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【教員インタビュー】理工学研究科・大山研司教授
―未来永劫価値のあるものを量子線で追い求める

「茨大に来て、変わったことですか?『話が上手』と言われるようになったことかな(笑)」と笑う大学院理工学研究科(工学野)の大山研司教授。茨大へ来るまでの30年来、東北大で物理学の研究に勤んできた。原子の世界から物質を見極める技術と知見は、技術者を目指す工学部の学生たちを刺激と驚きで魅了する。

 工学部に来て最初に驚いたのは、研究における「いかに安く作るか」というパラメーターの重要性でした。物理屋として、これまで値段のことなど考えたこともありませんでしたから(笑)。利便性を重視する工学部の世界では目から鱗の発見があって、いい刺激になります。

 学生たちに、こんな質問をします。「人間と獣と何が違うと思う?」――。

 道具を作ることは、高級なサルでもするし、ハキリアリはきのこを育てています。つまり、役に立つことは動物でもするわけです。ところが、人間は役に立たないこともできる。

 いま最先端の技術は5年後には陳腐になり、10年後には役に立たなくなり不要になるでしょう。人類にとって一番大事なものは、いつか必ず要らなくなるものではなくて、未来永劫価値のあるもの。それを追い求めるのが物理学で、それを探究できるのは人類だけです。この「役に立たない大事なこと」を探求できることが、人類と賢い動物の違いなのだと思っています。

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 東海サテライトキャンパスを拠点に、学生さんとともに中性子を使った磁性物理学、応用材料科学、中性子科学を3本柱に研究をしています。東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCにある量子ビームを使って、原子レベルで物質の性質をどこまで観測できるか、物質科学の分野で中性子をどこまで先鋭化させられるかに興味を持っています。

 一昨年(2018年)には、世界で初めて白色中性子を用いて微少量不純物を観測する「白色中性子ホログラフィー」の実用化に成功しました。白色中性子とは、様々な波長の光を含んで白色となる可視光で、この中性子線を用いると複数の波長で多重にホログラムを記録できるので、X線回折法や電子顕微鏡法など従来の測定技術では到底取得できなかった精密な原子像の観測が可能となり、半導体材料、電池材料、磁性材料などの機能の根元を理解する道が拓けました。ホログラフィー実験において、世界で「茨城大でしかできない」研究を進め、物性物理研究の世界拠点になることが私たちの研究室の夢ですし、学生さんもそれを目指し生き生きと実験にとりくんでいます。

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「原子の世界なんて目に見えないもの、知らなくても良さそうなものなのに・・・」と思われる方もいるかもしれませんが、目に見える物や現象について、本当のことを知りたいと思ったら、その根本がわからなければなりません。その根本にあるのが、原子。なぜ雪の結晶は六角形をしているのか、なぜ鉄は磁石につくのか、なぜ電気を通すものと通さないものがあるのか、それは原子の世界がきめています。原子の世界を理解することで、初めて目に見える形や性質を理解できます。この原子の世界の美しさを、学生たちに教えていきたいと思っています。

教員情報

大山研司(おおやま・けんじ)●茨城大学大学院理工学研究科教授

東京都出身。1992年東北大学 理学研究科物理学第2専攻 博士後期修了。博士(理学・ 東北大学)東北大学 金属材料研究所 助教授及び准教授、同大学 原子分子材料科学高等研究機構 准教授などを経て、2015年より現職。中性子を用いた原子構造、原子磁石構造の理解を通して、物質の性質の根源を研究。

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(取材・構成:茨城大学広報誌『iUP』編集チーム)

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