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茨大×遠隔授業(下)
―教室に居合わせられない不安を受け止めたい

 全面遠隔授業による第1クォーターが間もなく終わろうとしています。「茨大×遠隔授業」と題して、上篇では大きなトラブルなく遠隔授業を進めることができた背景や今後の可能性を取り上げましたが、一方で学生たちから寄せられた声に耳を傾けると、通常なら講義室に居合わせる他の履修者の雰囲気がわからないことへの不安もあるようです。下篇では学生支援センター長を務める教育学部の青栁直子教授に話を聞きます。

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―上篇でのインタビューでは、遠隔授業が比較的スムーズに進んでいるという話を紹介しました。先生自身の受け止めは?

青栁「私自身も基本的にはそのように感じます。何より学生たちの使いこなしが早いですよね。私の授業でもグループでの議論とかをするのですが、見事にこなしていますし、ゼミでは私がチーム画面から退出しても、しばらく学生同士で話したりしていますよ」

―一方で、学生たちからの不安もいろいろ寄せられているのでは?

青栁「そうですね。ひとつは、自宅にネット環境はあるとしても、自分専用の部屋がない、自分専用のネットにつながるPCがない、という学生にとっては、周りに家族がいると授業に集中できない、気軽に発言できない、ということがあります。家族とうまくいっている学生ばかりでもありませんしね...。キャンパスに近いところにいる学生は、許可を得て登校して授業を受けることもできますが、茨城大学の学生の出身地は全都道府県に及んでいますから、そうした学生のサポートはしっかり考える必要があります」

remote_aoyagi2.jpg遠隔授業を受ける環境が自宅にない学生は教室で受講している

―一人暮らしの学生はどうでしょうか。

青栁「一人暮らしの学生の場合は、孤独感が強まっていることが懸念されます。特に新入生ですよね。初めての地域、初めての一人暮らしの中、一度も登校できず、相談できる友達がいないということへの不安ははかりしれないものがあると思います」

―そうした学生はどのように支援していますか。

青栁「学生支援センターにも相談の窓口を設けていますが、担任の先生たちの力も大きいですね。Teamsを使ってひとりひとりと定期的に面談するなどして、今困っていることは何かを丁寧に把握し、不安を少しでも解消するよう努めています」

―事前学修にしっかり取り組むようになったなど、遠隔授業のポジティブな学修効果も指摘されています。

青栁「それはもちろんあると思います。学生からも、今まで以上に課題にかける時間が増えたという声があります。ただ、その背景には心理的なプレッシャーもあるかも知れません」

―どういうことでしょうか?

青栁「ある学生の話では、授業で課題が出されたときに、その課題について他の学生がどのように考えているかが分からなくなったといいます。これまでの講義室の授業だと、先生から課題が出されたときに、他の学生の「えー」とか「難しいね」といったリアクションとかざわつきを聞いて、「みんなも難しいと思っているんだな」と安心できていた、という面があったというわけです。ところがオンラインで受講者のマイクをミュートにしていると、その反応が聞こえないし、隣の友達とさっと話すこともできない。この課題をみんなはどのぐらいできるんだろう、ということがわからないから、なかなか気を緩めることができません。それゆえしっかり勉強するということですが、外でのストレス発散の方法が難しい中では、心理的な負荷がかかっている可能性はありますね」

―教室での非言語コミュニケーションや、何気ない会話が重要な役割を果たしていたということですね。

青栁「そのとおりです。受講者同士による授業ごとのSNSのグループが作られているという話も耳にしました。直接会えない状況で、授業についてフォローしあうための自発的なコミュニティがあるというのは学生にとって安心感もあると思いますが、逆にそれに加われない学生にとっては孤立感が強まらないかなど、心配もありますね」

―学生の生活リズムへの影響はどうでしょうか?

青栁「本学の場合は、実際の時間割とあわせて遠隔授業を展開しているので、完全オンデマンド型の授業配信に比べると、学生も生活リズムは保ちやすいと思います。とはいえ、やはり夜型にシフトしている学生たちも少なくないように見えます。それから、キャンパスへ行く、教室を変える、という身体的な移動がないので、気持ちのオン・オフが切り替えづらく、集中が続かないという学生もいます」

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―先生は教育学部の所属ですが、教員志望の学生にとっては子どもたちと触れる機会も減ってしまっていますよね。

青栁「そうなんです。教育実習の時期が変更になったり、それ以外でも学校でのボランティア活動も中止になってしまったりして、教育現場での体験が減ってしまったことは、今後学校で働こうという学生にとって不安な状況だと思います。多くの学生は子どもたちと触れ合うのが好きで教員を目指しているので、そういう活動が厳しく制限されているというのは辛いことです」

―上篇のインタビューでは、今回の遠隔授業の効果をしっかり検証し、その利点は今後に活かしていければという話でした。

青栁「それはそうあるべきだと思います。特に1年生は、他の学年に比べてチャットでの書き込みが多い印象で、しかも操作でわからない点もチャットで書いてみて、それに他の学生が書き込みで教えてくれる、というやりとりも見られます。そういう授業への積極的な参加や学生同士のかかわりあいが、対面授業でも続いていくといいですよね。それから、これはバリアフリー推進室の矢嶋敬紘先生も言っていたのですが、障害のある学生や、環境に過敏な学生などは、オンラインでの授業のほうがスムーズに学修できる場合も多いという側面もあります。そうした学生の学修機会の保障のために、今回の遠隔授業の仕組みをうまく活用しない手はありません」

―なるほど。そういう意味で、今後に向けて学生、大学双方に求められることはなんでしょうか。

青栁「学生にとっては、教室での授業以上に学生本人の意欲が求められるということだと思います。教室に居合わせていれば、それぞれの学生がどんなコンディションで、どのようにコミットしているかということが雰囲気でわかるのが、オンラインの場合は、画面に出てきて、積極的にコメントしたりレポートすることでしか見えないわけです。その意味では、大学はそうした学生の自主的な学修を支える、継続的なサポートシステムを構築していかなければならないと考えています。みなさんも困ったことがあったらひとりで悩まずいつでも相談してください」

プロフィール

青栁 直子(あおやぎ・なおこ)●茨城大学教育学部教授、学長特別補佐(学生支援)、学生支援センター長

専門は、環境生理学、応用健康科学。子どもの生体リズムと心身の健康との関連について、研究を進めている。2013年に茨城大学に着任し、2020年から学長特別補佐(学生支援)を務める。

 遠隔授業について、大学、学生双方の立場から振り返りました。いかがでしたでしょうか。第1クォーター終了に伴う授業アンケートも順次実施中です。学生のみなさんはぜひ率直な意見をお寄せください。

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(取材・構成:茨城大学広報室)