて実現する授業ですね。今回はどんな課題だったのですか?
海老根「僕たちは水戸市交通政策課さんの「水戸市の公共交通を活性化させたい」という課題に取り組みました。その中で注目したのが、私たちの生活に身近な路線バスの活性化、その中でもこの授業で以前から関わりもあった茨城交通さんの利用を増やすことでした。水戸駅と茨大を結ぶバスは利用が多いのですが、人口が少ない山間地域などへ行くバスは、生活に必要な路線として国の支援を受けて維持されている状態です。まずはそうした路線の利用者を少しでも増やせればと思い、その中で交通政策課の須藤課長より、以前からつながりがあったという茨城交通さんの「路線バスの旅」の話を聞いて、学生の自分たちから新しくツアーを提案できればと思い至りました」

―対象地域はどのように選んでいったのですか?
海老根「まず茨城交通さんより、さきほども触れましたが、国からの地域間幹線系統の補助金というものを受けている路線の情報をいただきまして、その中から、沿線に魅力的なスポットがあり、ツアーが作れるものはどこだろう、と絞っていきました」

―ツアーコースはどのように作っていったんですか?やはり何度か下見も行ったのでしょうか。
海老根「はい。最初は現地調査として、鈴木先生にレンタカーを出していただいたり、バスも使ったりしながら、各地を見て回り、実現可能性を探りました。それでツアーコース案を作り、そのあとはモニターテストとして、実際に利用者の目線からの感想が欲しいと思い、他の友人などに参加してもらってフィードバックを得ました」

―モニターツアーまで!いろいろと出費もあったのでは?
海老根「そうですね。授業としての活動予算はあるのですが、それだけでは足りなくなってしまうので、チームとして個別で茨城県公共交通活性化会議というところの助成金事業に応募しまして、10万円の支援をいただきました」

―路線バスの旅というと、車で巡るのとは違う難しさがありそうですよね。御前山行きのバスだと1~2時間に1本ぐらいの運行でしょうか。
海老根「はい、そのぐらいだと思います。茨城は車社会ですが、車や電車ではなく、バスならではのメリットは何だろうか、ということを検討しました。たとえば御前山のコースは山登りができるので、団体で行くことが想定されますが、バスをチャーターしようとするとどうしてもコストがかかってしまいます。その分、路線バスならだいぶ予算を抑えられます。茨大前から行けるので、サークルの新歓などにも使ってもらえるのではないかと考えました。バスなら移動中も親睦を深められますしね」

―活動資金を獲得するところまでやるんですね。ではそれぞれのモニターツアーの様子を教えてください。
匂阪「私はトレッキング同好会に所属しているので、同好会から2日間でのべ9人のメンバーに一緒に参加してもらいました。自分は静岡出身ということもあって、今回の企画に携わるまで御前山には行ったことがなかったんですが、景色がきれいなスポットがあったり、麓の「道の駅かつら」で名物の「かつどら」というジャムが入ったどら焼きや鮎の塩焼きを食べたりして、みんなに楽しんでもらえました」

路線バスツアー2
御前山トレッキングコースのチラシ

―いいですね。ツアーに参加した学生から、課題も何か示されましたか?
匂阪「路線バスの本数が限られていることもあり、活動時間が長引いたり短くなったりすると、大幅にスケジュールが変わってしまうところは、懸念点として指摘されました」

―なるほど。一方でそれも路線バスの醍醐味かも知れませんね。アピールポイントを教えてください。
匂阪「トレッキングでは3.7kmコースと10.2kmコースを用意しました。10.2kmは山登りが好きな人向けですが、3.7kmは初心者の方でも気軽に楽しめます。3.7kmのほうは「藤倉の滝」や「むじなの滝」など美しい滝もあって癒されます。10.2kmでも朝9時台ぐらいに水戸を出るバスに乗れば日帰りで充分に楽しめる点も魅力です」

路線バスツアー3御前山コースの現地調査の様子

―ありがとうございました。続いて大洗はいかがでしょうか。
荒川「大洗はターゲットを大学生のカップル層としていたので、実際に2組のカップルに協力してもらいました。2組ともアクアワールド大洗などには行ったことがあるということでしたが、今回のツアーでは、大洗磯前神社のところから見える岩礁の鳥居の景色を楽しんでもらえました。また、大洗美術館も初めて行ったということで、新しい大洗の魅力を味わってもらえたと思います」

