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微小空隙に閉じ込められた銅タンパク質の構造評価に成功
タンパク質の失活防止によるバイオセンサーや医薬品への応用に期待

 茨城大学大学院理工学研究科の山口 央 教授高妻 孝光 教授山口 峻英 助教、産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センターの深谷 訓久氏らの研究グループは、微小空隙に閉じ込められた銅タンパク質の構造評価に成功しました。
 本研究では、分子レベル(1億分の1メートル程度)の空隙を無数に持つ多孔性シリカを用いて、その空隙中に閉じ込められた銅タンパク質の構造、特に銅イオンの配位構造を決定しました。また、配位構造から銅タンパク質の活性について評価しました。
 タンパク質は、ファインケミカルの合成、血糖値計測など予防医療で必須のバイオセンサー、医薬品としての利用が期待されていますが、容易に失活してしまうという問題点がありました。失活を防ぐ方法として、多孔性材料への閉じ込め、すなわちカプセル化が有望視されていますが、閉じ込められたタンパク質の構造や機能に関する基礎研究は進んでいません。本研究の成果は、タンパク質と多孔性材料を組み合わせた複合材料の合理的な設計開発に寄与するものといえます。

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背景

 タンパク質分子は、10000個以上の原子の強固な共有結合を骨格とした巨大分子であり、それらは様々な生命現象の調節を行う重要な因子です。また、その優れた触媒特性は、ファインケミカルの合成、血糖値計測などの予防医療で必須のバイオセンサー、さらには医薬品、燃料電池など多方面での利用が期待されています。しかし、タンパク質は、熱や光、化学物質などの影響によって構造変性や分解が起きやすく、その安定性を向上する方法論が求められています。その方法論のひとつとして世界的に注目され、研究されているのが、タンパク質とナノ多孔性材料の複合化です。ナノメートル(10億分の1メートル)レベルの空隙を無数に有するナノ多孔性材料は、その空隙中に閉じ込められたタンパク質の構造と機能を安定化させます。しかし、微小空隙中のタンパク質の構造と機能を実験的に評価することは極めて困難であるため、複合化研究は半経験的な設計指針に依存しています。今回、研究グループは、閉じ込められた銅タンパク質について、その反応を左右する銅イオンの配位構造の詳細を明らかとすることに成功しました。

研究手法・成果

 本研究では、ナノ多孔材料として、シリカ(SiO2)を細孔壁の成分とするメソポーラスシリカを用いました。このメソポーラスシリカでは、の電子顕微鏡写真で示すような円筒状の細孔が配列しており、この円筒状細孔の中に銅タンパク質が閉じ込められています。今回用いた銅タンパク質は直径2.4 nm、縦3.0 nmの円柱状で、この銅タンパク質を直径が2.36.7 nmのメソポーラスシリカ細孔内に閉じ込めました。銅タンパク質の構造は電子常磁性共鳴法(EPR)測定により測定しました。その結果、銅タンパク質にある銅イオンの配位構造が、微細孔への閉じ込めによって若干変化することが分かりました。変化の度合いは、直径が2.3 nmの微細孔内で最も顕著であり、この直径サイズは銅タンパク質サイズと一致します。この結果は、タンパク質構造が、閉じ込められる空間サイズに依存することを示すものです。さらに測定結果から、微細孔内銅タンパク質の還元電位が通常の溶液中に比べて数十mV異なることが推定されました。これは、銅タンパク質の反応活性が空間サイズによって調節可能であることを示しています。

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実験で用いたナノ多孔材料の透過電子顕微鏡写真(左)とその概略図、
および円筒状細孔内に閉じ込められた銅タンパク質のスキーム図(右)

今後の展望

 本研究によって、銅タンパク質が分子レベルの微空間に閉じ込められると、その構造と活性が若干変化することを明らかとしました。今後、このような研究を基盤としてタンパク質とナノ多孔材料を複合化に関する詳細な理解が進み、多孔性材料を用いたタンパク質のカプセル化や、それによるバイオセンサーや医薬品の開発、さらには新しい化学システムの開拓へとつながることが期待されます。

論文情報

  • タイトル:Effect of Cavity Size of Mesoporous Silica on Type 1 Copper Site Geometry in Pseudoazurin
  • 著者:Akira Yamaguchi*, Yurie Edanami, Takahide Yamaguchi, Yuuta Shibuya, Norihisa Fukaya, and Takamitsu Kohzuma
  • 雑誌:Bulletin of the Chemical Society of Japan
  • 公開日:2020425
  • DOI10.1246/bcsj.20190355