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コロナ禍で大学の国際交流はどう変わる?
―「つながろうプロジェクト」展開中のグローバル教育センターに訊く

 新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、留学を諦めてしまったという学生が少なからずいます。また、何人かの留学生は、来日直前に渡航制限がかかってしまい、母国から遠隔で授業に参加している状況です。本学のグローバル教育センターでは、留学生や国際交流に興味をもっている学生たちのサポートをしつつ、オンラインでの活動の活性化に「国際交流」や「留学」の新たな可能性を感じ始めているようです。オンラインならではの取り組みも積極的に始めています。グローバル教育センターの池田庸子センター長と瀬尾匡輝准教授にインタビューしました。

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"つながろうプロジェクト"の立ち上げ

―グローバル教育センターでは、「こんな時だからこそつながろう!茨城大学国際交流プロジェクト2020(つながろうプロジェクト)」を立ち上げました。このプロジェクトはどのように生まれたのですか?

池田4月に来日予定だった交換留学生が全員来られなくなって、夏に予定していた語学研修も悉くキャンセルになったという中で、国際交流という目標に向けた学生の学びをとめてはいけない、コロナだからできないではなくてコロナでもできることを見つけていこうと、ひとまず単発ではなく1年のプロジェクトという枠組みを作って走り出したという感じです。楽しいイベント系から授業交流まで、いろんなものをグローバル教育センターの一連の取り組みとして見せていければと思っています」

cgeint2.jpgTeamsを使った取材 池田センター長(左)と瀬尾准教授(右)

―先月実施したイベントが、海外の留学生とオンラインでつながり、おにぎりならぬ「おにぎらず」を使って交流するもので、今月下旬には映画を観て語るイベントなども企画していますね。多様なイベントをどのように企画しているんですか?

池田「グローバル教育センターと国際交流課の教職員に、何でもいいからアイデアを出してくださいと呼びかけています。「おにぎらず」のイベントは、非常勤の職員の方が「食のイベントはどうですか?」と提案してくれたのがきっかけで、ひとまず新しく入った留学生を対象にまずはやってみようと、準備期間もないままやったのですが、チューターの学生たちがうまくおにぎらずを作って仕切ってくれて、それなりに楽しくできました」

―どのぐらいの人が参加したのですか?

瀬尾「全体で20人ぐらいで、チューター学生、留学生、教職員がちょうど1:1:1ぐらいの割合で参加していた感じです。おにぎらず作るだけなのにこんなに盛り上がるんだと(笑)」

cgeint3.jpg「おにぎらず」を作るオンライン交流イベントより

―日本に来られずにいる1年次の留学生は特に不安も大きいでしょうね。

池田「やっぱり孤立してしまっていますよね。日本に来ている学生にしても、部屋から出られず、チューターにも会えないという日々が続いてしまいました」

―そういう留学生にはどのようにサポートしているのですか?

池田「個人チューターがついていますので、1対1でのサポートをしたり、会話の相手になったりというのは、そこで対応しています」

瀬尾「1対1ではなく集団でのサポートということでは、もともと各キャンパスには留学交流室というのがあって、そこで毎日決まった時間にチューターがいて交流やサポートをするのですが、これをオンラインでもやることにしました。月曜からの金曜の12時から13時までの1時間、オンラインの留学交流室にチューターがいて、留学生が自由に入れるという仕組みです。今まではキャンパスごとでしたけど、オンラインだと全キャンパスの学生が一緒に参加できるので、学生の交流がますます進むと期待しています」

変わる「留学」

―物理的な留学が難しく、オンライン化が進んだ今の状況をどう受け止めていますか?

池田「できることが変わってきたということと、意外とオンラインでも交流できるよね、ということがわかってきたということはあります。世界中でオンラインになったので、世界中の学生とつながるようになったというのは大きいです」

瀬尾「そうですね。もともと授業交流はしていたのですが、これまでは個対個の交流というより、授業、教室単位で、小さい画面に複数の学生が映っているような感じでうまくいかないところもあったのですが、みんながオンラインでそれぞれのデバイスから参加する形になって、個対個のつながりが比較的多くなったように思います」

―「留学」や「海外研修」の形が変わりそうですね。

池田「そう思います。今、オンラインで短期や長期の「留学」もできないかということを検討し始めていて、いくつかの協定校の今後のオンライン授業の実施状況なども含めて情報収集しているところです。やはり飛行機に乗って現地に行ってホテルなり寮なりに泊まってというのはお金もかかりますからね。今後普通に海外へ行き来できるようになっても、こういう授業内でのオンラインでの交流は増えていくのではないでしょうか。もちろん現地に行って学べることは計り知れませんが、学生にとっての選択肢は広がると思います」

瀬尾「留学とは何なのかということが問われているということですよね。必ずしも向こうに行って何かするということだけではない留学の形が出てくると思います。それは同時に、茨大の授業も海外に売り出していくというときに、本学の売りになるような授業を作っていかないといけなくなりそうです」

池田「その点では、グローバル規模で授業の連携が進む中で、日本人の学生が取り残されてしまうのではないかという危惧もありますね。やっぱり英語でコンテンツ化した授業を受けるという形で急速に広がっていくと思うので、そこに入っていくようにならないといけなくなります」

cgeint4.jpg米国・ペンシルバニア州立大学との授業交流 日本の漫画について語る

―オンラインだと発音も聞きづらかったりもしますから、外国語に自信がない学生にとってはハードルは高そうですね。そういう学生をどうサポートしていきますか。

池田「小さい交流から始めて徐々に慣れていくということかと思います。交流協定を前提としなくても、プログラム単位で参加しやすいものを用意していき、裾野を広げていきたいですね。いきなり専門科目を英語で議論しろと言われても難しいので、外国語を学びたい学生と、日本語を学びたいという海外の学生をつなげていくことで、お互いに勉強していくということから始めて、海外の人と協働していくことに抵抗がなくなっていけばと思います」