路線バスツアー4
大洗ふらりバスの旅のチラシ

―今年の夏は新型コロナウイルス感染症の影響で大洗も海水浴場は閉じてしまうようですが、このコースであれば海水浴はなくても大洗を満喫できそうですね。
荒川「確かにそうですね。現地調査の中で見つけた「ume café WAON」さんもおすすめです。内装やマドラーもおしゃれで、梅をテーマにしたカフェです。お土産もいろいろあって、学生だけでなく幅広い方々に楽しんでいただけると思います。今回ツアーコースとして紹介することもOKをしてくださいました」

―なるほど、ツアーコースを作るにあたっては、沿線のさまざまなお店などとの交渉も必要となるわけですね。
匂阪「御前山のコースでは、ツアーチケットに、「道の駅かつら」の「かつどら」というどら焼の引換券を含めてもらいました。これも「道の駅かつら」の方といろいろお話する中でご協力いただけることになったことです」
海老根「さまざまな方と連携したので、それぞれの立場や関係性を踏まえて、みんながWIN-WINになるようにするにはどうすれば良いか、ということを考えることがとても大きなやりがいになりました。料金設定も、茨城交通さんと話をして、定期券などとの兼ね合いも考え、お得感はあるけれど、もともとの目的である路線バスの活性化にもきちんとつながる料金がどのぐらいかということを綿密に詰めていった感じです」

路線バスツアー5茨城交通でのツアー提案の様子

―そこまでやったんですね。水戸市や茨城交通の方からはどんなコメントがありましたか?
海老根「水戸市役所の方からは、新型コロナウイルス感染症が終息して気軽に遊べるようになったら、友達を誘ってどんどん宣伝してほしいということと、今回培った経験を就職活動などに活かしてほしいというメッセージをいただきました。また、茨城交通さんからは、商品を開発するということで本当に真剣、真摯なアドバイスをいただき、また、やはり今後に向けてエールをいただきました」

―その中で新型コロナウイルス感染症により販売時期が後ろにずれ込んだというのは、みなさんにとっても思いがけないことだったと思います。授業は終わって既に単位も出ていますが、年度が切り替わっても活動をやめずに続けていたんですね。
海老根「普段の授業であれば自分の単位だけで完結するものなのですが、これには学外の多くの方が関わっているので、責任感をもって真剣に取り組まなければならないなと思っていました」
鈴木教授「まさにそういうメンタリティ、責任感を育てたくてこの授業を運営してきたので、授業担当者として嬉しいです。難易度が高い課題だな、と思っていましたが、みなさん本当にがんばりました」

―新型コロナウイルス感染症はバス業界にも大きな打撃を与えていますね。「公共交通活性化」という課題に取り組んできたみなさんは、現状をどのように受け止めていますか?
海老根「まずは残念という気持ちでいっぱいです。このツアーももともと4~5月の新歓の時期に使ってもらえればと思っていましたので...。ただ、今回作った路線バスツアーというのは、一度作ってしまえばずっと利用してもらえるものなので、まさに今後うまく活性化につながればと期待してます」
荒川「私の家の前を通るバスを見ても、少しずつお客さんが戻ってきたようにも見えます。今はなかなか友達にも会えない状況ですが、SNSなども使ってツアーを宣伝していきたいです」

―ありがとうございます。やはり現場でリアルな課題に触れ、自分たちでそれなりの時間をかけて解決に取り組むという経験からの学びは大きいですね。現在は遠隔授業が中心となってしまっていますが、今後「プロジェクト演習」のような授業はどのように展開していくべきでしょうか。
鈴木教授「現場系の授業は、やむを得ず休講したり、実施形態の見直しが図られたりしていますが、「プロジェクト演習」自体は、遅ればせながら今月から本格的に活動を開始することになりました。たとえばこの交通政策のプロジェクトは、オンラインでできることも多くあると思います。この状況だからこそ可能なことをどうマネジメントするか、教員の手腕が問われていると思います。マイナスな面だけでなく、何とかしてそれを逆手にとってプラスの面を出せないかと考えているところです」

―なるほど。では海老根さん、最後にメッセージを。
海老根「このプロジェクトでは、本当にたくさんの方にお世話になりました。水戸市と茨城県の交通政策課の皆様、茨城交通の皆様、道の駅かつらの皆様、活動資金を援助してくださった茨城県公共交通活性化会議の皆様に心から感謝いたします。コロナが終息し、たくさんの方々に気軽にツアーを楽しんでいただける日を楽しみにしています」

路線バスツアー6水戸市役所交通政策課のみなさんと

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(取材・構成:茨城大学広報室)