実は豊富な茨大のオンライン国際交流プログラム

瀬尾「実はグローバル教育センターでは、去年から「タンデム学習」としてそういう取り組みを進めています。茨城大学の学生と協定校の学生がペアになって、お互いの言語や文化を学びあうというオンラインの活動です。3ヵ月間ぐらい、1~2週間に1回ぐらいの頻度で交流するというもので、英語だけでなく中国語、韓国語、インドネシア語なども含めて、去年は60が活動しました」

―それはとても多いですね!

瀬尾「そうなんです。教員はマッチングさせるだけで、あとは学生同士でやりとりし、2~3週間に1回、集まって情報交換会をするという仕組みなんです。なかには今でもやりとりを続けているペアもありますよ」

cgeint5.jpg昨年度のタンデム学習の情報交換会の様子

池田「その影響で留学希望者も増えたんです。こういう交流でできた友達がいるということが、心強いな、行ってみようかな、という気持につながっているんだと思います。参加条件はありませんので興味のある学生はぜひ参加してみてください」

瀬尾「実はこういうオンラインの授業交流などの取り組みは茨大では以前から積極的に行っていて、協定校からも「茨大すごいですね」って言ってもらってたりします。世界中でオンライン化が進んだことで、日本の大学に対するこういう連携事業のニーズは増えているので、茨大としても今までの経験を活かして受け皿を用意して、たくさんのプログラムを作れるといいですよね。「茨大って意外とたくさん海外交流のプログラムあるんですね」とか学生に言われることがあるのですが、私たちももっとアピールしていきたいです」

今後へ向けて

―それは広報室もがんばらないといけませんね。さて、今月27日には映画を観て交流するイベントが予定されています。

瀬尾「はい、日本のイルカ漁を取り上げてアカデミー賞を受賞した『ザ・コーヴ』という映画がありましたが、その映画を受けてつくられた『おクジラさま ふたつの正義の物語』というドキュメンタリー映画です。Zoom上で観て、ディスカッションします。映画配給会社がもともと自主上映する団体を募集していて、今はこういう状況なのでオンラインでの上映も許可しているんです。この映画の鑑賞会とディスカッションを、海外の協定校にも案内したところ、オーストラリアや米国、イギリス、韓国などから既に20人ほど申し込みがありました。本学の学生もやはり20人ぐらい申し込んでくれています。今まで映画交流イベントを対面で開いてもなかなか人が集まらなかったのですが、オンラインだとこうして海外在住の人も含めて参加しやすくなったというのは嬉しいですね」

cgeint6.jpg6/27の映画鑑賞会のチラシより 詳しくはこちら

―来月11日の「元留学生のためのオンライン親睦会」というのは、ホームカミングのようなものですか?

瀬尾「そうです。今までは大学のホームカミングデーにあわせて留学生の同窓会が開かれていたんですけど、今回オンラインで企画しました。県外、海外の人も参加しやすくなると思います。まだまだ募集していますので、この記事を見ている留学生やチューターの学生もぜひ参加してください!」

―とはいえ、やはりオンラインではなく、海外の大学へ実際に行きたいという意欲を強くもっている学生もいると思います。今後の見通しは?

池田「大学の危機管理ガイドライン、外務省の渡航制限、感染症対策などいろんな事情を考えなければならず、はっきりとした見通しはまだ立ちませんが、一方で「今年は留学はやらない」ということを早急に決めることもせず、いろいろな方法を探してみたいと思っています。いくつかの国の入国制限は解除されてきていますし、海外のいくつかの協定校では既に海外学生の受け入れを認めてきています。時間をかけて可能性を探りながら、学生の選択肢を確保することに注力し、できる限りの準備をしておきます」

―わかりました。最後に、学生たちへメッセージをお願いします。

瀬尾「このような状況の中で、「あれもできない、これもできない」と感じている人もいると思いますが、逆にアイデアさえあればなんでもできるようになったと思って、私自身は楽しんでいます。ぜひ学生のみなさんも、国際交流としてできることを自ら生み出し、行動してほしいなと思います。そうすることで輪が広がり、さらにいろんなアイデアが出てくるのではないでしょうか」

池田「もちろん、早く海外の現地の空気を吸って、そこの食を楽しみ、人と交流できるようになればと願っていますが、一方でこれからはオンラインで国際的なコラボレーションをたくさんしていくように大きく変わってくると思います。みなさんはその第一世代ということです。私たちも今できることを積極的に提供していきますので、それらを違う形の国際交流を学ぶチャンスと捉えてほしいですね」

プロフィール

池田庸子(いけだ・ようこ)●茨城大学全学教育機構教授/グローバル教育センター長
2002年に茨城大学に着任。米国・ペンシルバニア州立大学大学院修了。専門は日本語教育、文学教育。今年4月から、学長特別補佐(グローバル教育)及びグローバル教育センター長を務めている。

瀬尾匡輝(せお・まさき)●茨城大学全学教育機構准教授
香港理工大学専任講師などを経て、2015年に茨城大学に着任。日本語教育、外国語教育、教育社会学を専門とし、現在は言語教育サービスの商品化に注目した研究を続けている。

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(取材・構成:茨城大学広報室)